Intelチップセットの歴史 その2
チップセットの構造が大きく変わったIntel 810世代
2009年11月23日 12時00分更新
DOS時代のレガシー「ISAバス」を排除したPC 98仕様
PC 97仕様は普及しなかったが、続いて1998年12月31日にリリースされたPC 98は、その後のPCシステム構成に大きな影響を与えた。当時問題になったのは、ISAバスの仕様があまりに古すぎたことだ。
元々ISAバスは、リソース(割り込みアドレスやI/Oポート、占有するメモリー空間など)をシステム側でコントロールしない(できない)仕組みだった。そのため、ユーザーがカード上のジャンパピンやDIPスイッチで設定を変更することで、複数のカードによるリソースの競合を解決していた。ところがうまく競合を解決できるとは限らないし、そもそも設定変更機能を持たないカードも存在したりしたから、この設定の問題はかなりシビアだった(ちょっと古いPCのユーザーならご記憶だろう)。
これを解決するために「PnP(Plug & Play)ISA」という規格ができて、これに対応したカードも出たものの、古いカードと混在する場合にはどうにも逃げられない場合も多かった。また、根本的に使えるリソースが少なすぎて、原理的に干渉の解決が不可能という場合も珍しくなかった。そのため、「Plug&Play」(差して使う)ではなく「Plug&Pray」(差して祈れ)と言われたりもした。
またISAバスは原理的に16bitバスなので、マッピングできるメモリーアドレスが24bitに限られるといった点も、Windows 95の様な16bitベースのOSでは大きな問題であった。この影響を排除するため、PC 98では「システム構成から原則としてISAを除く」という決断がくだされる。インテルも当然このPC 98の策定に関わっていたので、結果としてチップセットからISAバスのインターフェースがなくなってしまったわけだ。
チップ間インターコネクトとしての
PCIバスの限界も移行を推進
もうひとつの問題は、PCIで接続することによる性能面でのネックである。例えばUltra ATA/66のHDDポート2つがフルに動くと、それだけでデータ転送レートは133MB/secに達してしまい、PCIの理論上の帯域を全部使い切ってしまう。さらにUSBやオーディオ機能などもある上に、PCIの拡張カードも帯域を使うから、チップセット同士をPCIだけでつなぐのは、帯域的に難しい。
加えて、チップセット間をPCIでつなぐと、配線が大変という問題もあった。PCIは信号線だけで32本、そのほかの制御信号類まであわせると50本近いので、これを引き回すとそれだけで結構な面積を食ってしまう。そこで、信号を高速化する代わりに信号線の数を大幅に減らしたHubLinkを使うことで、PCIの倍の帯域を確保しながら、配線を大幅に減らした。これはマザーボードの低コスト化や小型化につながる。
ただし、これだけでは従来ISAバスに接続していたさまざまなオンカード周辺機器が利用できなくなる。これをカバーするために、新たに策定されたのがLPCである。ISAバスは88本もの信号線を必要としたが、LPCは7本(+オプション6本)と、はるかに少ない信号線を実現しながら、機能や帯域はほぼISAと同等のものを提供できる。拡張スロットは規定されていないので、ISAのカードを差せるわけではないが、Super I/Oチップ類はすぐにISA/LPCの両対応の製品が登場したので、ここでの移行には特に支障はなかった。
これにより、ISAバスはあくまでユーザーが所有するカードを差すためだけの目的でマザーボードベンダーが用意する形になり、インテル自身はISAを完全撤廃した。実際、従来ISAバスのカードとして提供されていたサウンドカードの機能などは、全部ICHに統合されてしまったので、PC OEMベンダーのほとんどはISAカード無しの製品を出荷できるようになっていた。自作PCユーザーや組み込み系で「拡張ボックス経由でISAのカードを数枚~数十枚接続する」といった特殊システムのベンダー以外は、それほど困らなかったのも事実である。
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