今回からチップセットのロードマップをテーマとしよう。CPU編も長かったが、チップセット編は間違いなく、それに輪をかけて長くなると思われる。なにせプレイヤーが多い上に製品も多いからで、これは致し方ないところだ。まずは総集編というか、チップセットというマーケット全体のここまでのトレンドを紹介しておきたい。
Pentium&PCIによって淘汰が進んだ
チップセットベンダー
図1は大雑把にプラットフォーム別に7社(インテル、AMD、VIA、ATI、NVIDIA、SiS、ALi/ULi)がどんな形で製品展開していたかを、CPUソケット別にまとめたものだ。これでも「たった」7社に集約されて、だいぶすっきりしている。というのはこのロードマップ以前、つまり1993年以前はさらに多数のチップセットベンダーが存在したからだ。
特にi486の時代は、チップセット専業ベンダー以外にマザーボードベンダーが自社専用チップセットを製造し、これを使って製品を投入しているケースもあった。例えばAMI社(American Megatrends, Inc、今ではPhoenix Technologyと合併してBIOSのみを提供している)は自社でチップセットを製造していたし、現在は台湾Mitac社の傘下にあるTyan社も、初期はやはり自社でチップセットをまかなっていた。Tyanは元々Sun互換のワークステーションを手がけていたから、パソコン用チップセット程度ならばお手の物だったようだ。
チップセット専業メーカーとしては、筆者が記憶しているだけでSiS、OPTi、Chips&Technologies、UMC、HiNTといったベンダーがあった(当時すでにALiやVIA Technologiesは存在しており、当然製品も出していたはずだが、日本国内ではほとんど見かけなかった)。この頃のチップセットは、まだI/Oの集約化などはなされておらず、また高速なI/OはVL-Bus(486のバスをそのまま外部につなげただけ)だった。
そのためチップセットに求められる機能は、メモリーコントローラーとISAバスのインターフェースを提供するだけと言ってよく、技術的難易度は今に比べるとはるかに低かった。AMIやSiSは差別化のために、EISAバスをサポートしたチップセットをリリースしたりしたが、一部サーバー向けなどはともかく一般ユーザー向けにはほとんど普及せずに終わっている。
ただし、こうしたベンダーのほとんどは、Pentium世代で淘汰されていった。Pentium第1世代のP5コアは性能の割にコストが高く、また発熱も多いとあってほとんど普及しなかったが、第2世代のP54コアや続くP55コアではコストも下がり、性能も上がったことで大きく人気を集め、486世代から一気に移行した。
問題はこのPentium世代から、本格的にPCIバスが利用され始めたことだ。チップセットはPCIをサポートする必要に迫られたほかに、この頃からさまざまな周辺回路(マウスやキーボード、シリアル/パラレルポート、FDD/IDEなど)がチップセットに統合され始めるようになり、いきなり開発の難易度が上がったことも関係している。ようするに、メモリーコントローラーとISAバスだけでは話が済まなくなり、結果としてインテルにSiS、VIA、ALiが残る程度になってしまった。
もっとも、サーバー向けとしては米コンパック(現ヒューレット・パッカード)は自社向けにチップセットを供給していたし、現在はメモリー専業に回帰したMicron Technologyも、子会社であるMicron Electronicsで独自のチップセットを使ったパソコンを提供していた。また、今では無線LANチップで名高いBroadcomの一部門となってしまったServerWorks社も、1995年にやはりハイエンド向けチップセットの提供を開始している。
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