リンクアグリゲーションで帯域拡大と冗長性の確保
STPでは、複数のスイッチの間に2本以上のケーブルを並列に接続したとしても、実際に使われるケーブルは1本だけで、残りは無効となって使用されず効率がよくない。そこで、すべてのケーブルを束ねて1本の太い論理回線(仮想リンク)として使うリンクアグリゲーション(回線を集束するという意味)が登場した(図6)。
*****[image]zu_06.png*****リンクアグリゲーションでは、100BASE-TXを4つ束ねて400Mbpsの論理リンクとして利用する、といったことが可能になる。さらに、集束して使用している物理リンクのうち1本が断線しても、通信は残ったリンクで続けられるので、可用性も向上する。
企業向けのスイッチには、リンクアグリゲーションを利用する際に、異なるベンダーの製品との接続を目的とした「IEEE802.3ad 標準モード」と、同じベンダーの製品との接続を目的とした「ベンダー独自モード」の2つが選択できるものがある。これは、複数のベンダーが独自に開発した仕組みのうち、基本的な共通部分だけをIEEE 802.3adとして標準化したという歴史的な背景によるものだ※6。
※6:歴史的な背景 リンクアグリゲーションの標準化よりも前から、EtheChannel(シスコシステムズ)、Multi Link Trunk(ノーテル・ネットワークス)、Sun Trunking(サン・マイクロシステムズ)などの独自製品が出荷されていた。まず、IEEE802.3ad標準モードでは、対向する2台のスイッチ間にのみ設定でき、複数のポートは、すべて同じEthernet規格の全二重通信に統一される。また、リンクアグリゲーションされた物理リンクの1つで障害が起こった場合、リンクアグリゲーションの再構成に数秒間かかる。
一方、ベンダー独自モードには、面白い機能が実装されている。以下はその一部である。
- 光ファイバの1000BASE-SXとUTPケーブルの1000BASE-Tを組み合わせるなど、異なるEthernet規格や、全二重通信と半二重通信とを混在することができる。
- 障害時に通信が途絶する時間をゼロにするため、スタンバイリンク(待機回線)を指定できる。たとえば100BASE-TXを4つ使用し、うち1つをスタンバイリンクとすれば、ケーブルが1本切れても停止時間のない300Mbpsの論理リンクが確保できる。
(次ページ、「セキュリティやQoS、管理機能の充実」に続く)
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