|
レガシールータとレイヤ3スイッチ
ルータはもともと、レイヤ3スイッチ(以下L3スイッチ)もIP層(ネットワーク層、レイヤ3)でパケットを中継する機能をもつ機器を指す用語だった。その意味では、L3スイッチも「ルータ」と呼ぶことができる。しかし、実際に売られている製品を比較すると、著しく特徴が異なっている。ルータは機能が豊富だが高価で中継速度が遅く、L3スイッチは機能が限定されるが廉価で中継速度が速い。
その理由は、ルータではモトローラやインテル製の汎用CPUを使ってソフトウェアでパケット中継を行なうのに対して、L3スイッチではASIC(Application Specific IC:特定用途向け集積回路)を使ってハードウェアで行なう、という構造上の違いにある。このため、L3スイッチも含めた「論理的な用語」としてのルータと、L3スイッチを含まない「実際の製品ジャンルを指す用語」としてのルータとを、明確に区別する必要が生じた。結局、後者のルータを、「レガシー(=古典的な)ルータ」と呼ぶようになった(図1)。
L3スイッチが登場するまでは、レガシールータがあらゆるネットワークの中核に位置していた。しかし、ネットワークの規模が拡大し、ネットワークを流れるパケットが急増するにつれ、中継速度が遅いレガシールータがLANのボトルネックになってきた。そのため、LAN内で使うルータは、徐々にL3スイッチに置き換えられていった。
それでは、レガシールータはなくなってしまったのだろうか? その答は“No”である。実は、レガシールータはアクセスルータ(WANルータ)の分野で、しぶとく生きながらえているのだ。
アクセスルータとは、通信事業者が提供するWAN回線に接続するインターフェイスを持ち、LANをインターネットや遠隔地の拠点と接続するために用いるルータを指す。
LANとWANをつなぐのであれば、たいていの場合、WAN側の速度が桁違いに遅い。そのため、ソフトウェア処理のレガシールータでも性能的には十分間に合う。また、通信事業者が提供するWAN回線は、デジタル専用線、ISDN、ATM、フレームリレー、IP-VPNなど多種多様で、インターフェイスの物理仕様もまちまちだ。さらに、同じWAN回線でも、通信事業者ごとにサービスの内容や接続仕様に差があるため、ソフトウェア処理の方が短期間かつ安上がりに多数のWAN回線に対応できるといった事情もある。そのため、いまでも大半のアクセスルータはレガシールータなのである。
(次ページ、「ブロードバンドルータもレガシールータ」に続く)
この連載の記事
-
第4回
ネットワーク
レイヤ3スイッチのさまざまな機能 -
第3回
ネットワーク
ルーティングとレイヤ3スイッチの関係とは -
第2回
ネットワーク
高価な企業向けスイッチはここがすごい! -
第1回
ネットワーク
ネットワーク機器の代表「スイッチ」の役割とは? -
ネットワーク
図で解剖!スイッチ&ルータ - この連載の一覧へ