45nm世代の「Deneb」で消費電力問題が解決
これに遅れて2008年末には、「Kuma」というコード名で知られたデュアルコア製品が投入される。こちらは「Athlon X2」ブランドとなったが、内容的にはPhenom X4のコアを半分だけ有効にした製品となる。こちらはコアを半減した(半分を無効化した)甲斐があり、2.4GHzから最大2.8GHzまで動作周波数を引き上げることに成功する。
ただし、消費電力は95Wと大きめで、同じAthlon X2でも前世代に当たるSocket AM2対応65nmコア「Brisbane」を使う「Athlon X2 5400+」(2.8GHz)が65Wなのに比べると見劣りする。動作周波数的にも、Brisbaneコアは3.1GHzまで引っ張れたから、あまり性能面では見るべきものがなく、広く利用されずに終わることになる。
こうした問題は、2009年1月に「Deneb」コアの「Phenom II X4」が投入されたことで解決の方向が見えてくる。基本的な構造は、65nmプロセス世代のAgenaとほとんど同じだが、45nm SOIプロセスに「AFET」(非対称型FET)という新しい構造のトランジスターを採用したことで、動作速度を上げながら大幅に消費電力を下げることに成功。これを使ったPhenom II X4は、Phenom X4よりも高速に動作しながら消費電力を常識的な枠内に収めた。
現時点では3.2GHzまでの製品がラインナップされているが、おそらく3.6GHz程度までは、125Wの枠内で引っ張ることは可能だろう。このあたりは技術的云々というよりもマーケティング面の問題で、はっきり言えばインテルの「Core i5」の性能がどこまで伸びるかを見極めたうえで、必要ならさらに上の製品をリリースする、ということになると想像される。ちなみに、Phenom IIは当初Socket AM2+でリリースされたが、途中でSocket AM3製品に切り替わっており、今後登場するAMDのデスクトップ向けは原則すべてSocket AM3になるものと思われる。
話を戻そう。このPhenom II X4のコアを元に、1コアを無効にした「Heka」が2009年2月に「Phenom II X3」として登場した。また2009年6月には、4コア中2コア分を無効とした「Callisto」が、「Phenom II X2」として登場している。今はPhenom II X2/X3共に2製品程度だが、今後は低消費電力版を含めたラインナップの拡充が随時行なわれてゆくと思われる。
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