2008年のハイエンドGPU戦線に、米AMDから待望のニューカマーが登場した。それが「Radeon HD 4800」(コード名 RV770)シリーズである。下位モデルの「Radeon HD 4850」はすでに搭載カードが販売されており(関連記事1)、上位版の「Radeon HD 4870」も本日から発売の予定だ。
価格性能比や価格消費電力比を重視したGPU
Radeon HD 4800シリーズの特徴を一言で言うなら、「価格性能比、性能/消費電力比を重視したGPU」と言えようか。その例のひとつが、下のグラフの赤いラインだ。
このグラフの赤線は、同社の歴代GPUでの「消費電力当たりのGFLOPS」を示したグラフである。縦軸方向に上がれば上がるほど、同じ性能を発揮するのに必要な消費電力が少ないことを示す。これを見ると、前世代のRadeon HD 3800シリーズがワット当たり4.5GFLOPSだったのに対して、Radeon HD 4800シリーズでは9GGFLOPSもの値を示している。前世代の倍もの消費電力当たりの性能向上を実現していることになる。
Radeon HD 4800の製造プロセスは、Radeon HD 3800シリーズと同じ55nmプロセスを使用。トランジスター数は1.4倍程度の約9億5600万個、ダイサイズは256mm2と発表されている。
HD 3870と同世代の製造プロセスでトランジスター数が増えたため、消費電力自体はHD 3870(約105W)より増えた約160Wとなっている。しかし、米NVIDIA社のウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX280」(関連記事2)の消費電力が約236Wもあるので、ハイエンドGPUとしては低めの数値に抑えている。
価格性能比も高い。AMDが公表しているHD 4870搭載カードの参考価格は299ドル(約3万2292円)。HD 4850搭載カードは199ドル(約2万1492円)。玄人志向ブランドが発表したHD 4870搭載カード「RH4870-E512HWS」の予想実売価格も3万4980円程度。HD 4850搭載カードに至っては、2万円台前半という安さだ。GTX280の実売価格が7万円台~8万円台後半、ワンランク下のGTX260でも5万円前後と高価なのに比べると、価格の安さには目を見張るものがある。
AMDはHD 3800シリーズでのウルトラハイエンド製品「Radeon HD 3800 X2」(関連記事3)以降、ウルトラハイエンドクラスは巨大で高価な1チップGPUではなく、2チップのGPUを1枚のカードに搭載するソリューションで提供するというラインアップをとっている。
そのためAMDでは、「NVIDIAのウルトラハイエンドであるGTX280に競合するのは、HD 4870を2枚使ったのCrossFire X構成」としている。そして、GTX280とHD 4870 2枚によるCrossFire X構成を3Dグラフィックベンチマークソフト「3DMark Vantage」で比較した場合、HD 4870は35%も高速であるという。たとえ2枚のカードを必要としても、トータルでの価格はHD 4870 2枚の方が安いか同等程度で、しかも性能では優れるというわけだ。