SaaSアプリケーション「Zoho」を提供する米アドベントネットのSridhar Vembu CEOがご立腹です。怒りの矛先はSaaS業界の雄、セールスフォース・ドットコム。Vembu CEOは自社の公式ブログに「セールスフォースはオープンなエコシステムを理解してない」と書き込み、怒りをあらわにしています。
怒りの発端は、14日(米国現地時間)に発表された米グーグルとセールスフォース・ドットコム(SFDC)との提携話。同日にはさっそく、Google AppsとSalesforce CRMの連携サービスがスタートしましたが、この以前にSFDCは、実はZohoとの提携を進めていたというのです。
というのも、Zohoはグループウェアやタスク管理ツールから、ワープロや表計算といったOfficeアプリまで、幅広いソフトをSaaSモデルで提供しています。そこでSFDCは、自社のコアアプリであるSFA/CRMを補完するアプリとして、Zohoの獲得を狙ったようです。Vembu CEOの説明によると、実際にZohoは、SFDCにAppExchangeに参加するようオファーを受け、数カ月前からその準備を進めていたといいます。
ところが、その後、SFDCはZohoに対して完全買収を提案。Zohoはビジネスモデルや社風の違いからこの申し出を断ったそうですが、すると今度はZohoが進めていたCRMの開発から手を引くよう要請してきたというのです。
結局、SFDCとZohoの提携はAppExchageへの参加を含め見送りとなり、白紙に戻ったそうですが、その替わりがグーグルとの提携だったのでしょうか。
ZohoのVembu CEOは、SFDCに対して「販売・マーケティング費用に研究開発費の8倍も費やしている。それを顧客は喜べるだろうか」と指摘。「彼(SFDCのCEO Marc Benioff氏)は、まだ‘90年代のソフトウェア競争と同じやり方をしている。セールスフォースのビジネスモデルは進化の行き詰まり」とまで痛烈に批判しています。
一方でZohoは、16日(米国現地時間)に大規模利用に対応したCRMアプリケーション「Zoho CRM Enterprise」を発表しました。このCRM、3ユーザーまで無料、追加1ユーザーにつき月額3800円(税別)と安価な料金設定。もちろん単純比較はできませんが、SFDCを始め他社との正面衝突は避けられそうにありません。
少なくとも現時点で日本ではSFDCほどの存在感を示せていないZohoですが、OfficeスイートのようなB to C向けと、CRMのようなB to Bのアプリをシームレスに提供しているという点で興味深いです。Vembu氏の主張どおり、SFDCとは違ったビジネスモデルで成功を収めることができるか、注目です。