今回は第2回連載に引き続き、プロジェクトマネージャーが頭を抱え込んだ書類文書の後半部分を分析していきます。前回は「ややこしい文」の「ごまかし論法」について説明しました。しかし、ややこしい文章となる原因は、このごまかし論法だけではありません。今回まず解説したいのは、中学文法で習ったはずの「係り受け」についてです。これを正しく使えないと、作成する文章はやはり余計に“ややこしく”なってしまいます。
■プロジェクトマネージャーを悩ませる文章
チェック② 多重解釈を許す文に要注意
赤ペンが入っているチェック②の文を検証しましょう。「すでに1カ月前に障害が発生したFTPサーバのプログラムは」と書かれた文章です。この「問題あり」の文をスラスラと読んではいけません。
この文には2つの意味があります。1つは「障害が発生したFTPサーバに置いてあるプログラム」という意味。もう1つは「FTPサーバに置いてある障害が発生したプログラム」という意味です。このように、2つ以上の意味を持つ文というのは、そもそも仕事の場面では適切なことではありません。つまり、病気にかかっていて治療が必要な文だと言えます。そこで、次のような順序で考えることが必要です。
1.病気には症状がある。それをまずつかむ
2.症状を引き起こしている原因をつかむ
3.原因に対して治療をする
では、例文をこの手順で分析してみます。まず症状についてです。この文は2つ以上の意味を持っている「多重解釈を許す」という症状があります。次に原因です。これは「FTPサーバのプログラム」という表現に使われている助詞「の」が病気の原因となっています。したがって、治療の方法は「の」を別の言葉に置き換えればいいことになります。そこで「の」を「に置いてある」と換えてみます。下記で確認してみて下さい。
■治療前
「すでに1カ月前に障害が発生したFTPサーバのプログラムは」
■治療後
「障害が発生したFTPサーバに置いてあるプログラム」、または「FTPサーバに置いてある障害が発生したプログラム」
この治療例から明らかなように、「障害が発生した」という修飾文に対応する被修飾文候補が「FTPサーバ」と「プログラム」と2 つあったものを、どれか1つだけにしてしまえば問題は解決します。これは「係り受け」に関わる問題です。文章で「の」を使う際には、この係り受けについて意識する必要があります。確かに助詞「の」は便利なので多用しがちですが、使いたくなったら別の言葉で置き換えができないかどうか検討し、文章が例文のような2つの意味を持たないようにする配慮が必要です。
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