驚異的なメガデータセンターが実現する新しいビジネス
――日本でアメリカほどのITバブルの崩壊がなかったのは、ある意味幸せなことだったけど、アメリカではバブル崩壊を期に業界全体の出直しを行なった。それがクラウドコンピューティングのような形でキーワードとして出てきていると。
亦賀氏:クラウドコンピューティングは2つの意味をもちます。ひとつはこのネット上にある不特定のリソースを使おうというこの流れが確実に企業の中に入ってくるということ。もうひとつは、ネット上にある驚異的なメガデータセンターによって支えられるサービスそのものが新しいビジネスになるのではないかということ。簡単に言えば、Googleあたりの話ですが、全てがGoogleに限定されるわけじゃないです。
――膨大なデータを分析してビジネスに活かすという意味では、“テラマイニング”などがと言われますよね。イアン・エアーズの「その数学が戦略を決める」を読むと、オンラインDVDレンタルのネットフリックスは、マイニングを駆使して所有するDVDの在庫の6割を1ヵ月で回転させるというすごいビジネス効率を生み出しているという話がある。ロングテールどころじゃない、メチャクチャなことですよね。
亦賀氏:それでいて、すばらしく、想像もできないものがやってくるでしょう。また、ネット上の話ですから、サービスのスケールは世界規模です。日本の中の小さい市場でどうこうという話ではない。世の中のスピードがどんどん速くなってきます。
我々の主張は、まずグローバルで何が起こっているかを再点検しましょう、ということです。世界規模のスケールでのビジネスが、どんどん速度を上げているということに、日本が気がつかなければなりません。そして、その下支えになっているのがITなんですよ。トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」が話題になりましたが、あのような話もITがあってはじめて成り立ちますから。
――そういう曲がり角にきているということは、一般的に認識されてるんですかね?
亦賀氏:私が「曲がり角に直面してますよ」と指摘すると、ベンダーさんもユーザー企業さんも「確かにそうですね」とみなさん答えます。でも、日々の活動の中ではなかなか気づかない。日々の業務を行っていると、なかなか立ち止まって考えるチャンスがないんですよ。多くのベンダーさんと話していても、「今後どうやって生き残るべきか」という危機感は持っています。でも、具体的なアクションをおこしているようには見えません。
――国産のITベンダーも危機感は感じていてるけど、具体的な取り組みまではできていないと?
亦賀氏:国内のITベンダーの多くは、もはやハードウェアでの儲けが期待できないと考え、SIで食べていこうとしています。でも、クラウドコンピューティングのようなものが本格化すれば、現在のようなSIは要らなくなってしまい、彼ら自身が自滅する可能性があるわけですから、実行に躊躇してしまう。だから危機感は持っていても、黙っているしかないのが現状のようにもみえます。
たとえば、Googleはこの5年間で24倍も売り上げを伸ばして、今や1兆円企業です。多くの人がGoogleを単なる検索エンジンと考えている間に、国内のITベンダーはあっという間に抜かれてしまった。今やSAPやオラクルと並ぶ存在で、IBMのソフトウェア事業にも匹敵します。マイクロソフトも脅威に感じるわけですよ。