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【インタビュー】ITの曲がり角~世界とニッポン

クラウドコンピューティングと自前の武器としてのIT

2008年03月27日 17時13分更新

文● アスキービジネス編集部、聞き手●遠藤 諭

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驚異的なメガデータセンターが実現する新しいビジネス


――日本でアメリカほどのITバブルの崩壊がなかったのは、ある意味幸せなことだったけど、アメリカではバブル崩壊を期に業界全体の出直しを行なった。それがクラウドコンピューティングのような形でキーワードとして出てきていると。

亦賀氏:クラウドコンピューティングは2つの意味をもちます。ひとつはこのネット上にある不特定のリソースを使おうというこの流れが確実に企業の中に入ってくるということ。もうひとつは、ネット上にある驚異的なメガデータセンターによって支えられるサービスそのものが新しいビジネスになるのではないかということ。簡単に言えば、Googleあたりの話ですが、全てがGoogleに限定されるわけじゃないです。

『その数学が戦略を決める』

『その数学が戦略を決める』(イアン・エアーズ著・文藝春秋) 膨大なデータを元に、未来のワインの値段や最適な結婚相手までを、計算で求める「絶対計算」について解説する一冊

――膨大なデータを分析してビジネスに活かすという意味では、“テラマイニング”などがと言われますよね。イアン・エアーズの「その数学が戦略を決める」を読むと、オンラインDVDレンタルのネットフリックスは、マイニングを駆使して所有するDVDの在庫の6割を1ヵ月で回転させるというすごいビジネス効率を生み出しているという話がある。ロングテールどころじゃない、メチャクチャなことですよね。

ガートナー第1回

『フラット化する世界』(トマス・フリードマン著・日本経済新聞社)ITの発達によってもたらされた急速なグローバル化による中国・インドの経済成長や、それを利用して発展した世界的企業の動向を分析する一冊

亦賀氏:それでいて、すばらしく、想像もできないものがやってくるでしょう。また、ネット上の話ですから、サービスのスケールは世界規模です。日本の中の小さい市場でどうこうという話ではない。世の中のスピードがどんどん速くなってきます。

 我々の主張は、まずグローバルで何が起こっているかを再点検しましょう、ということです。世界規模のスケールでのビジネスが、どんどん速度を上げているということに、日本が気がつかなければなりません。そして、その下支えになっているのがITなんですよ。トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」が話題になりましたが、あのような話もITがあってはじめて成り立ちますから。

――そういう曲がり角にきているということは、一般的に認識されてるんですかね?

亦賀氏:私が「曲がり角に直面してますよ」と指摘すると、ベンダーさんもユーザー企業さんも「確かにそうですね」とみなさん答えます。でも、日々の活動の中ではなかなか気づかない。日々の業務を行っていると、なかなか立ち止まって考えるチャンスがないんですよ。多くのベンダーさんと話していても、「今後どうやって生き残るべきか」という危機感は持っています。でも、具体的なアクションをおこしているようには見えません。

――国産のITベンダーも危機感は感じていてるけど、具体的な取り組みまではできていないと?

急速に発展するGoogleとITベンダーの売り上げ比

急速に発展するGoogleとITベンダーの売り上げ比(出典:ガートナー・画像クリックで拡大)

亦賀氏:国内のITベンダーの多くは、もはやハードウェアでの儲けが期待できないと考え、SIで食べていこうとしています。でも、クラウドコンピューティングのようなものが本格化すれば、現在のようなSIは要らなくなってしまい、彼ら自身が自滅する可能性があるわけですから、実行に躊躇してしまう。だから危機感は持っていても、黙っているしかないのが現状のようにもみえます。

 たとえば、Googleはこの5年間で24倍も売り上げを伸ばして、今や1兆円企業です。多くの人がGoogleを単なる検索エンジンと考えている間に、国内のITベンダーはあっという間に抜かれてしまった。今やSAPやオラクルと並ぶ存在で、IBMのソフトウェア事業にも匹敵します。マイクロソフトも脅威に感じるわけですよ。

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