米マイクロソフト社はCES 2008で、大面積の自社ブースのほか、屋外にも特設テントを設置して展示を行なうなど、精力的に活動している。今年のCESでは、Windows Vista自体のアピールはあまり見られない一方で、家電の展示会ならではという展示が見受けられた。その中の一部を紹介しよう。
タッチで操作するテーブルPC Surface
マイクロソフトブースの中でも、特に人気の高いコーナーが、テーブル型コンピューター「Microsoft Surface」の実演コーナーである。
Surfaceは、6日(現地時間)に行なわれたビル・ゲイツ氏の基調講演(関連記事)でも披露されたもので、「自然なインターフェース」(ナチュラル・インターフェース)の例のひとつとされている。
フラットなテーブルを30インチディスプレーとして使い、PC部分はテーブルの中に収められている。マウスやキーボードは一切使わずに、テーブル上に表示されたオブジェクト(画像やメニューなど)を手で触れたり動かしたりすることで、オブジェクトに対する操作を行なえるのが特徴だ。
たとえば、画面上にある写真を手で動かして位置を変えたり、拡大縮小したりできる。タブレットPCのタッチパネルとは異なり、複数人が同時にテーブルに触れても、それぞれを個別に認識して処理を行なえる。タッチパネルではなく、複数台の赤外線カメラを利用して、手の動きを認識しているためだ。
また、Surfaceの真上にはビデオカメラが設置されていて、テーブル上に置かれた物を、画像認識技術を使って認識することもできる。ブースでの展示ではカードやデジタルカメラ、さらにはワイングラスを認識させて見せた。
さらに、無線通信機能も備えていて、テーブル上に置いた機器と通信を行ない、機器内のデータをテーブル上に表示することもできる。例えば、デジカメを認識させたうえで、テーブル上に表示された写真を手でカメラに移動させると、写真をカメラにコピーするという操作が実行される。
現時点でのSurfaceは、企業向けの製品として販売が行なわれる。例えばホテルでの導入が計画されているようで、ラスベガスでカジノホテルを経営するHarrah'sグループが導入する予定という。ほかにもシェラトンホテル、携帯電話事業者の米T-Mobile社などが導入予定という。
手や画像認識のための装置が必要であるため、Surfaceの家庭への導入というのは現実的ではない。しかし、Surfaceでつちかわれた技術が将来のタブレットPCに応用されれば、今よりも自然な操作で扱える物が期待できそうだ。
広がりを見せるMedia Center Extender
展示会場外の特設テント内では、Windows Vistaと対応製品を組み合わせて実現されるデジタルライフスタイルの事例が、テーマ別に展示・デモされている。例えば、Windows Vistaの「Windows Media Center」機能のコーナーでは、PC内のコンテンツをネットワーク接続された外部の機器から利用する「Media Center Extender」(MCE)のデモが披露されていた。
MCEはPCから離れたところにある大画面テレビなどに接続して、PC上のコンテンツを楽しむための機器である。単体のMCE機器だけでなく、Xbox 360にもMCE機能が搭載されている。日本ではまだMedia Center自体の知名度が低いため、MCE自体もほとんど見かけない。しかし米国では、Windows XP Media Center Editionの時代から地道に広がり続けており、CES 2008では米ヒューレット・パッカード社(HP)や韓国サムスン電子社が新たにMCE機器を発表している。
HPでは単体の小型MCE機器のほかに、37インチの液晶テレビの中にMCE機能を内蔵した、「HP MediaSmart TV」も製品化している。単体のMCE機器をテレビにつなげて使うのよりも、シンプルで分かりやすいソリューションと言えそうだ。
とはいえ、普及台数から見れば最も多く利用されているMCE機器は、Xbox 360に間違いない。米国ではMCE向けの有料映像配信が盛んに行なわれているほか、マイクロソフトのIPTVソリューション「Mediaroom」の機能をXbox 360上で実現して、Xbox 360でIPTV放送を見るといった使い方も可能となっている。リビングのテレビとXbox 360とPCを組み合わせることで、多彩な映像配信を楽しめる環境が米国ではすでに整っているのだ。マイクロソフトの努力だけでは進まない分野とはいえ、同様の環境が日本でも提供されることを切に望む。