10月30日、米EMCの会長兼社長CEOであるジョー・トゥッチ氏が来日し、記者会見を開いた。会見の中でトゥッチ氏は、EMCの近況を報告するとともに、同社の事業戦略について報道陣の質問に答えた。
過去6年間は「満足のいく業績」と評価
「堅調な四半期だった。地域別、事業領域ごとのバランスも取れていた」。米EMCの会長兼社長CEOであるジョー・トゥッチ氏は、25日に発表されたばかりの第3四半期の業績を振り返り、こうコメントした。同四半期の売上高は33億ドル(前年比17%増)、純利益は4億9300万ドル(前年比74%増、子会社のヴイエムウェアの株式の一部をシスコに譲渡した際の売却益1億1500万ドルを含む)。これで17四半期連続で2桁成長となり、トゥッチ氏は「今期は売上が127億ドル超、14.4億ドルの利益を予想している。過去6年間は売上も収益も大変満足のいくものだった」と評した。
ここ数年はドキュメンタム、ヴイエムウェア、RSAセキュリティなどのソフトウェアベンダーを相次いで買収し、「情報インフラストラクチャ」戦略のもとに、情報ライフサイクル全体をカバーするソリューションベンダーへと脱皮を図っているEMC。同社では注力分野として、「仮想化」「セキュリティ」「ECM(企業コンテンツ管理)」など8つを定めている。
同氏はこうした戦略について、「8つの分野の枠組みのまま事業を強化していきたい」と強調。新たな買収によって事業領域を広げるのではなく、当面の間は現在の事業領域の基盤を固める方向感を示した。また、日本市場を含むアジア太平洋地域に対する取り組みについては、「戦略を地域によって大きく変えるのではなく、地域に合った微調整をかけていく。取り組みの度合いに違いはあるかもしれないが、照準が大きく変わるものではない」と話し、基本路線はグローバル戦略を踏襲していく考えを表明した。
グリーンITはヴイエムウェア成長の一要因
トゥッチ氏によるプレゼンテーションの後には、Q&Aセッションが行なわれた。参加した報道陣から出た質問の中から主なやり取りを紹介する。
――買収とオーガニック(自律的)な成長のバランスはどう考えているか。
「当社はいわゆる大型買収はしていない。ヴイエムウェアにしても、もともとは小さな企業であり、EMCが買収した後に急速な成長を遂げることができた。当社の成長は基本的にオーガニックな成長だと考えている」
――SaaSなどのアウトソーシングに対する動きについてはどう思うか。
「ITに限った話ではなく、特定業務、ビジネスプロセス自体をアウトソースするBPO(Business Process Outsourcing)の流れが加速していくだろう。当社はその中である部分をビジネスプロセス単位で請け負うサービスを提供していく。プロフェッショナルとしての高度な知識が今後は重要になると思っている」
「今月4日にはデータバックアップサービスをSaaSモデルで提供する米バークレイ・データ・システムズを買収したが、現時点での日本での展開は未定だ」
――グリーンIT(地球環境に配慮したIT技術、消費電力削減などの取り組み)についてEMCはどう取り組んでいるか。
「企業にとっても、世界にとってもトップ・プライオリティの1つ。同時に、ヴイエムウェアが成功したひとつの要因でもあると思っている」
「わが社はこれまでいかに効率的にシステムを作り上げていくか努力してきた。日々効率性を追求し、工場やオフィスのあり方を含めてさまざまな面で真剣に取り組み、エコに対して注意を払っている」
――日本ではECMの普及率は低く、ドキュメンタムのビジネスは遅れている。
「日本でもECMを受け入れられる時期が来たと思っている。現在の導入率は低いが、逆に潜在的な市場と見ている。ローカライズに力を入れ、パートナーに協力してもらいながら普及を促していきたい」