富士通ラーニングメディア
研修事業部長代理
越野洋一さん□
近年、SEにはプログラミングやシステム開発などのテクニカルスキルに加えて、コミュニケーション能力などのビジネススキルが必要だと言われている。実際に、ビジネススキルを身に付けることを課題にしているSEも多く、しかしながらなかなかその成果を得られ者も多い。このような中、スキル習得をサポートする研修の人気が高まっているようだ。ビジネススキル関連の研修を多数行なっている富士通ラーニングメディアの越野洋一さんに、SEに求められるビジネススキルと、それらがSEにとって身に付けるのに難しいという理由について聞いた。
顧客に必要とされるSEになるために
まずビジネススキルは、システム構築やプログラム開発などのミッションを達成するために必要な、テクニカルスキル以外のスキルと定義できます。では、SEの業務遂行に必要なビジネススキルは何でしょうか。それは、顧客にとって「価値のあるSE」とはどういう存在かを考えると明確になります。つまり「問題解決に貢献できるSE」ということになるでしょう。
問題解決のために一番重視されるのが顧客との信頼関係です。これが築ける人は、SEとしての価値がより高い人と言うことができます。では、この信頼関係構築に当たって必要なスキルとは何かというと「問題解決能力」「ドキュメンテーション能力」「ファシリテーション能力」の3つが挙げられます。つまりこれがSEに特に必要とされるビジネススキルということです。
●問題解決能力
これは「問題を発見する能力」と「問題を解決する能力」になります。顧客が抱える問題を分析して原因を発見し、解決策を導き出す能力です。解決方法を提示するだけでは不十分で、顧客の抱えている問題を見つけ出すことや、顧客の悩みを分かってあげられることも大切でしょう。そうすることで、顧客の立場からアプローチした顧客にとって最適な解決策がとれるのです。
●ドキュメンテーション能力
文書を作成する力です。メールは気軽に書けてもビジネス文書を書くのが苦手という人が年々増えており、特に30代半ば以下の若年層で能力の低下が見られます。SEは顧客に文書を提出することも多い仕事であり、要件定義書は誰が見ても同じように理解できることが非常に重要です。加えて、SEの仕事はチームで行なうことが多いので、相手だけでなくプロジェクトに関わるメンバー全員が共通認識を持てるドキュメントを作成できなければなりません。前述の問題解決能力と合わせて、ドキュメンテーション能力はSEのビジネススキルの最低条件といえるでしょう。よく言われるPDCA(注1)を確実に遂行するためにも必要です
注1:PDCA
PDCAとは、plan-do-check-actの略で、製造業で用いられてきた管理マネジメントの考え方の1つ。Plan(計画)、Do(実施)、Check(点検)、Act(改善)という、業務の1サイクルに必要な4つの段階を表している
●ファシリテーション能力
最近特に注目されている能力で、簡単に言うと会議の中で参加メンバーの活発な意見を引き出す力です。たとえば、あるプロジェクトで問題解決のためのミーティングを開き、その中で顧客が何を必要としているのか、何が不明点なのか、何がネックとなっているのかを話してもらうとします。ファシリテーション能力は、このような場面で相手の頭の中にある意見や考えを引き出すための能力です。相手から要望や問題点をうまく聞き出し、意思決定と解決に導いていく点が、単純な聞き取りとは違います。顧客は問題を漠然としか認識していないこともあります。ファシリテーション能力はそのようなケースでも、問題解決の糸口をつかむ手助けとなります。
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