インターネットがすべての広告媒体をつなぐ!?
さて、インターネット広告の最新トレンド、3つ目のメディアミックス型広告は、まだ具体例がなく、果たして本当に今年中に形になるかどうかもわからない。正直なところ、すべてはグーグル次第といった感じだ。
最近、米グーグル社は、テレビやラジオ、雑誌、ゲームなど、ウェブ以外のメディアで広告サービスを提供している会社を買収するなど、この方面で活発な動きを見せている。
グーグルのCEO、エリック・シュミット氏は「番組そのものや視聴者に最適化もされていなければ、効果測定をすることもできない、今日のテレビCMをそのままにしておくのはおかしい」といった挑発的なコメントを述べている。
このことから、遠くない将来にグーグル自体が、広告する商品やサービスに合わせて、最適な媒体、最適な宣伝方法を自動的に算出する仮想広告代理店業務に進出するのでは、と見ている人も多い。
グーグルが手掛けるすべての事業は、「独自の検索エンジンにより、世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにすること」というミッションステートメントに沿っている。このアクセス可能というのは、何もウェブだけに限っていないことは、書籍の中身を検索する“Google Book Search”などのサービスで明らかになっているだろう。
また独自の検索エンジンで、広告がもっとも高い価値を持って消費者に受け入れられる媒体や時間/面積を算出し、アクセス可能にするという事業は、ミッションステートメントからも外れていない。AdSenseなどの例から考えると、グーグルのテクノロジーを使って、個人でも気軽にテレビやラジオに広告を打てる時代が、すぐそこまできているのかもしれない。
もっとも、テレビ業界の広告は米国でも740億ドルのビジネスなので、これについてはさすがに米国でも既存業界からは強い逆風が吹くはずだ。グーグルにとっては、どうやって逆風に負けない追い風を味方につけるかが勝負どころだろう。
アフィリエイトブログは廃れる!?
こうした新しい潮流がたくさん出てくる一方で、広告がらみであまりよくない兆候も出てきている。数年前のアフィリエイトブーム以降、急速に増えてしまった、中身のないアフィリエイトだけのウェブサイトだ。
ほとんど記事がなく、ただ商品のアフィリエイト広告だけがたくさん貼ってあるだけで、こんなウェブサイトを誰が見るのだろう、と不思議がる人もいるかもしれないが、それでも数%の人が広告をクリックすれば、それによって広告の売り上げが発生する。
こうしたサイトは特に日本が多いようで、アフィリエイト関係の専門化も「いつまでも持続できるものではない、潮時が来るだろう」と見る人も多い。いずれにせよ2007年は、インターネット広告に、さまざまな変化が現れる年になりそうだ。
筆者紹介─林信行
フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。『MACPOWER』『MacPeople』のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフト(株)の公式サイトで執筆中の連載“Apple's Eye”で有名。自身のブログ“nobilog2”も更新中。オーウェン・リンツメイヤーとの共著で(株)アスペクト刊の『アップルコンフィデンシャル(上)(下)』も発売中。
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