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初期火星の有機物はCOが起源、東工大などが実験と計算で検証

2024年05月16日 06時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京工業大学、コペンハーゲン大学などの研究者で構成する共同研究チームは、火星の堆積物中に含まれる有機物が大気中の一酸化炭素(CO)から生成したものであることを、室内実験と理論計算によって検証。さらに、モデル計算に基づいて、約30億年前の火星では、大気中の一酸化炭素から有機物が合成されて地表に堆積していたことを示した。

東京工業大学、コペンハーゲン大学などの研究者で構成する共同研究チームは、火星の堆積物中に含まれる有機物が大気中の一酸化炭素(CO)から生成したものであることを、室内実験と理論計算によって検証。さらに、モデル計算に基づいて、約30億年前の火星では、大気中の一酸化炭素から有機物が合成されて地表に堆積していたことを示した。 米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」が約30億年前の堆積物をドリルで掘削して成分を分析した結果、火星の有機物において炭素の安定同位体比(質量数12の12Cと質量数13の13Cの比率)が、地球の体積有機物や大気、隕石中の有機物より極端に小さいことが知られている。だが、その原因はこれまでわかっていなかった。研究チームは今回、大気化学反応による同位体分別を室内実験と理論計算の両面から検証。その結果、太陽光(紫外線)によるCO2の光解離反応において、例外的かつ極端に13C存在度の低いCOが生成されることが分かった。 同チームはさらに、今回の同位体分別の実験結果と最新の知見をもとに、モデル計算による初期火星炭素循環の解析を実施。30億年前の火星では、火山活動などを通して大気に流入したCO2のうち、最大で20%がCOを経由して13C同位体異常をもつ有機物に変換され、地表に堆積していたことを示した。 研究チームによると、初期の地球でも大気中のCO2由来のCOから有機物が生成したことが考えられ、今後の生命起源研究や惑星探査に新しい展開が期待できるという。研究論文は、英国科学雑誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に2024年5月9日付けでオンライン掲載された

(中條)

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