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AIで新型コロナの進化を分析、ヒトの行動との関連を解明

2023年11月23日 06時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学と北海道大学などの共同研究チームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の進化に伴うウイルス排出パターンの変化を人工知能(AI)技術を用いて分析。新型コロナウイルスの進化が潜伏期間や無症候率などの臨床的な症状や、ヒトの行動と複雑に関連していた可能性を明らかにした。

名古屋大学と北海道大学などの共同研究チームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の進化に伴うウイルス排出パターンの変化を人工知能(AI)技術を用いて分析。新型コロナウイルスの進化が潜伏期間や無症候率などの臨床的な症状や、ヒトの行動と複雑に関連していた可能性を明らかにした。 研究チームは今回、武漢株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株に感染した合計274人の臨床データを順番に解析。変異株の出現に伴い、生体内におけるウイルス排出量のピークは増加し、早まる傾向(急性感染型)に進化することを見い出した。 そこで、ヒトの行動が新型コロナウイルスの進化に与えうる影響を分析するために、感染者の生体内で日々変化するウイルス量に応じた感染確率を考慮して、ヒト集団内でのウイルス伝播能力を評価できるシミュレーターを開発。AI技術の一つである「遺伝的アルゴリズム」の手法を組み合わせることで、現実世界で確認されたウイルス排出量のパターンがどのような状況で再現できるかを評価した。 コンピューター内でウイルスを進化させる実験を繰り返した結果、早い段階での感染者隔離のような強力な非薬理学的介入(薬を使用せずに感染症拡大を防ぐための方法)が存在する場合、ウイルス排出量のピークは増加し、早まる可能性があることが分かった。さらに、このような急性感染型へのウイルスの進化は、潜伏期間や無症候率などに大きく左右されることも見い出した。これらは実際のウイルス進化の傾向を再現できているという。 新たな変異株の出現が懸念される中、今回の研究の成果およびAI技術を組み込んだシミュレーターは、将来のウイルス進化を予測し、ポストコロナ時代の感染症対策を確立する上で重要な一歩となることが期待される。研究論文はネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年11月21日付けで掲載された

(中條)

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