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理研、室温作動のH–導電性固体電解質を開発

2023年10月26日 06時57分更新

文● MIT Technology Review Japan

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理化学研究所や高エネルギー加速器研究機構などの共同研究チームは、負の電荷を持つ水素「ヒドリドイオン(H-)」が室温で固体電解質として作動する新材料を開発した。同チームがこれまで進めてきた固体内を拡散するイオン導電体(H-導電体)の研究からの成果であり、蓄電池、燃料電池、電解セルといった、室温付近での動作が想定される電気化学デバイスの研究開発への展開が期待される。

理化学研究所や高エネルギー加速器研究機構などの共同研究チームは、負の電荷を持つ水素「ヒドリドイオン(H-)」が室温で固体電解質として作動する新材料を開発した。同チームがこれまで進めてきた固体内を拡散するイオン導電体(H-導電体)の研究からの成果であり、蓄電池、燃料電池、電解セルといった、室温付近での動作が想定される電気化学デバイスの研究開発への展開が期待される。 水素は、正の電荷を持つプロトン(H+)と負の電荷を持つヒドリドイオン(H-)の両方の電荷をとり得るなど、他の元素にはないユニークな特徴を持っている。研究チームは今回、室温で高いイオン導電率が報告されている蛍石型構造の水素化ランタン「LaH3-δ」を母物質としたH-導電体に着目。同物質のランタン(La)の一部を電気陰性度の低いストロンチウム(Sr)に置換したH-導電体「Sr-LaH3-δ」を合成した。 さらに、同物質を固体電解質に用いた全固体型の電気化学セルを構築し、室温で定電流放電試験を実施。その結果、電極に用いたチタン(Ti)を二水素化チタン(TiH2)まで完全に水素化させることができた。その電気化学反応のファラデー効率(流れた全電気量に対する目的物の生成に寄与した部分電気量の割合)はほぼ100%に達し、これはH-導電現象を用いたデバイス開発では初だという。 研究論文は、科学雑誌アドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Advanced Energy Materials)オンライン版に2023年9月24日付で掲載された

(中條)

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