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次世代燃料電池の発電効率を大幅向上=横国大など

2023年10月16日 16時09分更新

文● MIT Technology Review Japan

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横浜国立大学、宮崎大学、産業技術総合研究所の研究グループは、プロトン伝導セラミック燃料電池(PCFC:Protonic Ceramic Fuel Cell)の発電性能を飛躍的に高めることに成功。実験データを再現できる計算モデルを構築し、開発したPCFCで70%以上の発電効率を実現できることを確認した。

横浜国立大学、宮崎大学、産業技術総合研究所の研究グループは、プロトン伝導セラミック燃料電池(PCFC:Protonic Ceramic Fuel Cell)の発電性能を飛躍的に高めることに成功。実験データを再現できる計算モデルを構築し、開発したPCFCで70%以上の発電効率を実現できることを確認した。 PCFCは他の種類の燃料電池よりも高い発電効率を発揮させることが理論的に可能とされているが、現状のPCFCでは電解質がプロトンだけでなく正孔も伝導して内部短絡を起こしてしまい、発電効率が低下する問題がある。 研究グループはPCFCの内部短絡が電解質を薄膜化したときにより顕著になることに着目。高いプロトン伝導性を有するイッテルビウム添加ジルコン酸バリウム(BaZr0.8Yb0.2O3−δ、BZYb)を電解質に選択し、材料組成などを工夫することで正孔伝導の影響を抑えた。また、製造法を工夫することで、厚さ約5μmの電解質でも内部短絡を抑制できる緻密薄膜化技術を確立。こうして開発したPCFCは、従来よりも100〜150℃低い作動温度550℃でもおよそ0.6W/cm2の出力密度を発揮した。 研究グループは電極反応や電解質内の物質移動を表現する数式に内部短絡の影響を組み込み、PCFCの出力密度を発電効率を再現できる計算モデルを構築。今回の研究での実験で取得したプロトン伝導性電解質の材料物性などをこの計算モデルに入力することで、より正確な計算を可能にした。計算モデルから算出した値と今回開発したPCFCの測定値は高い精度で一致し、計算モデルを基に電解質膜厚や作動温度、燃料利用率などの条件を設定して発電特性を推定した結果、開発したPCFCは70%を超える発電効率を実現できることが分かったという。 研究成果は9月27日、エナジー・カンバセーション・アンド・マネジメント(Energy Conversion and Management)誌にオンライン掲載された。研究グループは今後、電力材料の改良などによって実際に作動温度500℃で高効率発電ができることを実証することを目指すとしている。

(笹田)

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