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胃酸抑制剤の候補化合物を機械学習で設計、名大など

2023年10月10日 06時49分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学、理論創薬研究所、インテージヘルスケア、理化学研究所、高輝度光科学研究センターの研究グループは、機械学習を利用して胃酸抑制剤の候補化合物を設計し、その化合物を合成することに成功した。

名古屋大学、理論創薬研究所、インテージヘルスケア、理化学研究所、高輝度光科学研究センターの研究グループは、機械学習を利用して胃酸抑制剤の候補化合物を設計し、その化合物を合成することに成功した。 研究グループは従来、胃酸を分泌する胃プロトンポンプに既存の胃酸抑制剤が結合した様子をX線や電子顕微鏡で調べ、薬剤がタンパク質のどの部分に結合しているのかを調べた研究を続けていた。その結果、薬剤はすべて水素イオンの通り道に結合して、この道を塞ぐことで胃酸分泌を止めることが分かっていたものの、薬剤によって結合する部分は少しずつ異なっていた。 そこで研究グループは、機械学習で化合物を設計できるソフトウェア「Deep Quartet(ディープカルテット)」を利用して、胃プロトンポンプ構造の特定の場所に結合する化合物を設計。Deep Quartetが導き出した百数十の化合物の中から、有機化学や構造生物学の観点から適していると考えられるものを選び出し、実際に化合物を合成した。胃プロトンポンプの活性阻害を指標として、合成した化合物がどれくらい強く結合するかを調べたところ、6番目に合成した化合物「DQ-06」が適していることが分かった。 研究グループはさらに、DQ-06がどのように胃プロトンポンプに結合しているのか、大型放射光施設SPring-8にある共用電子顕微鏡で化合物を確認。その結果、化合物は想定通りに結合しているものの、化合物と結合ポケットの間にすき間があることが分かったことから、DQ-06に塩素原子を1つ導入した少し大きめの化合物「DQ-18」を合成し、最終的に期待した結果を得た。 研究成果は9月19日、コミュニケーションズ・バイオロジー(Communications Biology)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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