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AIで新たなタンパク質品質管理の仕組みを解明=順天堂大など

2023年08月29日 06時30分更新

文● MIT Technology Review Japan

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順天堂大学、北海道大学、東京大学の共同研究チームは、人工知能(AI)プログラム「アルファフォールド・マルタイマー(AlphaFold Multimer)」を利用し、これまで立体構造が知られていなかった「UFM1(UFM1遺伝子によってコードされるタンパク質)連結酵素」の立体構造の高精度予測に成功した。

順天堂大学、北海道大学、東京大学の共同研究チームは、人工知能(AI)プログラム「アルファフォールド・マルタイマー(AlphaFold Multimer)」を利用し、これまで立体構造が知られていなかった「UFM1(UFM1遺伝子によってコードされるタンパク質)連結酵素」の立体構造の高精度予測に成功した。 AlphaFold Multimerは、複数のアミノ酸配列を入力すれば複数のたんぱく質からなる複合体の構造を予測するAIプログラムで、ディープマインド(DeepMind)が開発した。アミノ酸配列からその立体構造を極めて高い精度で予測できる同社のAIプログラム「アルファフォールド2(AlphaFold2)」(2020年11月30日に発表)を、複合体予測に対応させたバージョンに当たる。 今回の研究では、2022年3月に発表されたアルファフォールド・バージョン2.2.0を使用してUFM1連結酵素の立体構造を予測。その結果、UFM1連結酵素である「UFL1」が小胞体局在たんぱく質「UFBP1」およびUFL1結合たんぱく質「CDK5RAP3」と三者複合体を形成した時に、小胞体における合成途中のたんぱく質品質管理機構(ER-RQC)に機能することが明らかになった。 研究チームはこれまでに、ヒトゲノムデータベースと質量分析解析によりたんぱく質修飾システム「UFM1システム」を発見。同システムを構成するたんぱく質を作り出す遺伝子の変異が遺伝性の発達・てんかん性脳症を引き起こすことを報告してきた。しかし、UFM1連結酵素の立体構造が解かれておらず、その詳細な仕組みは不明だった。 今回の成果は、基礎研究におけるAIの有用性を示すとともに、UFM1システムの異常が直接に関与する遺伝性の発達・てんかん性脳症発症の発症機構の解明に繋がることも期待される。研究論文はサイエンス・アドバンセズ(Science Advances)誌のオンライン版に2023年8月18日付けで公開された

(中條)

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