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生成AI活用の実情、すぐれた成果を上げる「トップCEO」の特徴、CIOやCDOなど技術幹部への期待など

「AIが企業価値と変革力を増幅」IBMがグローバルCEO調査レポート公表

2023年08月14日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは2023年8月10日、「CEOスタディ(グローバル経営層スタディ)2023」調査レポートの記者発表会を開催した。

 今年の同レポートは「AIが本質的な価値と変革力を増幅する」という言葉が掲げられた。日本IBM 常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者の村田将輝氏は、「AIが企業の本質的価値、変革力を増幅することで、これまでに変革を実行してきたCEOにとっては絶好の機会が訪れている。今回のCEOスタディを通じて、生成AIの登場がCEOの意思決定やビジネスモデルの変革を進めること、それと同時に、成長機会と倫理的なリスクも見る必要があることが示された」と総括している。

「CEOスタディ 2023」の主要な洞察

3つの主要メッセージ

日本IBM 常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者の村田将輝氏(中央)、同 IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー部門責任者 パートナーの瀬良征志氏(右)、同 IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー パートナーの田村昌也氏(左)

技術幹部が「今後の戦略的意思決定で大きな役割」という認識強まる

 IBMでは2023年2~4月、「リーダーシップとビジネスに対する経営層の視点」「経営層の役割と責任の変化」「今日のCEOの意思決定」の3点をテーマに、世界30カ国以上の24業種、3000人のCEO(うち日本は165人)へのインタビュー調査を実施。さらに2023年4~5月には、北米企業のCEO、200人を対象に生成AIに関する追加調査を行った。

 今回のCEOスタディレポートはこれらの調査結果を反映し、「AI時代の到来で変わるCEOの意思決定」にフォーカスしてまとめたもの。

 同レポートによると、「今後3年間で。企業に最も大きな影響を与える外部要因」としては「テクノロジー」という回答が最も多く、「法規制」が2021年から3年連続の2位となっている。また「人材・スキル」が前年の7位から4位に上昇した。日本IBM IBMコンサルティング事業本部エンタープライズ・ストラテジー部門責任者 パートナーの瀬良征志氏は、結果について次のようにコメントした。

 「テクノロジーはここ数年“不動の1位”といえる状況。またコロナ禍以降は、コンプライアンスに対する関心が高まり、人材不足やスキルのアンマッチが経営課題になるとの見方も増えている」(瀬良氏)

設問「今後3年間で。企業に最も大きな影響を与える外部要因」(2004~2023年の順位の変動)

 なお「次の3年間における優先事項」という設問では、アフターコロナを見据えて「生産性や収益性」という回答がトップだった。瀬良氏は「テクノロジーのモダナイゼーションテクノロジーのモダナイゼーション」が2位に、「サイバーセキュリティとデータプライバシー」が4位に入っていることを指摘した。

設問「次の3年間における優先事項」

 「CEOの戦略的意思決定において、参考にしている情報源」では、「オペレーショナルデータ」や「財務データ」という回答が多かったが、さまざまな情報を意思決定に用いる傾向も強まっている。今後、AIの広がりによってさらに多様な情報を活用する動きが加速することを予測した。

 「次の3年間で、戦略的意思決定において大きな役割を果たす経営層」として、1位の「COO」と2位の「CFO」は前年から変化はなかったが、「CIO」という回答が19%から38%に増えて、5位から3位に上昇。ほかにも「CDO」が16%(7位)、「CISO」が15%(8位)と、テクノロジーに関連する責任者の位置づけが上がってきているという。

設問「次の3年間で、戦略的意思決定において大きな役割を果たす経営層」

 「企業が結果を出すために役立つと期待するテクノロジー」について、前年は「クラウド」「IoT/モバイル」「生成AIや深層学習、ML(機械学習)」に集中していたが、今年はそのほかの項目(高度なアナリティクス、自動化、自然言語やチャットボットなどのAI、5G、ブロックチェーン、データファブリック、データアーキテクチャーなど)の幅広い分野に分散する傾向が強まった。

 期待を集める一方で、データ活用には課題も多く挙がる。「企業から見たデータ関連の課題」として、「データの計算・報告手法が不明確」が41%、「重要なインサイトを見出すことが困難」が40%となっており、「データについては、まだ基本的な部分がCEOの障壁になっている」と指摘。また61%のCEOが「不確実性があるため、自社に明確な基準が不足している」と回答。そのため56%が「投資判断に遅れが生じ、重要な投資を先延ばししている」ことも明らかになったという。

データ活用においては具体的な課題も浮き彫りに

すぐれた成果を上げる1割の「トップCEO」の特徴とは

 

 IBMは今回の調査において、すぐれた成果と高い業績を実現している「トップCEO」を定義し、その比較も行っている。トップCEOに該当するのはCEO全体の10%。

 具体的には、「自社のデジタルインフラによって新たな投資が可能になる」、「最も重要な意思決定はデータだけでは行えない」という2つの質問に「強く同意する」と回答したCEOを「トップCEO」と定義している。

すぐれた成果を上げている「トップCEO」の特徴

 トップCEOは、強い技術的基盤の上で柔軟な意思決定アプローチを行っており、予測及びモデリング、予測分析、ベンチマーク、データマイニング、シナリオプランニングといったすべての行動を、他のCEOよりも重要視している。また「自社のダッシュボードがインサイトを提供してる」と評価する割合も、その他のCEOの13倍に達している。加えて、トップCEOの90%が「指標を明確に打ち出すことで、組織文化を強化している」と回答した。

 また、トップCEOは困難な問題に取り組む傾向が強い一方で、自らの行動を後悔する割合が少ないという。「社会的立場や地政学的問題における自社の立場を明らかにすべき」と考えるトップCEOは88%(CEO平均は77%)。一方で「過去3年間に、自社の公的立場において公表した内容を後悔している」トップCEOは30%にとどまる(CEO平均は44%)。こうした結果も、トップCEOがデータを積極的に活用していることが背景にあるのではないかと分析している。

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