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中性子星の合体の際に何が起こるのか、世界最長の模擬実験で解明

2023年08月03日 05時43分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学と東邦大学らの共同研究チームは、スーパーコンピューター「富岳」を使い、連星中性子星の合体に対する世界最長(合体後1秒間、既存の10倍)の一般相対性論シミュレーションに成功。物質が放出されていく様子やブラックホールの周りにトーラスが形成される様子を示す動画を公開した。

京都大学と東邦大学らの共同研究チームは、スーパーコンピューター「富岳」を使い、連星中性子星の合体に対する世界最長(合体後1秒間、既存の10倍)の一般相対性論シミュレーションに成功。物質が放出されていく様子やブラックホールの周りにトーラスが形成される様子を示す動画を公開した。 研究チームは今回、数値相対論と呼ばれる技法を使用。それぞれ1.2太陽質量(太陽質量は太陽の質量を1とする質量の単位)および1.5太陽質量の2つの中性子星の合体の様子のシミュレーションを、富岳で7200万CPU時間かけて実行した。 シミュレーションの結果、合体後約0.01秒に物質の放出が始まり、約0.04秒後にこの動的質量放出はピークに達し、約0.3秒後には合体時に形成されたトーラスから物質が再び放出されることが判明。さらに、動的質量放出は合体時の潮汐力と衝撃加熱によるものであるが、合体後の物質放出はトーラス内の磁気乱流によるものであることを初めて、首尾一貫したシミュレーションで示した。 2017年に、2つの中性子星からなる連星の合体によって放射された重力波、電波、近赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線が世界で初めて観測された。合体過程で放射される重力波や電磁波の特徴について高精度かつ統一的な理解が得られたことは、合体で実際に何が起こったかを詳細に理解する重要な一歩となり、天文学や原子核物理、素粒子物理学など別分野への波及も見込まれるという。 研究論文は、フィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)に2023年7月7日付けでオンライン掲載された

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