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オープンイノベーション活動に関わる人的側面:組織と個人で求められる効果的アプローチとは

連載
オープンイノベーション入門:手引きと実践ガイド

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オープンイノベーション活動に関わる人材要件

 オープンイノベーション活動を推進するうえでは、社内のさまざまな人々が関わってくる。オープンイノベーションに関する深い理解とリーダーシップのあるトップマネジメントの存在には多様なメリットがあるし、支援対象組織に協力者がいれば業務が進めやすくなる。一方で最低限必要なのは、オープンイノベーションチームのメンバーと探索ニーズを出してくれる担当者である。

 オープンイノベーションチームのメンバーには、以下2つのスキルが求められる。

●重要度が高い探索ニーズを収集するための、課題解決コンサルティング力
●ニーズに合ったシーズを探索するための、オープンイノベーションの手法/仲介サービスの活用力

 その他にリーンスタートアップやデジタル技術についての知見があると、支援の幅が広がるし、法務知財関連の知識やスキルがあれば、交渉時に役に立つ。一方で各種専門分野の知見はあればよい程度で優先度は高くない。

 次に支援対象組織の担当者の要件を考えてみたい。社外との協業プロジェクトは社内のものと比べて難易度が高いため、推進するには相応の力が求められる。そしてオープンマインドを持っていることも重要である。実務能力が高くとも、すべて自分で完結したいという人には向いていない。またオープンイノベーションのような仕組みレベルの話に興味があると、より効果的に支援できる。

 続いて具体的な対策について考えてみると、オープンイノベーションチームのメンバーは外部採用を考えてみるとよい。少々古いが求人市場におけるオープンイノベーション関連職について調べた論文が報告されており、対象期間の2014~2016年で、求人数が増加傾向にあることが確認されている。国内ではまだ少ないが、オープンイノベーション活動に取り組む企業が増えるに伴い今後は増加していくのではないだろうか。
*Dabrowska, Justyna and Daria Podmetina [2017], "Roles and responsibilities of open innovation specialists based on analysis of job advertisements," The Journal of Innovation Management, 5(4), 103-129.

 外部人材を採用できない場合の選択肢も考えてみたい。まず思いつくのは仲介業者の活用(第4回参照)である。仲介業者の中には協業パートナーの探索サービスを提供する以外に、オープンイノベーション活動に関するコンサルティングを実施しているところがある。しかしながら顧客企業は極端に言えば自社の探索サービスを押し込む対象であり、中立的なアドバイスは期待できないと思ったほうがよい。

 次に自社の探索サービスを持っていないコンサルティング会社によるサービスであるが、ある程度は中立的な観点から包括的な支援が受けられるため、予算面で問題がなければ有効性は高いと思われる。最後は本連載第4回で紹介したノウハウを持った個人の探索に活用できる専門家紹介サービスである。何よりも低額で気軽に試せるため、オープンイノベーションチームのレベルでも使い勝手がよい。

 支援対象組織の担当者については、第5回ですでに述べたように、協力が得られて重要度が高い対象を優先するとよい。ただし探索ニーズを出してほしいと言っても最初から出てくることはまずないため、1対1で話す機会を繰り返すことで、筋のよいニーズの発掘につなげていく。またシーズの探索過程やその後の協業プロジェクトを体験してもらうことで、少しずつ育成していきたい。

コラム:専門家紹介サービス

 現時点でもさまざまな仲介業者が専門家を紹介するサービスを提供しており、新たなサービスの立ち上げもそれなりに見られる。各サービスは強みとする人材や対応している支援方法が異なっており、相談内容が技術寄りかビジネス寄りか、単発で話を聞きたいか、もしくは半年など一定期間アドバイザーとして相談に乗ってほしいといった契約形態の違いによって、使い分けが必要となってくる。

 活用事例としてはDXや新規事業開発などイノベーション活動を推進するうえで課題が出てきたときや、他社に出遅れている分野や業務で短期間にキャッチアップしたいときが挙げられるが、その他にもいろいろなケースに対応できる。従来であれば専門の企業に相談していた各種戦略の策定などについても、個人として受けてもらえる場合がある。企業を通さず直接的に個人に発注することで、安価に業務を委託できる。

 人材に関係するという意味では、この種のサービスは本来人事部が管轄してもよい気がしている。しかしながら人事部は現場の部署から課題が集まるわけではないため、その必要性を感じていない可能性がある。よって課題解決コンサルティングを行うオープンイノベーションチームなど、イノベーション関連部署が全社的な窓口となって運用することが効率的かもしれない。

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