厳しいPCの市場環境で過去最高水準の売上、世界への進出も進めたい
PC市場が低迷するなかでも、VAIOの力強い成長戦略を打ち出そうとしている。
同社によると、2022年5月期の売上高は前年比3%増の224億円、営業損益は2億円の赤字を計上した。赤字は2015年5月期以来、7年ぶりのことだ。この数字を見る限りVAIOは厳しい状況にあると言わざるを得ない。
VAIOの山野社長は「PC需要の低迷に加えて、半導体不足によるキーデバイスの入手難および価格の高騰、中国ロックダウンの影響によるサプライチェーンの混乱、新製品の販売遅延、ウクライナ侵攻を起点とした円安などが業績悪化の要因になった」と語る。
だが、期末を2ヵ月後に迎える2023年5月期は、売上高は前年比1.6倍という大幅な成長を見込み、過去最高水準にまで回復するとともに、出荷台数も1.5倍に増加。営業利益も黒字に転換する見通しだ。「円安によるコスト上昇を克服し、販売も好調に推移している」と、手応えをみせる。
好調の要因は、法人向けPCの販売増加だ。
「企業コミュニティにおけるVAIOの認知度がまだ低い現状を捉えて、私自身が先頭に立って、営業活動を行った。また、法人向け営業体制も強化した。その結果、これまではVAIOを選定品候補にしていなかった企業から、数千台~1万台の規模で受注を得ることができた。直販だけでなく、ディストリビュータやリース会社、販売店、SIなどのパートナーとの協力関係も強固にしたことで、チャネルを通じた販売も伸びている」という。
この勢いはさらに加速することになる。
発表した新製品の投入によって、2024年5月期のPCの販売台数は1.5倍以上の規模に拡大する計画であり、そのうち、今回の新製品が約4~5割を占めることになるという。それに伴って、売上高もさらに成長させることになる。
「新製品を皮切りにして、グローバル向けにもVAIOの価値を届けていくことになる。ソニーから独立後、海外ビジネスは限定的な展開に留めており、現時点では国内販売比率が95%を超えている。また、海外で販売しているVAIOブランドの商品は、VAIOの設計・製造ではない、ライセンス型の商品が大半である。今後は国内のシェアを高めていくとともに、海外向けにも自社商品の販売を増やしたい」とする。
国内外ともに成長戦略に舵を切ったのがいまのVAIOの状況だ。VAIOの事業戦略がギアチェンジするきっかけになるPCが、新しい製品ということになる。
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