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謎の天体現象「高速電波バースト」の出現環境を観測=東大など

2022年12月21日 09時28分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学などの共同研究チームは、「アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」を使って、未だ謎の多い天体現象である「高速電波バースト(Fast Radio Burst:FRB)」が出現した銀河(母銀河)を観測。星の材料である分子ガスに着目して調べることで、高速電波バーストが、一般的な星形成銀河とは異なる銀河環境で出現することを明らかにした。

東京大学などの共同研究チームは、「アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」を使って、未だ謎の多い天体現象である「高速電波バースト(Fast Radio Burst:FRB)」が出現した銀河(母銀河)を観測。星の材料である分子ガスに着目して調べることで、高速電波バーストが、一般的な星形成銀河とは異なる銀河環境で出現することを明らかにした。 高速電波バーストは、マイクロ秒からミリ秒という短時間に強力な電波パルスを発する天体現象である。2007年の発見以降、数千例以上の観測があるが、その起源となる天体の正体や発生のメカニズムは分かっていない。 研究チームは今回、ミリ波・サブミリ波帯で世界最高の性能を持つアルマ望遠鏡で、分子ガスの指標として用いられる一酸化炭素分子輝線を使用して、高速電波バーストの母銀河を新たに3つ観測した。その結果、高速電波バーストの母銀河としては最遠方となる、赤方偏移0.3214(距離およそ3.6億光年)の母銀河からの分子ガス輝線の検出に成功した。 さらに、過去に観測された3つの母銀河と合わせて、母銀河の分子ガスの性質を探ったところ、高速電波バーストの母銀河の分子ガス質量と星形成率は、一般的な星形成銀河とは異なり、広い範囲に渡って分布していることが判明。大質量の星の終末に起因すると考えられるガンマ線バーストや重力崩壊型超新星の母銀河とも異なる傾向を示すことが分かった。 研究チームによると、今回の研究で用いた、高速電波バーストの出現環境を分子ガスの観点で理解する新たな手法によって、高速電波バーストの起源天体の解明が進むことが期待されるという。研究成果は、米国科学誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ(Astrophysical Journal Letters)のオンライン版に2022年11月28日付けで掲載された

(中條)

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