業務を変えるkintoneユーザー事例 第163回
青天井化していた発注額を適正化し、年間9000万円の経費削減を実現!
kintoneで笑顔あふれる会社に生まれ変わった日本エンジニアリング
2022年10月26日 10時30分更新
2022年7月21日に東京のZeppDivercityで「kintone hive tokyo」が開催された。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。「kintone hive tokyo」では7社が登壇し、今回は5番目に登壇した日本エンジニアリング 代表取締役 能重裕介氏によるセッション「設備工事会社のDXをkintoneで実現。大幅な収益改善につながった秘訣とは」のレポートを紹介する。
Excelでの案件管理で膨大な時間がかかり、社員も辞めていった
能重氏は学生時代にはバンド活動を行なっており、2008年にはメジャーデビューしている。しかし、翌年の結婚を機にエンジニアリング事業を開始し、2016年に日本エンジニアリングを設立した。空気や水に関する事業を行なっており、通常であればばらばらな工事を一貫して手がけることができ、適正なコストで提供できるのが強みだという。
売上は順調に伸びたのだが、それに伴って課題に直面した。原価や売上の情報を担当者ですら把握できない状況になってしまったのだ。案件管理や原価集計が追いつかないのでパンク寸前になり、決算期まで収支の実態がつかめなくなった。Excelで案件管理をしていたので、ミスに気が付くこともできない。
「それまでは、総務と経理の業務をすべて妻に任せていました。本来は仲良く暮らしていたのですが、胸ぐらを掴み合いながら喧嘩する日が続くようになりました」(能重氏)
職員も悩んでいた。当然、本来は仕事をした分だけお金をもらうのが理想的だが、実際には、何をやっているのかが分からず、適切な評価ができなかったという。定時で帰宅して欲しいものの、案件情報の集約に膨大な時間がかかるので、残業も多く発生していた。
問題を解決するために、Excelのマクロを使って管理したり、パッケージ版の営業管理システムど導入したりもしたのだが、一部の人は使うが全体的に活用するところまでは辿り着かなかったという。
「改善にチャレンジしているということは、仲間を大切にしていること」と思っていたのだが、改善されなければ社内の不満はずっと積もっていくばかり。辞めていった職員がたくさん出てしまった。能重氏はここに気が付かず、今でも悔やんでいるという。そんな中、当時総務の業務担当者だった小沢さんが「社長、kintoneやろう」と声をかけてくれたそう。
kintoneを導入するも、社員になかなか伝わらなかった
「kintoneを実装するにあたり、課題が2つありました。まずはいろいろな情報があるので、それぞれを紐付けを行ないたいという点。もうひとつが、業務の可視化を行ないたいという点です。今、どういう状況にあるのかをリアルタイムで見られるようにしたいと思いました」(能重氏)
kintoneアプリの作成はベンダーに依頼したという。まず作ったのが「工事台帳」アプリだ。ルックアップで工事名を取得すると、工事の基本情報が自動的に「工事台帳」アプリに入って来るようにして、工事や実行予算の履歴などもまとめて閲覧できる。誰が何時間働いて、どのぐらい労務費がかかってるのかもわかるようになった。管理者が工事プロジェクトの状況を一目で把握できるようになったのだ。
しかし、各部課長に提案したところ、「誰がどうやるんですか、分からないので、できません」という反応が返ってきた。みんな、自分の業務以外に手を出したくない空気になっていたのだ。さらに、使う人が出たと思ったら、kintoneを管理するために、今度はExcelで管理をする人も出てきた。
そこでまた小沢さんが「社長、kintone作ってもらっていいですか」と言ってきたそう。kintoneアプリを作れば終わりだと思っていたそうだが、実際は運用することが大事だということがわかったのだ。
まず手を付けたのが発注業務だった。今までは発注タイミングが決められていなかったため、支払いの時に原価が発生するという状況が続いていた。工事の実行予算を立てた段階では、見えない予算が存在していたので、知らずに支払いが膨れ上がり予算超過という事態も発生した。そこで責任者を集めて、業務のプロセスを一緒に洗い出したという。そして正確に業務フローを統一したものを、kintoneのプロセス管理で構築した。
現在のステータスが、社長だけでなく役員でも担当者でも案件ごとに確認できるようになった。こうして、従来は青天井化していた発注額の適正化が実現できた。関連レコードで支払金額と発注金額が一致しないとOKが出ないようにするという工夫も凝らした。このおかげで、確認しなければならないプロセスをこの段階で止められるようになり、業務効率は格段に向上した。
「ここまでやっても一般の職員はよくわからなかったようです。どうせ上の人がやるんだろう、私たちに関係あるの?といった感じで、一生懸命がんばって作ったんですけど、全然浸透しませんでした」(能重氏)
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