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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第9回

ツルピカじゃダメ 人気SFの宇宙船が汚れてる理由

2013年01月25日 09時00分更新

文● 前田知洋

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パフォーマンスやプレゼンの中の動きのノイズ

 以前、脳科学者の茂木健一郎さんがホストの「ニューロンの回廊~潜在脳力の開拓者たち~」(BS日テレ)に出演したとき、マジックのシーンで新品のトランプのセロファンの包装を上手く開けられないフリをしたことがあった。普段はそんなふうにホストやテレビ関係者を心配させるようなことはしない。

 しかし、あまりスムーズに開封して、「この人は手先の器用な人なんだなぁ。だから不思議なことができるのだろう」と思われるより、「あれ?この人、僕らと同じように不器用なんだなぁ…」と、共感からスタートしたほうがマジックでは感動が大きくなる。そんなことを証明したくて、そんな演出を付け加えた。番組のトークでそのことを説明すると、茂木さんに「触媒(特定の化学反応の反応速度を速める物質)と同じだね」と科学者らしい分析をしてもらったことを今でも憶えている。

ダ・ヴィンチの名画「モナ・リザ」の水平ではない背景

 作為的なノイズの混入は古くからあった。世界で最も有名な絵画といってもいいレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」。よく観察すると背景の水平線が歪んでいるのをお気づきになるだろう。ダ・ヴィンチが土木、建築や遠近法をはじめ科学技術の研究に熱心だったことを考えると「たまたまズレた」とは考えにくい。

 その他、左右の「まなざし」も、右目は正面を向いているが、左目は左方向を向いているなど、若干のズレがあり、それが「モナ・リザ」の神秘的な微笑みを生み出しているともいわれている。

世界で最も有名な絵画の1つ「モナ・リザ」。ルーブル美術館所蔵

背景の海の水平がズレている。(水色の線はキャンバスと平行したガイドライン)

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