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NTT Communications Forum基調講演レポート

NTT Com有馬社長が語る「クラウドとグローバルへの本気度」

2012年10月29日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月25日・26日の2日間開催された「NTT Communications Forum 2012」の基調講演において、代表取締役社長の有馬彰氏はNTTコミュニケーションがクラウドプロバイダーとして着実にサービス拡充を進めているという点をアピールした。

3割のコスト削減を実現した事例も披露

 ここ2年のNTTコミュニケーションズは、国内企業向けの通信事業者からグローバルをターゲットとするクラウドプロバイダーへの脱皮を一気に進めている。同社が強みを持つネットワークやデータセンターは、あくまでクラウドを支えるインフラという位置づけ。さらにユーザーのビジネスに直結するアプリケーションやマーケティングといった分野もサービスを拡充している。25日に行なわれたNTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 有馬彰氏の基調講演は、同社のクラウド分野への取り組みを示した「グローバルクラウドビジョン」を明確にしたものだった。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 有馬彰氏

 有馬氏は、成長分野の進出やワークスタイル変革、コスト競争力の強化、セキュリティ、BCPなど、現在の企業が抱える経営課題の解決を実現するためには、ICTのアウトソーシングが必要だと訴えた。そして、同社が昨年立ち上げた「グローバルクラウドビジョン」に則ったアウトソーシングサービスにより、コスト削減や弾力的な事業構造、経営資源の最適化などが実現できると説明した。

 実際、製造業A社では日本と海外で異なっていた事業部やシステムをグローバルで統合化し、音声やアプリケーション、セキュリティ、サーバーやデータセンターまで、NTTコミュニケーションズにアウトソーシングしたという。有馬氏は、「1700台のサーバーを私どものクラウドにお預けいただき、製造部門でどうしても動かせない500台のサーバーのみお客様で運用していただくことにした。その結果、ICTコストの約3割を削減させていただいた」と述べ、すでに事例に結びついていることをアピールした。

グローバルクラウドビジョンはどこまで進んだか?

 続いて、有馬氏はインフラ、ネットワーク、クラウド、カスタマーポータル、クラウドマイグレーション、トータルセキュリティ、汎用アプリケーション(BYODやSaaS)、パートナーシップという8つの分野で、グローバルクラウドビジョンがどのように進んでいるのかを説明した。

グローバルクラウドビジョンの8つの分野

 最初に説明したのが、クラウドの基盤となるインフラ部分である。データセンターに関しては、アジア、欧州6カ国に約3.5万㎡のサーバールームを追加し、全世界で145カ国/約17万㎡を持つに至ったという。ネットワークに関しては、日本~シンガポール間を業界最低の遅延で接続する大容量海底ケーブル「ASE(Asia Submarine-cable Express)」の提供を開始。「地震や台風被害の頻発する台湾南のバシー海海峡付近を回避することで、高い信頼性を実現した」(有馬氏)という。

展示会場で披露されたASEのケーブル見本

 また、クラウドサービスに関しては2012年6月からネットワーク仮想化技術を導入した高品質なクラウド「Bizホスティング Enterprise Cloud」、2012年3月からは低価格なパブリッククラウド「Bizホスティング Cloud(n)」を導入。グローバル展開も逐一進めていくほか、機能面でも他社に比べてひけをとらない充実したサービスを提供していくという。

 こうしたクラウドへのマイグレーション体制も本格化しており、システムコンサルティングに加え、標準化された移行メニューを提供している。マイグレーションに際しては、ユーザーの情報システム部と経営層と共同で、現場の理解を得られるように説明会やキャラバンを行なったり、ICT環境の調査、コスト削減試算、移行プランの策定までさまざまなサービスを用意しているという。

 来春にはネットワークやサーバーの仮想化技術をフル活用し、既存のIPアドレスを変更せず、オンプレミスからクラウドへのマイグレーションを可能にする新サービスを提供する予定。「私たちのデータセンターのネットワークを仮想化技術でお客様のLANまで延長させていただき、オンプレミスのサーバーをIPアドレスをそのままで弊社の仮想サーバーに移行していただける」(有馬氏)というものだ。開発中の仮想化技術でも、積極的にビジネスに取り入れていく姿勢を明確にしたといえよう。

来春投入予定の仮想化技術を用いたクラウドマイグレーション

 特に注目したいのは、最後に説明したパートナーシップの取り組みだ。従来、あまり触れられてこなかった部分だが、薄利多売のクラウドでは幅広いパートナーとの協業は非常に重要。有馬氏はICTアウトソーシングを提案していくためには、ビジネスコンサルティング会社やSIerとの連携が重要になるとの見込みを示すとともに、国内外のキャリアやSIerなどのパートナーに対して、同社のサービスを「ホワイトラベル」として卸し売るビジネスを積極的に推進していくと述べた。

「アジアに来るならNTT Comだ」をアピール

 基調講演後のQ&Aセッションにおいて、有馬氏はグローバルへの進出について、「お客様のほうがすでにグローバル化しており、そうなるとICTシステムにもグローバルを求められる。そうなると欧米のキャリアやSIerと戦うことになる。でも現状、われわれがとれているお客様は日系企業。非日系企業の心臓部に入り込めているわけではない」と現状を分析。そこで、NTTグループのグローバルSIerであるディメンションデータとの連携したり、海外でクラウドに出遅れているキャリアにサービスインフラを提供するといった「黒子戦略」を打っていく。

 グローバルの中でもアジアでのカバレッジは、強くアピールしていきたいという。「地政学的な面もあり、欧米キャリアに比べれば、アジアでのケーブルやデータセンターなど、弊社が圧倒的に優勢だ。だから、欧米に行く時は弊社はGateway to ASIAだと説明する。『アジアに来るならNTT Comだ』とアピールしており、けっこう受けている」(有馬氏)と話す。とはいえ、「アジアではNTT自体を知らないという報告ばかり(笑)」と認識しており、現地のイベントに出たり、地道に知名度向上を進めていくという。

 また、ビッグデータの関連で顧客のターゲットが情報システムだけではなく、マーケティング部門に拡がってくるという現状については、「10月に立ち上げたNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは、Twitterを分析して顧客動向を知るとか、キーワードのネットでの評価を調べるBuzz Finderを展開するとか、まさにマーケティング部門向けのビジネスを手がけるところ。今後、いろいろ苦労するとは思うが、マーケティング担当者の部分とのリーチが必要になってきているのは確か」とのことで、子会社を活用し、新しいニーズに応えていくと説明した。

初出時、最終段落に「5月に立ち上げたNTTコム マーケティングは」とありましたが、正しくは「10月に立ち上げたNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは」の誤りです。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2012年10月29日)

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