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クラウド時代を「Express5800/ECO CENTER」で乗り切れ! 第2回

月額7350円の低価格レンタルサーバーサービスの舞台裏

KDDIウェブ山瀬代表が語るエコと経営、そしてサーバー

2010年09月22日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田 元

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「グリーンITはコスト削減手段です」。KDDIウェブコミュニケーションズ代表の山瀬明宏氏は、こう断言する。もちろん、社会貢献を軽視しているのではない。ホスティングという事業において、電力消費とコスト、そして両者の与える経営へのインパクトを考えると、その発言はアグレッシブになる。

コスト削減の手段としてのグリーンIT

 「CPI」ブランドで累積4万社の実績を誇るレンタルサーバーサービスを展開するKDDIウェブコミュニケーションズ(以下、KDDIウェブ)。レンタルサーバー、VPS、カスタマイズ可能なホスティングなど、ユーザーにあわせた幅広いメニューを取りそろえているほか、KDDIグループ傘下という特徴を活かしたネットワークのインフラの強さも大きな売りだ。また、オンラインホームページ作成ツール「Jimdo」やGoogleAppsとの連携など、ユニークなサービスを次々と打ちだしている。こうしたKDDIウェブを創業当初から引っ張っているのが代表の山瀬明宏氏だ。

 感性マーケティングのコンサルティングという出発点を持つ山瀬氏は、ホスティング業界に多い技術指向の経営者と一線を画する。その視点は日本経済や社会構造を見据えつつ、グローバルのライバルとの勝負を決して恐れない。一方で、ユーザーの視線を決して忘れず、きわめて妥当な品質とコストのサービス提供に腐心する。その山瀬氏が分析する現在のホスティング、ひいてはクラウドコンピューティングの市場はきわめてシビアな世界だ。「グーグルのようなところが無料に近い価格でディスクを提供しており、シェアード型ホスティングの価格の下落圧力はきわめて大きくなっています。回線、データセンター、サーバーなど、あらゆる手段でコスト削減を進めないと、利益が出ません」(山瀬氏)。

KDDIウェブコミュニケーションズ代表の山瀬明宏氏

 こうした価格の下落圧力に対するKDDIウェブの手段の1つが、冒頭に山瀬氏が語った「グリーンIT」である。IDCコスト全体の3割をしめる電力の削減と限られたスペースを有効に活用するための集積密度の向上によってコロケーションにかかるコストの低下を実現させることだ。サーバーの選定に携わるKDDIウェブ システム統括部 システム運用部 ゼネラルマネージャーの斉藤哲男氏は「1ラックに供給できる電力は決まっていますし、電力代が高いんです。ですから、われわれ事業者はサーバーの集積密度を上げ、単位当たりの効率性を高めていかなければなりません」と語る。

 電力削減と集積密度の向上、そしてその結果としてのリーズナブルな料金設定。KDDIウェブのこうしたサービスの方向性を具現化したのが、9月に発表された管理者root権限付きの専用レンタルサーバー「カスタマイズエンジン」だ。サーバー1台をまるごと専有できるレンタルサーバーでありながら、最小プランの「CE01」では月額7350円という驚異的な価格で提供される。このCE01で採用されているのが、NECのAtomプロセッサー搭載サーバー「Express5800/E110b-M」である。

すべてのサーバーがパワフルである必要はない

 Atomプロセッサーを搭載したモジュール型サーバーという尖ったスペックについて山瀬氏は、「ネットブック用のCPUをサーバーに載せるなんて、ずいぶん大胆な製品だと思いました。でも、用途に合わせてサーバーのスペックは違っていいはずなので、発想としては正しいですよね」とファーストインプレッションをこう語る。一方、斉藤氏は「モジュール型サーバーと聞いてブレードサーバーみたいなものを想像していたので、ちょっと不安でしたが、確かにAtomのPCの電力消費は低いので、意外とイケるかもいう印象を持ちました」という。

 さっそく、斉藤氏が実機を試用したところ、ラックマウント型サーバーとやや異なった外見に比して中身はシンプル。部品も汎用的なものを使っているため、扱いやすかったという。「3Uで20台という高い集積密度を実現し、サーバー1台が低価格だったのが選定の最大の理由です。あと、NECさんにはどういったOSで動作するかといった情報もしっかり開示してもらい、助かりました」と斉藤氏。結果として、1ラックで160~200台という高い密度で搭載し、非常に短い期間でサービスの開始までこぎ着けた。斉藤氏は「昨今、NECさんのサーバーというと以前は一般企業の社内システム向けというイメージが強かったのですが、最近データセンター向けの製品ラインナップが充実しており、印象がずいぶん変わりました」とNEC Express5800データセンターライン全体についても高い評価を与えている。

KDDIウェブ システム統括部 システム運用部 ゼネラルマネージャーの斉藤哲男氏

安価な物理サーバー貸しという根強いニーズに応える

 ネットブック向けというAtomプロセッサー搭載のサーバーのサービスだが、ユーザーのニーズは押さえられるという。「同じ専用サーバーでも、お客様のニーズは数多くあります。もちろんXeonが必要なWebサイトもあるのですが、たとえば会社概要のページを格納するサーバーに過大な処理能力を求める人は少ないですよね。一方で、品質やサポートは妥協できません」(山瀬氏)とのこと。今回のExpress5800/E110b-Mの導入により、物理的なセキュリティと安定性重視で、レンタルサーバーは使いたいがパワーは重視しないというユーザーに向け、月額7350円の専用サーバーが実現できたという。

 「最終的にはユーザーに提供する価格が重要」(山瀬氏)ということで、あらゆる手段で値下げ圧力と戦っていくという山瀬氏にとってみれば、クラウドですらコスト削減の手段の1つ。そんな同社の戦略的サービスをNECのサーバーが支えている。

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