投資家から出資を得るには 金融機関や投資家は、5年を1つのタームと考る
相川さんは2004年に有限会社クレイプを起業した当時は、システム開発とWebサイトの企画・デザイン・運営を主業にする目論見があった。そう考えていた矢先に、台湾に住む元同僚からオンラインゲームのビジネスを一緒にやろうという誘いを受け、日本版の制作を協力することになる。オンラインゲームは運営に大規模なサーバーが必要なため、インフラ整備のために出資を募り、2005年に資本金を300万円から3000万円に増資して会社を株式化。8月には7000万円まで増資してゲームのオープンベータサービス、10月には課金サービスを開始した。しかし、その翌月に突如、台湾の会社が解散を決定し、サービスも11月に中止となる。これを機に、他社製品に頼る経営をやめて自社製品を作ることを決心した。起業時の気持ちに戻り、自社製品の開発に着手。そこで今度は、開発費の出資を募り、投資家から再び出資を得た。
「投資家から出資を得るには、自分のビジネスの企画を予算やリスクも含めて正直に話すことが大事だと思います。自分たちも多額の借り入れをして大きなリスクを負っていることを誠実に伝えるなど、腹の内を見せることで初めて投資家に自分たちの本気度を伝えることができるのだと思います」
「あと、起業直後は実績も信頼もないので、企画書だけで出資をしてもらうのは非常に難しいですね。だから、どんなサービスを考えているのかを、実際に動くものを見せて説明することも大切だと思います。実際のサービスに近い動きをするサンプルを作って見せることで、そのサービスに現実味が帯び、魅力を投資家にアピールすることができます」
「それからポイントとして、起業する前に5年間の事業計画は立てておくべきです。金融機関や投資家は、5年を1つのタームと考えているからです。出資を受ける際には、このタームに適した事業計画をアピールすることが大切でしょう」
出資を受けるには、まず投資家(エンジェル)の存在が必要だ。では、相川さんはどのようにしてエンジェルを見つけたのか。そして、人脈の作り方は……。
「実は私はそれほど社交的な人間ではありません。でも、自分が会いたい人物には、友人やその人物に近い人に当たり、紹介してもらいます。もし、その人物にマイナスの評判があったとしても、必ず自分で会ってから判断します。最終的に決めるのは自分でなくてはならないと思います」
会社として立っているのが精一杯だけど
クレイプはオンラインゲームのプロジェクトが本格始動直前で配信中止になるという危機もあったが、2006年には自社商品となる「Rinca.cc」の一般向けサービスを開始した。ブラウザ上に付箋のようなものを貼って、情報を管理したり、交換したりできるサービスだ。ここに至って、ようやく事業が前進し始めたようにも見える。ところで、相川さんは起業家として、起業と社会についてどのように考えているのだろう。
「クレイプの現状は収支バランスがトントンで、会社として立っているのが精一杯の状態です。早く収益を上げて前に進みたいですね。会社が歩き出せるようになって、初めて起業家と言えると考えています。また、企業は社会的価値のある存在であるべきだと考えているので、自社の利益だけでなく、社会に貢献していきたいと考えています。社会的に存在を認められる仕事をすることが会社の存在する意義であり、会社の事業の成功に繋がるものだと思うのです。そして、まだ夢の段階ですが、いずれは教育に関する事業をしていきたいですね」
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