上司をサイボウズデイズに連れていき、kintone導入にこぎつける

文●柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

2022年09月14日 11時00分

 7月21日に東京のZepp Divercityで「kintone hive tokyo」が開催された。今回は2番手、システムインフロンティア 技術グループ CLALIS事業チーム リーダー 小名木崇光氏のプレゼン「臨床検査システムのリモートメンテナンス管理をkintoneで。イベントを活用して社内を巻き込む」のレポートを紹介する。

2社目のプレゼンは「臨床検査システムのリモートメンテナンス管理をkintoneで。イベントを活用して社内を巻き込む」

問い合わせ履歴が残せず、対応者が誰だかわからない、キャパオーバーの状態

 システムインフロンティアは東京都立川市にある従業員数55名のシステム会社だ。3つの事業チームがあり、1つ目が医療機関などで使用されている臨床検査システム製品の開発や保守などを行っているチーム。2つ目が、電子顕微鏡で撮影した画像を三次元化したり、任意の場所にカラーリングするアプリなどイメージング関連製品の開発をしているチーム。3つ目が、卵のような形をした複数のマイクを内蔵しているマイクロフォンアレイ「TAMAGO」シリーズの開発、製造、販売と、その他の受託開発を行っているチームだ。

 小名木氏は2010年に会社を設立した時のメンバーの1人で、前身となる会社には2001年に入社しているため、キャリア22年のベテランとなっている。「年頃なので昨年の健康診断で異常な点がありまして、係り付け医にですね健康診断の結果見せたところ糖質制限をすることになりました。そんな健康診断の血液検査ですが、私の業務に関連があります」(小名木氏)

システムインフロンティア 技術グループ CLALIS事業チーム リーダー 小名木崇光氏

 血液検査では患者から採血し、検体が検査室に届いたら分析装置などで測定され、臨床検査システムや電子カルテなどにデータが登録され、医師から患者に結果が報告される。システムインフロンティアは、この臨床検査システムとして「CLALIS(Clinical Laboratory Advanced LAN Information System、クラリス)」が利用されているのだ。

 小名木氏は「CLALIS」の開発と納入、保守業務を取り扱う部署のチームリーダーの1人として業務を行なっている。「CLALIS」が医療機関で使われるシステムなので、障害が発生すると検査できなくなり、患者の診察ができなくなってしまう。そのため、障害発生時には迅速な対応求められる。

 システムインフロンティアは従業員55名のうち、「CLALIS」に携わっているのはチームの20数名のみ。この人員でシステムの開発から機器のセットアップ、保守作業などの全般業務を手がけている。コールセンターもないため、全部自分たちで行なっており、手が回らない状況だった。

「ユーザーからの問い合わせ履歴が残せずに状況が分からなかったり、誰が対応しているのかすらわからない状態でした。そのため、ユーザー対応の品質を向上させて欲しいと指示がありました」(小名木氏)

すべての業務を20数名で担っているので手が回らない状態に陥っていた

kintoneのすごさを伝えきれず、上司を連れてサイボウズデイズに参加

 これらの課題を解決するには、システムの力が必要だと考えた小名木氏は、調べるうちにkintoneのことを知る。そして、活用事例を聞いてみようと、2019年のサイボウズデイズに参加したそう。ちなみに、2019年のテーマは「モンスターへの挑戦状」だった。

「会場に着いたら巨大な木のモンスターに出迎えられて、想像していたのとまったく違う雰囲気の会場でした。戸惑いながらもkintoneの初心者向けセッションやkintone Awardとか、kintone hack NIGHTなどのイベントに参加しました。登壇者たちの熱い思いにすっかり洗脳されてしまい、1日中楽しくて、うちもkintoneを導入すれば問題が解決すると確信しました」(小名木氏)

サイボウズデイズに来てkintoneの凄さを体感した

 しかし、翌日出社してサイボウズデイズのことを上司に伝えたところ、楽しかったことは伝わったが、kintoneを入れると何がいいのか、とか導入効果を説明することができず、説得することができなかった。

 kintoneを入れればいい未来が待っていると確信している小名木氏は、兎にも角にもkintoneを使い始めた。それまでExcelで管理していた顧客情報マスターをアプリにしてみたりもしたのだが、社内に興味を持ってくれるメンバーはいなかったという。そもそも、問題意識を持っていないメンバーにはkintoneの導入メリットは想像さえできなかったそう。そんなこんなで1年が経ってしまった。

「再びサイボウズデイズの時期が来てしまいました。いっそ私の代わりとして上司にkintoneの良さとか導入後の効果を聞いてもらおうと、一緒に連れて行きました。作戦は大成功で、kintoneの良さを上司も感じ取っていただいて、kintoneによる業務改善をようやく始めることができました」(小名木氏)

サイボウズデイズ2020に上司を連れて行ってkintone導入にこぎ着けた

リモートメンテナンスの実施記録をアプリへ

 kintoneで作ったのは、リモートメンテナンス実施記録というアプリだ。業務改善できることがないかなと考えていたある日、システムの調査をしようとサーバーにリモート接続したときに、他の人がサーバーを使っていたためすぐに利用できないということがあった。これでは業務が回らないので、メンバーの1人が誰がどのサーバーを使ってリモート接続しているのかをホワイトボードに書いてわかるようにしようと言い出した。

 利用状況を共有するのなら、kintoneでできると考えた小名木氏はアプリを作成することにした。すでに作成済みの顧客情報マスターにユーザーごとにどのサーバーを使ってリモート接続をするのかという情報を登録したのだ。

 その上で、サーバーの利用状況がわかるように、リモートメンテナンス実施記録アプリを作成。簡単に使ってもらうために、作業目的を入力してもらい、あとは施設名をルックアップで呼び出してもらえば、その他のフィールドはすべて自動入力されるようにした。メンテナンス作業が終了したら、作業内容を追記すれば完了となる。

 アプリにはラベルや「kintone入力ヒント表示プラグイン」を利用し、入力する内容を説明し、利用者が意図した内容を正しく入力してもらえるように工夫している。さらには、ポータル画面には、終了時刻が入っていないレコードの一覧を表示するようにした。終了していないということは利用中ということなので、一目で状況を把握できるようになった。

サーバーの利用状況を把握できるアプリを作成した

4つのポイントを心掛けたアプリの利用をルール化したことで活用が進んだ

 それでもkintoneの利用は進まず、ホワイトボードを利用する人の方が多かったという。そのため、kintoneアプリで起票してからサーバーを利用する人を優先的に利用できるというルールを作成した。起票せずにサーバーを利用することもできるが、kintoneアプリで起票した人がいたら、文句を言わずにサーバーを明け渡さなければならなくなったのだ。

「リモート接続をする時は緊急の場合がほとんどなので、このルール守らないとユーザーだけではなく、患者さんにまで迷惑がかかる可能性があります。そのことをメンバー全員が理解できていたので、だんだんサーバーを利用するときは、kintoneアプリに起票するようになってきました」(小名木氏)

kintoneアプリの利用をルール化したことで社内活用が進んだ

 kintoneアプリの利用が進んだので、さらに業務改善を進めることにした。まずは、メンテナンスの開始時と終了時にメールを自動配信して、ユーザーに対してメンテナンスの作業内容をリアルタイムに共有できるようにした。開始時間と終了時間などが正確に入力されるようになったので、アプリの情報がそのまま報告資料として使えるようになったのも大きな導入効果と言える。

 アプリ作成時に心がけたのは、

1:必須入力のフィールドは最小限に
2:自動入力できるところは可能な限り設定しておく
3:入力内容の品質を統一させるために、注意事項をラベルやプラグインなどを使って表示させる
4:アプリを利用する理由やルールを考える

という4つのポイントとのこと。

アプリ作成時に心がけた4つのポイント

 また、kintoneのアプリで気になることがあれば、社内SNS上に気軽に書き込めるチャンネルを用意したそう。書き込まれた要望はなるべく要望は叶えるようにしており、そんな取り組みも社内導入の理由の1つだと小名木氏。

「結構、要望が絶えませんので、これからも業務改善のkintoneの活用は当分続いていくんではないかと思います」と小名木氏は締めた。

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