Radeon RX 6950 XT/RX 6750 XT/RX 6650 XTの実力を検証!全11GPUで比べてみた

文●加藤勝明(KTU) 編集● ASCII

2022年05月10日 22時00分

突如登場したRDNA 2のリフレッシュモデル

AMDの資料より抜粋。RX 6x50 XTシリーズはモデルごとに想定ユーザーが別れている。最上位のRX 6950 XTは4K、RX 6750 XTはWQHD、最下位のRX 6650 XTはフルHDゲーミング向けのGPUという位置付けだ

 2022年5月10日、AMDはRadeon RX 6000シリーズの新モデル、「Radeon RX 6950 XT」「Radeon RX 6750 XT」「Radeon RX 6650 XT」の販売をグローバルで解禁した。日本国内での発売は5月13日(金)午前11時で価格は各メーカーによるとしているが、北米予想価格ではRX 6950 XTが1099ドル、RX 6750 XTが549ドル、RX 6650 XTが399ドルとなっている。

 RX 6000シリーズといえば、Radeon初のDirectX 12 Ultimate、つまりDXR(DirectX Raytracing)を処理するためのRay Acceleratorを搭載したGPUだ。と同時に、GPUのL3キャッシュと言うべき「Infinity Cache」を組み込むことでメモリーバス幅を抑えつつも実効帯域を引き上げることに成功、ライバルであるGeForce RTX 30シリーズよりも高いワットパフォーマンス(無論ゲームによるが)を獲得した“強いRadeon”の再来と言うべきシリーズである。

 RX 6750 XTとRX 6950 XTがあるのに中間のRX 6850 XTが存在しない理由については明らかにされていないが、RX 6800 XTとRX 6900 XTの差分が極めて小さく、性能的な差異が出しにくいためではないかと筆者は推測している。

 今回のRX 6x50 XTシリーズはRDNA 2世代のリフレッシュモデルだが、結論から言ってしまうと設計や半導体プロセスが変化した訳ではない(AMDから事前に寄せられた情報から読み取れる限りでは、だが……)。究極的には既存のRX 6000シリーズのクロックアップモデルであることは間違いないが、どこまで性能が伸びているか気になるところだ。

 RX 6000シリーズ初登場時はリファレンス仕様のカードがAMDより提供されたが、今回のレビューではAICパートナー製のカードが各1枚ずつ提供された。以前レビューしたRX 6000シリーズ、特にRX 6900 XTは、消費電力という面ではRTX 3080や3090を凌駕する性能を発揮したものの、メモリーバス幅の狭さがネックとなり、4Kでは奮わないというやや残念な結果に終わった。今回のリフレッシュモデルでそこがどう変化したか、様々なベンチマークを通じて検証していきたい。

現行RadeonとGeForceのモデルを比較した場合、価格が安いのはRadeonであるとAMDは主張している。TBP(Total Board Power:カード全体の消費電力)はRTX 3070−RX 6750 XTより上のモデルではRadeonの方が低く(省電力)、下のモデルではGeForceの方が低い

今回AMDよりレビュー用としてお貸し出し頂いたPowerColor「Red Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6」。RX 6950 XTをほぼ3スロット厚の巨大クーラーで冷却するハイエンドモデルだ

RX 6950 XTのハイエンドファクトリーOCモデルであるがゆえに、補助電源コネクターは8ピン×3構成である

映像出力系は既存のRadeonと大差ない

今回試用したRX 6950 XTおよびRX 6750 XTカードにはBIOS切り替えスイッチが実装されていたが、今回の性能検証ではデフォルト位置のまま(写真の通り)で検証している

同じくレビューに使用するPowerColor製RX 6750 XT搭載カード「Red Devil AMD Radeon RX 6750 XT 12GB GDDR6」

RX 6950 XT版とは違い厚みは2.5スロット、かつ補助電源コネクターも8ピン×2という常識的な構成である

RX 6650 XT搭載カードはASRock「Radeon RX 6650 XT 8GB Challenger D OC」だった

RX 6650 XTの評価用カードは2スロット厚ジャスト、かつ8ピン×1で動作する。デュアルファン仕様だが基板自体はクーラーよりだいぶ短い

CU数据え置きでクロックとBoard Powerを引き上げた

 最初にRX 6x50 XTシリーズのスペックを確認しよう。今回登場した3種類のRadeonはいずれも型番マイナス50の既存モデルと同じ回路構成になっている。つまり描画性能を直接左右するCU(Compute Unit)数やInfinity Cacheの容量、メモリーバス幅といった仕様にはまったく手が入っていない。型番プラス50の差異はすべて動作クロック上昇に集中している。

 また、上位2モデルにおいてGDDR6のデータレートが16Gbps→18Gbpsへ引き上げられたことで、実質的なメモリー帯域をさらに増やし、特にRX 6900 XTの“高価な割に4Kでは伸び悩む”という弱点を克服しにかかっている点に注目したい。クロック上昇に伴いBoard Power(NVIDIAで言うところのTGP:Total Graphics Power)も増えているがRX 6950 XTで335W止まり。ライバルであるRTX 3090 TiがTGP 450Wを達成するために12VHPWRという新規格まで持ち込んだのとは対照的だ。

 ただ、今回検証用にとお借りしたRX 6950 XTのように、8ピン×3仕様のカードも存在するので、実際の製品における消費電力は設計(特にOC設定)により大きく変わってくる点は十分理解しておくべきだろう。

RX 6x50 XTと既存のRX 6x00 XTとのスペック比較。この値はリファレンス仕様となる

「GPU-Z」で今回検証に試用したRX 6950 XT搭載カードの情報を拾ってみた。ブーストクロック2435MHz設定なので、リファレンスモデルよりも125MHz高い設定となる

同じくRX 6750 XTカードの情報。RX 6700 XTがベースなのでVRAMは12GB、192bit幅となる

RX 6650 XTカードの情報。RX 6600/RX 6600 XTと同様にPCI Express x8でリンクする点に注意したい

検証環境は?

 技術的なハイライトがない新製品なので、早速今回の検証環境を紹介しよう。冒頭で紹介したPowerColorおよびASRock製のRX 6950 XT/X 6750 XT/RX 6650 XTの性能を評価するために、RX 6900 XT/RX 6700 XT/RX 6600 XTを準備した。さらに、AMDの言うところの消費電力的な優位性も見るためにRTX 3090/RTX 3070/RTX 3060の3種類を準備。このチョイスは冒頭で紹介したAMDの仮想敵設定をベースにしている。

 RTX 3090 Tiは諸般の事情で調達ができなかったが、TGP 350WのRTX 3090はBoard Power 335WのRX 6950 XTと対決させるには丁度良い相手といえる。さらに、オマケとしてRX 6800およびRTX 3080も検証に加え、上下関係がより分かりやすくなるよう配慮した。ちなみにRX 6800 XTやRTX 3080 Ti、RTX 3070 Tiは時間的・体力的な制約のため検証を割愛している。

 検証環境はRX 6000シリーズがAMD Software Adrenalin Edition 22.4.2、GeForceがGame Ready ドライバー 512.59、RX 6x50 XTはすべて評価用のβ版(4月27日付け)となる。Windows 11はHDRを筆頭に、Resizable BARやセキュアブート、コア分離などの機能はすべて有効にしている。CPUはAMDの生み出した“新たなGame King”であるところのRyzen 7 5800X3Dを使用している。

【検証環境】
CPU AMD「Ryzen 7 5800X3D」
(8コア/16スレッド、最大4.5GHz)
CPUクーラー ASUS「ROG RYUJIN II 360」
(AIO水冷、360mmラジエーター)
マザーボード GIGABYTE「B550 Vision D」
(AMD B550、BIOS F15a)
メモリ G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」
(DDR4-3200、16GB×2)
ビデオカード(Radeon) PowerColor「Red Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6」(Radeon RX 6950 XT)、
AMD「Radeon RX 6900 XTリファレンスカード」、
AMD「Radeon RX 6800リファレンスカード」、
PowerColor「Red Devil AMD Radeon RX 6750 XT 12GB GDDR6」(Radeon RX 6750 XT)、
AMD「Radeon RX 6700 XTリファレンスカード」、
ASRock「Radeon RX 6650 XT 8GB Challenger D OC」(Radeon RX 6650 XT)、
ASRock「Radeon RX 6600 XT Phantom Gaming D 8GB OC」(Radeon RX 6650 XT)
ビデオカード(GeForce) NVIDIA「GeForce RTX 3090 Founders Edition」、
NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」、
NVIDIA「GeForce RTX 3070 Founders Edition」、
ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」(GeForce RTX 3060)
ストレージ Corsair「Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600」 (1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ)、
Silicon Power「PCIe Gen3x4 P34A80 SP002TBP34A80M28」 (2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、データドライブ)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」

強みも弱みも継承した「3DMark」

 いつも通り「3DMark」を使った検証から始めよう。RDNA 2世代のRadeonの特徴として、Fire Strikeは伸びるがPort Royalは今ひとつというものがあるが、それがクロック上昇でどう変わったかに着目したい。

3DMarkのスコアー

 RX 6950 XTのFire Strikeスコアー40000超えはさすがとしか言いようがないが、RX 6900 XTと比較すると約3%の上昇にとどまる。だが、その他のテストは約6〜9%上昇しており、クロックやBoard Power引き上げの効果がある事を示している。同様にRX 6750 XTはRX 6700 XTに対し約3%〜5%、RX 6650 XTはRX 6600 XTに対し約2〜4%上回っている。

 ただ、今回のRX 6x50 XTシリーズはすべてAICパートナー製のカードであるため、OC設定の強い・弱いで伸び幅は変わる(特にRX 6900 XTとRX 6700 XTはリファレンスモデルが基準である)。あくまで今回の検証環境の中での伸びである、ということに注意してほしい。

 競合するRTX 30シリーズとの比較においては、これまでのパターンと同じである。即ちFire Strikeでは大きくRadeonが勝つが、Time Spy系ではやや差が狭まり、DXRを使用するPort RoyalではGeForceに負けるというもの。この辺はRDNA 2をそのまま使っているがゆえの結果ということができる。

システム全体ではGeForceより高くなった消費電力

 3DMarkのデータが出たところでシステム全体の消費電力を見ておこう。計測にはラトックシステム「WF-WFWATTCH1」を使用し、アイドル時(システム起動10分後の安定値)と高負荷時(Time Spyデモ実行中のピーク値)を比較した。

システム全体の消費電力

 これまでRX 6000シリーズよりもRTX 30シリーズの方が消費電力が低い傾向がある……という評価をしてきたが、今回の検証ではRX 6950 XTカードの消費電力はRTX 3090 FEを超えている。

 試用したRX 6950 XTカードのTGPの正確な値は不明(PPT Limitは325W)だが、8ピン×3を要求しているので定格の335Wを大きく超えている可能性も十分考えられる。今回の検証ではシステム全体の消費電力がTGP 350WのRTX 3090と同レベルの値を示した。素の状態でクロックを引き上げたRX 6950 XTを、さらにファクトリーOCしているのだから消費電力が大きくて当然なのだが、RX 6900 XTリファレンスカードに対して100W強上乗せというのはかなり強烈だ。

 これは筆者の推測だが、RTX 3090やRTX 3090 Tiの登場で“ここまで使っても許される”土壌ができた結果、RX 6950 XTで同じ土俵に立ち、ゲーミング性能で勝とうとしたのではないだろうか。

 また下位モデルに目を向けると、RX 6750 XTはRX 6700 XTリファレンスカードに対し約60W上乗せ、RX 6650 XTはRX 6600 XTに対し約10W上乗せとなった。3DMarkのスコアーだけで考えると、RX 6750 XTとRX 6650 XTと競合するRTX 3070や RTX 3060に対しては3DMarkのスコアーで上回る一方で、そのぶん消費電力も増えてしまった。特にRX 6750 XTはワットパフォーマンスがあまり良くないことが読み取れるが、これはRed DevilシリーズなのでBoard Powerが相当に盛られていることが原因ではないだろうか。

 ただ、このデータだけではRX 6x50 XTの消費電力が激増しているのか否か見極めることはできない。純粋な消費電力、即ちTBP(Total Board Power)は後ほど検証するとしよう。

メモリーバス幅がハンデとなった?「Rainbow Six Siege」

 ここから実ゲーム検証に入るとしよう。最初に「Rainbow Six Siege」で試すが、APIはVulkanを選択。画質は“最高”にレンダースケール100%を追加した。GeForce勢はフレームレートに影響が出ないようReflexをすべて無効にしている(以降のReflex対応ゲームも同じ)。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測した。フルHD/WQHD/4Kの3通りの解像度で比較する。

「Rainbow Six Siege」Vulkan API、1920×1080ドット時のフレームレート

「Rainbow Six Siege」Vulkan API、2560×1440ドット時のフレームレート

「Rainbow Six Siege」Vulkan API、3840×2160ドット時のフレームレート

 まず、新旧Radeonという軸で見ると、一部例外はあれどRX 6x50 XTはRX 6x00 XTに対しわずかに高いフレームレートを示している。ただし、上位GPU(ここではRX 6750 XTに対するRX 6800、RX 6650 XTに対するRX 6700 XT)を上回るほどではなかった。

 同等のRX 6x00 XTに対する上昇幅は解像度にもよるが、RX 6950 XTは最大約9%、RX 6750 XTは約4〜5%、RX 6650 XTは約2〜4%となっている。メモリークロックを引き上げてデータレートが上がったことによる効果といえるだろう。

 しかし、Radeon対GeForceという軸で見ると、競合関係にあるGeForceに対し、RX 6x50 XTシリーズは1〜2ランク下のフレームレートにとどまっている。Infinity Cacheが効いてメモリー帯域を稼ぐ設計であっても、素のメモリーバス幅の広いRTX 30シリーズの方が“Rainbow Six Siegeでは”有利であった、ということだ。

「Apex Legends」では最低フレームレートに注目

 続く「Apex Legends」では、いつもの通り射撃訓練場における一定の行動をとった際のフレームレートを「CapFrameX」で計測する。画質は最高設定とし、起動オプションで144fps制限を解除(+fps_max unlimited)している。

「Apex Legends」1920×1080ドット時のフレームレート

「Apex Legends」2560×1440ドット時のフレームレート

「Apex Legends」3840×2160ドット時のフレームレート

 144fps制限を解除しても、このゲームのフレームレートは300fpsで頭打ちとなる。よって、解像度が低いとGPUパワーの差も見えなくなるが、フルHDでは僅差でRX 6950 XTがRTX 3090を上回った。なお、RX 6900 XTもすぐそこに迫っている。下位モデルではRX 6750 XTはRTX 3070に一歩及ばずだが、RX 6650 XTはRTX 3060よりも高い平均フレームレートを出している。新旧Radeon軸で見ると、上限値に近いフルHD~WQHDのRX 6950 XT以外は、RX 6x00 XTに対し約10〜12%と、平均フレームレートが伸びていることがわかる。

 ただ、最低フレームレート(の下位1パーセンタイル点)に注目すると、RX 6950 XTやRX 6750 XTよりも競合するRTX 3090とRTX 3070のほうが高く「よりカクつきにくい映像が得られる」ことを示している。これに関してはメモリーバス幅の違いが考えられるが、RX 6650 XTよりもメモリーバス幅の広いRTX 3060の方がフレームレートで劣っているため、この仮説は一貫性を欠いている。今回の検証とApex Legendsの組み合わせにおいてはRX 6650 XTは仮想敵より優秀だったが、他は今ひとつ伸びきらなかった、というところだろうか。

Radeon勢が輝く「Tiny Tina's Wonderlands」

 「Tiny Tina's Wonderlands」ではAPIにDirectX 12、画質は“バッドアス”を選択した。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測するが、最低フレームレートの1パーセンタイル点は出力されたcsvファイルから直接算出している。

「Tiny Tina's Wonderlands」DirectX 12 API、1920×1080ドット時のフレームレート

「Tiny Tina's Wonderlands」DirectX 12 API、2560×1440ドット時のフレームレート

「Tiny Tina's Wonderlands」DirectX 12 API、3840×2160ドット時のフレームレート

 ここではGeForceよりもRadeon勢のフレームレートが圧倒的に高く、特にRX 6950 XTでは4K+最高画質設定でも60fps以上をキープできた点は驚きだ。ほぼ同じエンジンを使っている「Borderlands 3」よりも(ベンチマークが)洗練されより回るようになった印象がある。

 また、Tiny Tina's Wonderlandsでは上位モデルほどRX 6x00 XTに対する性能向上幅が大きく、RX 6950 XTで約12〜13%向上、RX 6750 XTで約7〜10%向上、RX 6650 XTでは約5〜6%向上している。ただ、RX 6650 XTの4K設定ではInfinity Cacheのヒット率が極端に悪くなるため、RX 6600 XTと大差ないレベルになっている。

「Halo Infinite」でも最大10%程度伸びる

 次は「Halo Infinite」での検証だ。画質は“ウルトラ”とし、すべてAsync Computeも有効にしている。解像度はデスクトップの解像度を都度変更し、解像度スケールは常に100%設定で検証している。ローカルサーバー上でマップ“Fragmentation”におけるBot対戦を立ち上げ(ただしBotは無し)、一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

「Halo Infinite」1920×1080ドット時のフレームレート

「Halo Infinite」2560×1440ドット時のフレームレート

「Halo Infinite」3840×2160ドット時のフレームレート

 先のTiny Tina's Wonderlands同様に、ここでもRadeon勢が競合するGeForce勢を大差で上回った。RX 6950 XTやRX 6750XTでは平均フレームレートにおいて約11〜24%競合するGeForceを上回っているが、特にRTX 3060に対するRX 6650 XTのアドバンテージが最大36%と大きい点に注目。そして新旧Radeon対決軸では、RX 6x50 XTシリーズは約6〜10%旧シリーズに対して上回った。この点においてはApex LegendsやTiny Tina's Wonderlandsに近いものがある。

RX 6950 XTが安定した強さをみせた
「Forza Horizon 5」

 「Forza Horizon 5」は以前のシリーズがそうだったようにRadeonでフレームレートが出しやすいタイトルだ。画質は“エクストリーム”に設定しゲーム内ベンチマーク機能を利用するが、プレイヤーが観測できる実フレームレートを「CapFrameX」で計測している。

「Forza Horizon 5」1920×1080ドット時のフレームレート

「Forza Horizon 5」2560×1440ドット時のフレームレート

「Forza Horizon 5」3840×2160ドット時のフレームレート

 フルHDだと差がない部分もあるが、RX 6x50 XTはRX 6x00 XTに対し約3〜9%上回っており、今回は特にRX 6950 XTの伸び幅が大きい。対GeForceでも約7〜33%も平均フレームレートが伸びているが、RX 6750 XTやRX 6600 XTの4K設定下ではメモリーバス幅の狭さが足を引っ張り、GeForceに勝ちを譲っている部分も見受けられる。

中盤でGeForceに競り負けた「God of War」

 続く「God of War」でもデスクトップの実解像度を変更する形で解像度を調整した。画質は全項目を最高に設定し、マップ“ミズガルズ”内の一定のコースを走った時のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

「God of War」1920×1080ドット時のフレームレート

「God of War」2560×1440ドット時のフレームレート

「God of War」3840×2160ドット時のフレームレート

 RX 6650 XTとRX 6750 XTはRX 6x00 XTに対し約2〜4%しか平均フレームレートを伸ばしていないが、RX 6950 XTはRX 6900 XTに対し約11%も伸ばしている。すべてのRX 6950 XT搭載カードでここまで伸びるとは言えないものの、OC設定次第ではRX 6900 XTを大きく上回るポテンシャルを秘めていると評価できるだろう。

 一方、対GeForceでは確かにRTX 30シリーズより上回るデータも見られるものの、勝ってもせいぜい4%程度、しかもフルHD時のみに限定される。WQHDではほぼ差がなく、4Kともなるとメモリーバス幅の広いRTX 30シリーズに逆に約7〜13%負けてしまう。特にRX 6750 XTはRTX 3070よりもVRAM搭載量が多いにも関わらずフレームレートではコンスタントに下回ってしまっている。

最新作「Syberia: The World Before」では?

 最近発売されたアドベンチャーゲーム「Syberia: The World Before」でも試してみたい。画質は“超高”とし、新規ゲーム開始直後に訪れる街マップにおいて一定のコースを移動した時のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

「Syberia: The World Before」1920×1080ドット時のフレームレート

「Syberia: The World Before」2560×1440ドット時のフレームレート

「Syberia: The World Before」3840×2160ドット時のフレームレート

 グラフから分かる通り、フルHDではRX 6750 XTがRTX 3090を圧倒する一方で、RX 6650 XTはRX 6600 XTを下回るなど、ドライバーとゲームエンジンのすり合わせができていない印象すらある。だが、RX 6700 XTより上のRadeonでは最低フレームレートの出方がGeForce勢より明らかに高く、より滑らかな描画が堪能できる。ただ、このゲームはFPSのようにグリグリと視点を動かせるシーンが少ないため、折角のRadeonのパワーもあまり活かせないのが惜しいところだ。

ようやく24GBのVRAMが活きた「Far Cry 6」

 ここよりDXR対応のゲームでレイトレーシングを効かせた時のパフォーマンスを検証しよう。まず「Far Cry 6」だが、画質は“最高”+レイトレーシングの設定は影・シャドウともにオン。さらにVRS(FidelityFX Variable Rate Shading)や高解像度テクスチャーも有効とした。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。

「Far Cry 6」1920×1080ドット時のフレームレート

「Far Cry 6」2560×1440ドット時のフレームレート

「Far Cry 6」3840×2160ドット時のフレームレート

 RX 6x50 XT用のβドライバーはまだ熟成度が今ひとつなのか、最低フレームレートが既存のRX 6x00 XTよりも落ち込みやすい傾向があるようだ(やがて解決するだろうが……)。それでもRX 6x50 XTはRTX 30シリーズに対し「Far Cry 6では」互角以上の結果を出せている部分もある。特にWQHD以上において、RTX 3070に対するRX 6750 XTのアドバンテージは極めて大きい。

 これは、高解像度テクスチャーを有効にしたことにともなうVRAM搭載量の差であり、8GBのRTX 3070ではまったくついていけなくなってしまう。今回の計測条件下で回路規模の小さいRTX 3060の方が高いフレームレートを出せているのは、VRAM搭載量が12GBと多いからであることもそれを裏付けている。RX 6650 XTが奮わないのも同じVRAM搭載量とメモリーバス幅の問題だ。

 ただ、最上位のRX 6950 XTに関してはVRAM搭載量が16GBと多いため、VRAM由来のパフォーマンスダウンはない。むしろDXRを使っているのにRTX 3090と同等以上の性能を発揮できているのは、Far Cry 6とRadeonの相性ではないかと推測している。

RX 6650 XTで特に辛かった「F1 2021」

 続く「F1 2021」では画質は“超高”(レイトレーシング系もミディアムになる)設定とし、アンチエイリアスTAA、異方性フィルタリングはx16とした。ゲーム内ベンチマーク機能で「モナコ+ウエット」設定でのフレームレートを計測する。

「F1 2021」1920×1080ドット時のフレームレート

「F1 2021」2560×1440ドット時のフレームレート

「F1 2021」3840×2160ドット時のフレームレート

 ここでもFar Cry 6と同様に熟成度の問題なのか、RX 6x00 XTよりもRX 6x50 XTのほうが最低フレームレートが落ち込む傾向があるようだ。ただし平均フレームレートに着目すると、RX 6x50 XTは約2〜8%伸びており、クロック上昇ぶんの効果はあることが確認できた。

 しかし、対GeForceの軸で見るとフルHD+RX 6950 XTの組み合わせ以外はRTX 30シリーズよりフレームレートが出ない。特にRX 6650 XTのようなメモリーバス幅も狭くInfinity Cacheの少ないモデルでは、RTX 3060のような既存のカードに大敗しているなど、下位モデルでのDXR運用の難しさが窺える。FSRやRSRなどのアップスケール技術を上手く利用するしかないようだ。

スーパーヘビー級の「Cyberpunk 2077」ではどうか?

 DXR系で最重量級といえば「Cyberpunk 2077」を避けて通る訳にはいかない。画質は“レイトレーシング:ウルトラ”設定をベースに、DLSSやFSRを無効化した設定を使用している。内蔵ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。

「Cyberpunk 2077」1920×1080ドット時のフレームレート

「Cyberpunk 2077」2560×1440ドット時のフレームレート

「Cyberpunk 2077」3840×2160ドット時のフレームレート

 Cyberpunk 2077はVRAMへの負荷も強烈に高いため、RX 6600 XTやRX 6650 XTでは4Kで動かすことは難しい(実際は動くが1fpsを割り込むので検証は断念した)。新旧Radeon対決の軸では新シリーズは旧シリーズよりも約9〜17%上回っている(例外あり)。フレームレートの高さはGeForceに圧倒されてしまっているが、これはGPUとの相性であるといえる。

下位Radeonでは厳しい「Ghostwire: Tokyo」

 最後は「Ghostwire: Tokyo」だ。画質は全項目を最高(スライダー右端)とし、レイトレーシングも有効化したが、レベルストリーミング距離だけはVRAM搭載量で上限が変化するため、全GPUで最低設定とした。マップ内の一定のコースを移動した時のフレームレートを「CapFrameX」で計測する。

「Ghostwire: Tokyo」1920×1080ドット時のフレームレート

「Ghostwire: Tokyo」2560×1440ドット時のフレームレート

「Ghostwire: Tokyo」3840×2160ドット時のフレームレート

 このゲームもCyberpunk 2077同様にRTX 30シリーズ有利ではあるが、VRAM 12GB以上ないとフルHDでも最高画質設定でまともに動かすことは難しい(グラフの空欄はフレームレート低すぎで計測を断念した事を示している)。RX 6x50 XTはRX 6x00 XTに対し約6〜10%上回る例が多いが、1例だけ100%近く上昇(RX 6750 XT+4K)したポイントもあった。

性能が上がった分消費電力も上がった

 これまで観測してきた通り、ゲームのフレームレートは既存のRX 6x00 XTよりも約3%〜10%程度高くなることが確認できた。だが、システム全体の消費電力を見る限りでは、性能が上がったぶん消費電力も激増していることが示唆されている。

 そこで、ここではNVIDIAの電力測定用デバイス「PCAT」を利用し、検証に使用したビデオカードのTBP(Total Board Power)を正確に比較する。特にRadeonは、APIでPPTやEDTといった電力周りの情報は取得できても、TBPを正確に把握することが難しいためである。

 今回はGhostwire: TokyoのフルHD設定で10分プレイ(放置)した時のTBPをチェックする。画質設定は前述の検証時と同じレイトレーシング入りの最高画質設定となる。

テストに使用したRadeon系カードにおけるTBPの推移を比較したもの。1秒ごとの移動平均でプロットしている

上のグラフと同じだが、こちらはGeForce系カードだけをまとめたもの

上のグラフに使った生データからTBPの平均/最大値をまとめたもの

 同じゲームで同じシーン、同じような負荷をかけた時のリアルな消費電力を比べると、RX 6x50 XTはRX 6x00 XTよりも消費電力がだいぶ増えていることが分かる。特にRX 6900 XTに対するRX 6950 XTの増え方は凄まじいし、RX 6750Xは格上のRX 6800を超えRX 6900 XTのすぐ背後まで迫っているなど、ファクトリーOCモデルならではの特性を見せている。

 しかし、今回試用したRX 6950 XTとRX 6750 XTカードはいずれもPowerColor製の上位ラインに属するファクトリーOCモデルであるため、もっとマイルドなOC設定のRX 6950 XTやRX 6750 XTカードでは消費電力がここまで高くない可能性も十分ある。

RX 6000シリーズの良さが1つ消えたが……

 以上でRX 6x50 XTの検証は終了だ。 今回の結果を見る限り、既存のRX 6x00 XTに対し数%〜10%程度のパフォーマンスゲインが得られたが、その代償として消費電力が激しく増えた(特にRX 6950 XT)点は残念ではある。Tiny Tina's WonderlandsのようにRTX 30シリーズのフレームレートを圧倒したゲームもあるが、消費電力がRTX 30シリーズより少ないというRX 6000シリーズのアドバンテージがスポイルされた点を残念と感じる人もいるだろう。

 純粋にパフォーマンスの話だけをすれば、今回試した3種類のRadeonのうち、最下位のRX 6650 XTは(個人的に)パッとしない印象がある。しかしその一方で、消費電力の激増した最上位のRX 6950 XTはハイエンドGPU好きとしては好印象だった。むしろRX 6950 XTくらいぶっ飛んだハイエンドRadeonをRX 6000シリーズのローンチ時に出すべきではなかったのか。RX 6900 XTはRDNA 2世代のフラッグシップモデルではあったがRX 6800 XTとあまりにも差がなさ過ぎた。RX 6950 XTのスペックでRTX 3090にぶつけていれば、もう少しRadeonの印象も変わっただろう。

 いろいろな意味で惜しいが、強いRadeonであることは間違いない。折からの円安状況で高価なパーツを買うのは腰が引けてしまうが、強力なゲーミングPCを構築したければ新しいRX 6x50 XTを選択肢に入れてみてはどうだろうか。

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