バルミューダ「BALMUDA Phone」スマホをよく使う人に不評なワケ
文●山口健太
2021年11月18日 09時00分
11月16日、バルミューダが初の5Gスマートフォン製品「BALMUDA Phone(バルミューダ フォン)」を発表しました。しかしネット上ではスペックに対して価格が高すぎるとの声が相次いでいます。なぜこんなことになったのか、実機に触れてみた印象と合わせて考察します。
「スマホをあまり使わない」人向けの高級スマホ?
バルミューダフォンの価格はSIMフリー版で税込10万4800円とハイエンド並み。しかしスペックはミッドレンジ級であることから不満の声が上がっています。生産台数が少ないために価格を下げにくく、そこに独自アプリの開発費がのしかかっているようです。
バルミューダの立ち位置として、既存のスマホと真正面から競争する気はなさそうです。むしろ寺尾玄社長は「スマホ画面に没頭しすぎるのはおかしい」とも指摘しています。電力会社やタバコ会社が使いすぎに注意を呼びかけることはありますが、これからスマホを売ろうとする端末メーカーとしては異例のメッセージです。
スマホをあまり使わない人向けにはローエンド価格帯の製品もありますが、だからといって「安物は持ちたくない」人もいます。このようにバルミューダフォンはかなりニッチな領域に向けた製品になっており、スマホをよく使う人やコスパ重視の人から見ると対極にある存在といえます。
安心・安全のiPhoneという高い壁も
バルミューダのニッチな立ち位置は分かりましたが、そういう人に最適なスマホとしては「iPhone」が存在します。iPhoneをやめてまでバルミューダを選ぶ理由はあるのでしょうか。
合理性のかたまりのようなiPhoneとは違って、バルミューダフォンの曲線を描く丸っこいボディはたしかに魅力的です。iPhoneにはあらゆる種類のケースがあるとはいえ、安っぽいものも少なくありません。バルミューダフォンの質感を気に入る人はたしかにいそうです。
一方、独自アプリ路線はいばらの道になりそうです。端末の差別化に向けて多くのメーカーが取り組んできたものの、使い勝手が変わること、OSアップデートが難しくなるなど副作用も多いのです。その結果、何もカスタムしない「ピュアAndroid」を最適解と考えるメーカーが増えています。
バルミューダは少なくともAndroid 12への更新と、2年間のセキュリティアップデートを提供するとしています。しかしiPhoneならアップデートに不安を抱く必要はないことを考えると、iPhoneに慣れたユーザーに振り向いてもらうのはなかなか難しそうです。
一方で、端末事業の立ち上げとしてはキャリアに採用された時点で一定の成功を収めたといえるでしょう。バルミューダは12月末までに27億円の売上を見込んでおり、キャリア市場とSIMフリー市場の比率が一般的には8:2程度であることを考えれば、売上の大半はソフトバンク経由とみられます。
全国のソフトバンク店舗にはバルミューダ製品を知らないスタッフもいるため、ブランド理解を含めたトレーニングを進めていくとのことです。バルミューダは第2、第3の製品開発にも着手しており、来年以降も継続的なキャリア採用があるかどうかが注目ポイントになるでしょう。
バルミューダが示す、携帯ショップに「足りないもの」
スマホの発売にあわせて、東京・南青山にはバルミューダ初の旗艦店がオープンしました。この地域に多いアパレル店舗のような店構えで、アップルとは少しテイストが違う高級感を醸し出しています。この店舗を訪れるかどうかで、バルミューダフォンへの評価は大きく変わりそうです。
2階にはソフトバンク回線の契約ができる携帯ショップ機能を備えており、ホテルのラウンジのようにゆったりした空間で相談や手続きができるそうです。その背景としてバルミューダは一般的な携帯ショップの体験に物足りなさを感じているようです。
最近ではさまざまな趣向を凝らした大手キャリアの直営店も増えているものの、多くの携帯ショップはお役所のように事務的なカウンターが並んでいたり、落ち着いて相談できる雰囲気ではなかったりと、「また行きたい」と思えるような空間にはなっていません。
たとえば飛行機のファーストクラスやホテルのクラブフロアを予約すると、一般客とは違う専用の空間でチェックインができるといった特別感のある体験を得られます。それに比べると、いまの携帯キャリアは「エコノミークラスかLCCか」くらいの選択肢しか提供していないといえます。
多くの人が求める安価はプランは充実してきましたが、一方で対価は払うので優先的に扱ってほしいとか、専属の担当者についてほしいなど、プレミアムサービスの需要もあると考えられます。バルミューダがスマホに参入したことで、キャリア側にも変化が起きるのか注目しています。
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