おうちで花火!? 子どもとやりたい炎色反応の科学実験
文●五十嵐美樹 編集●ASCII
2021年11月08日 09時00分
大きな音とともに夜空を彩る花火。緑や黄色、オレンジなど、いろいろな色があってとても綺麗ですよね。これには、物質を炎の中に入れると、その物質を構成する元素の種類によって炎が特有の色を示す「炎色反応」が使われています。
今回は、この炎色反応について、身近なものを使って実験する方法をご紹介します。お家にある折り紙や重曹、薬局で手に入るホウ砂などでその現象を確認することができるのです。火を扱うため注意が必要ですが、今年の夏に花火を楽しめなかったという方は、ぜひチェックしてみてください。それでは今日もレッツサイエンス!
■自己紹介
サイエンスエンターテイナーの五十嵐美樹(twitter:@igamiki0319)です。国内外問わず科学実験教室や特技のダンスを活かしたサイエンスショーを開催し、子ども達が科学の一端に触れるきっかけを創っています。
本連載では、商業施設などのオープンな場での科学実験教室やサイエンスショーで、子どもたちからの人気が高かった実験や工作や科学にまつわる情報をご紹介しています。
炎色反応とは
炎色反応とは、物質を炎の中に入れると、その物質を構成する元素の種類によって炎が特有の色を示す反応です。これによって花火の色つけをしたり、炎の色から物質を分析したりすることができます。では、なぜ炎が特有の色を示すのでしょうか?
原子の電子は、熱によって基底状態(常温で安定している電子軌道)から励起状態(高エネルギーの電子軌道)に移ります。励起状態は不安定なので、励起された電子はしばらくしてもとの基底状態に戻ります。この時のエネルギーが発生し、電磁波として放出されます。この電磁波が可視光線の波長であると、炎色反応として私たちが見ることができるのです[1]。
炎色反応として観察することができる元素は、たとえば以下のようなものがあります。
【炎色反応を示す元素の例】
<第1族元素(アルカリ金属)>
- リチウム(Li)深紅色
- ナトリウム(Na)黄色
- カリウム(K)淡紫色
- ルビジウム(Rb)暗赤色
- セシウム(Cs)青紫色
<第2族元素(アルカリ土類金属)>
- カルシウム(Ca)橙赤色
- ストロンチウム(Sr)深紅色
- バリウム(Ba)黄緑色
<第6族元素>
- モリブデン(Mo)黄緑色
<第11族元素>
- 銅(Cu)青緑色
<第13族元素>
- ホウ素(B)黄緑色
- ガリウム(Ga)青色
- インジウム(In)藍色
- タリウム(Tl)淡緑色
<第14族元素>
- スズ(Sn)淡青色
- 鉛(Pb)淡青色
など
ガスコンロにかけたおみそ汁がふきこぼれて、ガスの炎が黄色になったのを見たことはありませんか? これは、食塩(塩化ナトリウム)の中のナトリウムによる炎色反応の色です。このように、炎色反応は身近なところでも起こっているのです。
ここからは、食塩のように身近なものを使って、いろいろな色の炎色反応を確認していきましょう!
身近なものを使って、いろいろな色の炎色反応を確認!
【準備するもの】
<燃やすために必要なもの>
・燃料用アルコール
・スポイト
・ライター(チャッカマン)
・蒸発皿
・アルミカップ
・コットン
<調べるもの>
・重曹
・ホウ砂
・ミョウバン
・チョーク
・園芸用殺菌剤「サンボルドー」 など
※薬局やホームセンター、ネットなどでお買い求めいただけます。
【実験手順】
※火を取り扱うため、保護者の方と一緒に行なってください。
※周りに燃えるものがないか確認したり、消火できるものを用意したりするなど、十分に注意して行なってください。
まずは、燃料用アルコールだけを燃やしたときの炎の色を確認してみます。蒸発皿の上にアルミカップを置き、アルミカップの真ん中に小さく丸めたコットンを置きます。コットンの上からスポイトを使って燃料用アルコールをかけ、コットンに染み込ませます。チャッカマンの火をつけてコットンに近づけると、燃えました。
燃料用アルコールだけを燃やした時の炎の色は、写真のようなオレンジとなりました。では、これをもとにいろいろなものを燃やして炎の色を確認していきましょう。
1. 重曹
まずは、重曹を燃やしてみます。お掃除などで使う用に、お家にあるという方も多いかもしれません。見た目は白い粉です。先ほどの燃料用アルコールを染み込ませたコットンの上に重曹を振りかけて、チャッカマンで火をつけると燃えました。
時折、炎が明るく黄色い色になることを確認できました。これは、重曹(炭酸水素ナトリウム)のナトリウムによる色です。
2. ホウ砂
続いては、ホウ砂を燃やしてみます。本連載でも何度か登場していますが、スライム作りで使ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。見た目は白い粉です。重曹と同じように燃料用アルコールを染み込ませたコットンの上に振りかけて、火を近づけてみます。
写真は、火をつけた瞬間の色です。その後、オレンジ色の炎の端っこの部分に時折、黄緑色の確認ができました。これは、ホウ砂のホウ素による色です。
3. ミョウバン
続いて、ミョウバンを燃やしてみます。食品添加物として、漬け物をされるときなどに使ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。見た目は白い粉です。燃やしてみます。
紫色に燃え続けました。とてもわかりやすくてキレイです! これは、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)のカリウムによる色です。
4. チョーク
続いては、黒板に書く時などに使うチョークです。白いチョークをすり鉢で粉々にして(見た目は白い粉です)、同じように燃やしてみます。
橙色に燃え続けました。これは、チョークの主成分である炭酸カルシウムのカルシウムによる色です。
5. サンボルドー
続いて、サンボルドーを燃やしてみます。ホームセンターの園芸コーナーなどでお買い求めいただける植物の病気を防ぐ保護殺菌剤です。見た目は薄緑色の粉です。燃やしてみます。
緑色に燃え続けました。サンボルドーの成分は塩基性塩化銅で、今回使用したものの中には(銅として44.0%)と記載がありました。この銅による色です。
6. 折り紙
他にも、塗料に銅が含まれているとされる青い折り紙を燃やしてみます。
炎の端っこの部分が緑色になることを確認することができました。
▼今回の実験の様子は、動画でもご覧いただくことができます。
まとめ
今回は、身近なものを使った炎色反応実験をご紹介しました。これから花火を見る機会があったら、色が変わる度にどんな元素が使われているか考えてしまうかもしれません。火を取り扱うため注意が必要ですが、見た目もわかりやすく原理を学びながら楽しめるのではないかと思います。本実験が子どもたちにとって少しでも科学に触れるきっかけとなりましたら嬉しいです。
■注意事項
・小学生など低年齢の子どもが実験をするときは、必ず保護者の指導のもとで実施してください。
・ホウ砂を使用する場合は、毒性があるため目や口の中に入れないよう特に注意してください。
・火を取り扱う際は、周りに燃えるものがないか確認して実験したり、消火するものを準備したりして実験するなど十分注意してください。
■参考文献
[1] 「金属」のキホン (イチバンやさしい理工系) 田中和明 SBクリエイティブ
■関連記事