iOS版「Rakuten Link」の挙動が変わった楽天モバイル、圏外時の着信が不可になった!?
文●正田拓也 編集● ASCII
2021年07月25日 12時00分
楽天モバイル「Rakuten UN-LIMIT」の特徴は、通信量を1GB以下にすれば月0円という基本料金に加え、携帯電話や一般固定電話にかけ放題であること。これは「Rakuten Link」アプリを用いることが条件で、通常の通話とは違う仕組みで実現している。しかし、iOS向けのRakuten Linkの仕様変更があり、少し状況が変わった。
iOS版アプリの仕様変更で圏外での着信が不可に
iOS版Rakuten Linkの仕様変更は、当初6月15日以降順次とに予定されていたものが6月24日に延期、さらに再延期という経緯を経て、3度目の正直ということで7月6日から順次実施された。
楽天モバイルによる案内では、相手がRakuten Linkを使っていない通話での着信はRakuten Linkではなく、通常の通話アプリに着信するようになるとしている。
そのため着信履歴から直接折り返しで発信してしまうと、通常の通話アプリからとなり、かけ放題の対象外、つまり別途料金が発生するという案内がされている。
折り返しで発信する側の変更はこの説明どおりだが、この内容からは、楽天モバイルの回線が圏外であった場合に着信ができなくなる(と推察した)。一般的な携帯電話回線なら圏外で着信ができないのは当たり前の話だが、Rakuten LinkではWi-Fiや副回線などでiPhone自体がインターネットに接続されていれば着信ができていたのでこれが不可能となるわけだ。
そのため今回の仕様変更は、着信の確実さという点では非常に大きな変化となる。
相手がRakuten Linkからの発信以外とは、他社契約の携帯電話のほか固定電話も含まれ、さらに楽天モバイルでもRakuten Linkを使わない発信も含まれる。
かけてくる相手がRakuten Linkを使って発信すれば、従来どおり楽天モバイルが圏外であってもインターネット接続さえあれば着信は可能だが、楽天モバイルのシェアは数%程度ということからも、Rakuten Linkからの通話を着信する比率はまだまだ少なく、以前より電話を受けられないことが増えてしまいそうだ。
実際にRakuten Linkを試してみると
推察どおりに仕様が変わっていた
仕様変更については、7月6日以降順次となっていて、多少の猶予はあるかと思っていたが、筆者が試したところすぐに変わっていた。今回の記事執筆に合わせて再度確認しても、完全に変更された状態となっている。
実際にiPhoneにRakuten UN-LIMITのSIMを挿入、Rakuten Linkをインストールして使えるようにした状態で試すと、楽天モバイルの案内のとおり、相手が通常の携帯電話や固定電話から発信すると、こちら側には通常の通話アプリに着信するように変化している。
楽天モバイルが圏外時の挙動については、筆者の行動範囲では楽天回線エリアとパートナーエリアの両方が圏外という場所がすぐには見つからなかったので、ネットワーク選択を手動で違うものに設定して圏外としてテストしている。
圏外の状態ではWi-FiなどでiPhoneがインターネットに接続した状態でも、相手がRakuten Linkで発信した通話以外は着信できず、発信元には圏外アナウンスが流れた。一方でこちらからRakuten Linkアプリからで発信することは可能だった。以前であれば「圏外」であってもiPhoneがインターネットにさえ接続していれば、Rakuten Linkで着信できたことに比べると大きな差と言える。
圏外対策としては転送で解決する方法もある
iOS版Rakuten Linkの仕様変更により、これまで可能だった楽天モバイル網の圏外での着信が不可になってしまった問題だが、着信転送サービスを利用することである程度回避することもできる。
そのためにはもう1回線、音声通話付きの回線をeSIMなりで設定するか、アプリを使ったIP電話サービスの利用が必要で、さらに楽天モバイル側で圏外時転送を設定することで可能になる。
着信転送サービスは、Rakuten Linkではなくもう1つの純正アプリ「My楽天モバイル」を使って設定する。アプリの画面の下部の「契約プラン」を選んだ後、プラン内容の説明の下に通話サービスとして「着信転送」の項目がある。
ただし、着信転送をオンにしようとすると、まずは無条件転送のオンという画面になり、無条件転送をオフにすると転送条件が選べるようになる。ここで「圏外時転送」をオンにして転送先の電話番号を設定すると圏外の場合に自動で転送される。
副回線が音声通話対応ならば、副回線の電話番号を入れておくと同じiPhoneで着信できる。eSIM対応で音声通話対応の安価なサービスといえば、先ごろ開始したばかりのLINEMOのミニプラン(月990円)などがある。これを契約しておけば、LINEMOの料金はかかるものの、Rakuten UN-LIMITが圏外の場合でもソフトバンクのエリアであれば着信が可能にになる。ただし、着信転送料として30秒あたり22円の通話料金がかかるほか、転送時の呼出音が元の発信者側で鳴らないこともあるなど不安定な印象は否めない。
そして、着信転送料や副回線の基本料がかることを考えるとRakuten UN-LIMITならではのメリットはかなり薄らいでしまう
Android版アプリでは仕様変更はなく、
圏外でもRakuten UN-LIMITで着信可能
ここまで説明したのは、すべてiPhoneでの話だ。Rakuten Linkアプリが提供されているもう1つのプラットフォームであるAndroidでは、記事執筆時点でも以前のiOS版と同様に楽天モバイルの圏外でも、Wi-Fiや他社回線などでインターネット接続があれば、すべての通話をRakuten Linkで着信が可能だ。他社回線はデータ通信専用でもよく、さまざまな安価な格安SIMと組み合わせられる。
Rakuten UN-LIMITの回線自体にAndroidまたはiPhoneを利用するかの設定はないが、ログイン時にどちらのアプリからログインしたのかを判断しているようだ。最後にログインしたRakuten LinkアプリがAndroid版であれば着信はすべてRakuten Linkへ、iPhone版ならばRakuten Linkで発信してきた通話のみ、Rakuten Linkで着信するようにネットワーク側で制御しているように思われる。
また、Android版はSIMを抜くとRakuten Linkが自動的にログアウトする。iPhone版のようにSIMを抜いてもRakuten Linkだけ動作し続けるということはないなど、iPhone版とは挙動がだいぶ異なっている。
Rakuten Linkの活用範囲は減るが
無料で発信できるメリットは残っている
iOS版Rakuten Linkの仕様変更によって、楽天モバイルの回線がどうしても圏外になりやすいという弱点がカバーされにくくなってしまった。しかし、Rakuten Linkの魅力であるかけ放題の通話というメリットははそのままで、楽天回線が圏外でもインターネット接続さえあれば発信できるという点が維持されたことは喜んでおきたい。
今回の仕様変更はiOS版だけで、Android版についてはアナウンスは特に無いが。楽天モバイルのメリットを存分に活用していくなら、今後ともRakuten Linkの仕様変更には注意深く見ていきたい。
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