【レビュー】新iMacはM1搭載MacBook Proと同等の性能、選択のポイントはデザインと用途

文●西田 宗千佳 編集●飯島 恵里子/ASCII

2021年05月18日 22時00分

新しいM1搭載のiMac。カラーはグリーン

 5月後半から発売される、新しいiMacの製品版を試用した。今回のiMacは久々の完全リニューアルであり、Mac miniに続く2つ目の「デスクトップ型M1搭載Mac」でもある。

 どのような使い勝手になっているかを取り急ぎチェックしてみよう。

カラフルな外観がiMacの特徴

 「新iMacの特徴がなにか」といえば、やはり多くの人が「色」と答えるのではないだろうか。もうずいぶんと長い間、iMacはモノトーンで統一されてきた。だが、今回の新型は、ブラウン管時代のiMacを思い出させるカラーバリエーションが特徴になっている。

 今回試用したのは「グリーン」。キーボードからマウスまで、カラーリングは統一されている。ほかの色のマウスやキーボードを購入することは当面難しい、とのことなので、セットでついて来る組み合わせを使う、と考えていただきたい。

本体背面は濃いグリーン。スタンドは薄いグリーンと色味が違う

本体付属のキーボードなど。色味はもちろん本体と同系色だ

 壁紙の色も、本体の色に合わせて用意されている。この辺は、iPhoneやiPodなどでも実施していた「アップルお得意のやり方」と言っていい。

本体の初回起動時のメッセージ。各国語で表示されるようになっていて、本体色に合わせたカラーになっている

 ボディ色はグリーンではあるのだが、部位によって3つのパターンに分かれている。本体正面はパステル調、スタンド部は淡いグリーン、そして、本体後部は濃いめのグリーンだ。アルミボディのグリーンを見ると、iPod nanoのことを思い出す。

 本体は上から下まで均一な薄さで、まさに「板」だ。プロセッサーがM1であり、MacBook AirやiPad Proでも使われていることを思えば「この厚みの中で入る」ことも納得はできるが、実物を見るとちょっと感心する。

左がiMac、右がiPad Pro(2020年モデル)。厚みのイメージがかなり近い点に注目

インターフェースは「表から手を伸ばして本体の右側の裏」に4つある。下位モデルは2つ

インターフェースの少なさと「背面スッキリ」は表裏一体

 背面を見ると、とにかくスッキリしている。何もない。今回試用しているのは上位モデルなので、USB 3.1が2つ、Thunderbolt/USB4のインターフェースが2つと、合計4つが横に並んでいるだけだ。あとは、本体中央に新しい仕様の「電源コネクター」があるだけで、イーサネットやUSB-Aなどはない。

反対側にはメイン電源ボタンがある

 インターフェースが少ないという点は、iMacも含め現在のM1採用アップル製品共通の課題・難点ではある。iMacの場合には、上位モデルはまだしも「4つ」あるわけで多少ましではあるが。インターフェースの点は、iMacを選ぶ上で上位モデル・下位モデルを分ける大きなポイントと言える。イーサネットやキーボードはなんとかなるが、インターフェースの増設は困難が伴うので、iMacではインターフェースの多い上位モデルを強くお勧めする。

 まあそれはともかくとして、背後がスッキリしていることは美観的にはプラスではある。せっかくきれいに作ったiMac、背中までいつもみて欲しい、ということだろうか。

 その結果として、外付けの電源ユニットにイーサネットのポートがつけられることになった。電源ユニットは机の下などの見えないところに置く、という思想だろう。

新しい電源

上位モデル向けはイーサネット端子がこちらに内蔵されている。サイズはかなり大きめ

コネクターはマグネットが入った独自形状のものだ

 この電源兼イーサネットのケーブルは、iMac本体にマグネットでくっつくようになっている。と言っても、MagSafeとは違い、そう簡単には外れない。ケーブルを引っ掛けた程度では抜けず、ちゃんと「外すつもりでしっかり力をかけた」時でないと抜けないようにできている。その点は安心していい。どちらかと言えば、簡単につなげられるようにマグネットを使った……ということだろう。

意外なほど良好だった「音質」

 ディスプレーの品質は上々だ。液晶だと考えると、解像感も発色もいい。多少視野角が狭く、近づいて見すぎると画面端の色が変わって見えるが、まあそれは、普通の使い方をすれば問題にはならない。

 それ以上に感心したのは音質だ。

 スピーカーはフロントグリル部の正面にあるのではなく、下向きについて机で音が反射して聞こえる構造になっている。だが、ちゃんと音は正面から聞こえるので問題ない。Dolby Atmos対応の映画などでは、ちゃんと立体的に音が聞こえる「空間オーディオ」対応だ。

 ただ、空間オーディオの効果はディスプレーからの距離でかなり変わる。椅子に座り、ガッツリもたれかかってしまうと効果が薄れるほどだ。画面から90cm以内くらい、すなわち「普通にiMacで作業する距離」で聴くのが最適、ということになる。

 音楽についても良好。どちらかというと、音を部屋に広げて聴くような、BGM的な聴き方に向く印象を受けた。

 カメラの性能も上がっている。iPhoneのインカメラのように高画質、とまでは言わないが暗所での見えやすさや画角の広さが変わった。ビデオ会議はかなりやりやすくなったように思う。これは、今とこれからのニーズを考えれば重要な点だ。

MacBook Proのカメラで撮影。あえて暗めの場所で撮っているので、解像度以外でも色々画質的に難点が

iMacでの撮影。明るくなり、画角もグッと広くなった。ビデオ会議ではより使いやすい

性能は「M1だからすべて同じ」だった

 さて、では性能をチェックしてみたい。

 ベンチマークに使ったのは、定番の「GeekBench 5」。個人的にM1版MacBook Pro(メインメモリー16GBモデル)を使っているので、その数値と比較して見ていただきたい。答えは本当にシンプルだ。性能はどちらもほぼ同じである。

GeekBench 5でのCPUベンチマーク。白がiMacで、黒がMacBook Pro。値はほぼ「誤差」の範囲だ

同じくGPUベンチマーク(Metal)。こちらも差は小さい

 ということは、アップルが現在使っているM1はクロックなどの細かなバリエーションはなく、基本的にすべてまったく同じもの……ということになる。

 PCを選ぶ場合、CPUクロックやバス幅、ストレージインターフェースなどで細々と差があり、そうした部分も配慮するのが基本だ。Macもインテル版ではそれに近いところがある。

 だがAppleシリコン時代のMacでは、同じ名前のプロセッサー(今回ならばM1)ならばとにかく性能はほぼ同じ、というパターンになるのだろう。選択のポイントは結局「デザイン」と「用途」だ。選び方がよりシンプルになったとも言える。

 そういう意味では、外観が大きな差別化点であるiMacは、とても「M1らしい」製品と言えるのではないだろうか。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。

 

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