【実機レビュー】初代機とは別モノ! 新Google Nest Hubの音質や睡眠支援が好感触

文●山本 敦 編集●飯島恵里子/ASCII

2021年05月10日 12時00分

新旧Google Nest Hubを比較してみた。右側が新しい第2世代機。左が初代機。

 Googleアシスタントを搭載するスマートディスプレーの元祖、「Google Nest Hub」の第2世代機がグーグルから5月5日に発売された。7インチの液晶タッチディスプレーを活かしながら、前モデルよりもさらに強化された低音再生の実力など、新旧モデルによる比較も加えレポートをする。

見た目は一緒。でも中身がかなり変わった

 Google Nest Hubは映像・音楽エンターテインメントの再生にスマートホーム機器のコントロール、Googleアシスタントに話しかけてニュースや天気、Googleカレンダーに登録したスケジュールの読み上げなど、幅広い用途に使えるスマートデバイスだ。音声による応答だけでなく、検索した情報をディスプレーに映して見られるので知りたいことが直感的に頭に入る良さがある。

 日本では2019年に初代のGoogle Nest Hubが、1万5120円で発売された。新しい第2世代のモデルは低音再生を強化したほか、グーグル独自のレーダー技術を搭載するMotion Senseテクノロジーによる簡易なジェスチャー操作に対応。さらに新機能の「睡眠モニター」を加えながら、価格が1万1000円とかなり手頃になった。

右が第2世代、左が初代。背面のデザインはほぼ変わっていない

 新旧モデルのデザインはほぼ同じ、近づいてよく見るとディスプレー部のベゼル周囲に設けられていた縁がなくなり、四つ角のカーブがより丸みを帯びて柔らかい印象になっている。さらにAIアシスタントの応答性能を高めるため、本体に内蔵する高感度マイクが2基から3基に増えた。

右が第2世代。ベゼルの外枠がすっきりとした

 カラーバリエーションが、白系のチョークと黒系のチャコールの2色に絞られた。筆者は部屋の印象を明るくしてくれるオレンジ系のSand、クールなブール系のAquaが日本で展開されないことがちょっと残念だ。

Soliレーダーに手をかざしてジェスチャー操作ができる

画面に触れずに操作できる「ハンドジェスチャー」に対応した

 第2世代のGoogle Nest Hubには60GHz周波数帯の電波を使って、デバイスに触れることなくハンドジェスチャーのMotion Senseによるリモコン操作を可能にする「Soli(ソリ)レーダー」が内蔵された。Soliを載せたグーグルのハードウェアはAndroidスマホのGoogle Pixel 4/4 XL以来になる。

 ただ、新しいGoogle Nest Hubが対応するハンドジェスチャーは、Pixel 4シリーズよりもボリュームは少し控えめ。音楽や映像コンテンツの一時停止と再生、タイマーの停止とアラームのスヌーズ切り換えに限られる。10インチのGoogle Nest Hub Maxがフロント側に搭載するカメラで実現する「クイックジェスチャー」(製品レビュー)とできることは同じだ。

Soliレーダーのイメージ

 ハンドジェスチャーは、本体から約1.5メートルぐらい離れた場所から手をかざしても、認識してくれる。本機をデスクトップなどに置いた場合、手を伸ばせば指が届く範囲よりも、さらに距離を離した範囲から簡単な操作ができるようになるので、設置の自由度はアップする。ただ、どうせならばPixel 4シリーズと同じようにかざした手を左右にスワイプ動作して曲送りができたり、クイックジェスチャーの操作メニューを増やしてほしい。今後のアップデートに期待だ。

 なぜなら常に手に持った状態で画面を触っていることが多いスマホよりも、据え置き型のスマートディスプレーの方がMotion Senseによるクイックジェスチャー操作を搭載する意味があると感じたからだ。レーダーの感知範囲を強化できるのであれば3〜5メートルほどに延長して、Android TVを搭載するテレビのメーカーにもMotion Senseをライセンス提供してほしい。ハンドジェスチャーでテレビのチャンネルを切り換えられたりすると便利じゃないかと思う。

音楽再生をチェック。低音が強化されたことで全体のサウンドバランスが整った

音楽性が増したサウンド

 第2世代のGoogle Nest Hubも、本体に43ミリ口径のフルレンジドライバーを1基搭載する。スピーカーシステムのハードウェア構成は、前世代機から変えていないようだ。ソフトウェアのチューニングにより、低音再生を約50%強化した。

 音を聴いてみると、確かに第2世代の方が音楽、あるいは映画の効果音として一体感のあるサウンドが聴きやすくなっていた。女性ボーカルがリードするジャズバンドの演奏を再生してみると、音楽のエネルギーを浴びながら聴くような充実感が得られる。より肉厚なウッドベースのグルーブ感がいい。ボーカルの立体感、張りと艶も鮮明だ。ピアノやサキソフォンの音色も華やかに感じられる。元もとGoogle Homeアプリから低音と高音のバランスをイコライザーで調整できる機能もあるが、これを使わなくても新しいGoogle Home Nestは十分に力強く、まとまりの良いサウンドが楽しめる。

 Netflixでドラマを再生してみても、やはりセリフの聞こえ方が格段によくなっていた。細かな効果音の粒立ちもよく、7インチのコンパクトなディスプレーの向こうに広がる映像の世界に没入できた。スピーカーの音質が向上したことだけでも、第2世代のGoogle Home Nestに買い換える価値がありそうだ。

ベッドサイドでの動画鑑賞にも最適

 Google Nest Hubが搭載する7インチのディスプレーは、寝室の枕元に置くとちょうど良いサイズ感であることがとてもよく実感できる。就寝前にYouTubeやNetflixの動画を見る用途にも最適だが、ひとつ注文を付けるとすればスマホのPixelシリーズには搭載する「夜間モード」を追加して、目に優しい画質で見たい。

スマートホームデバイスを直感的にタッチ操作によりコントロールできることのメリットが実感できた

 Google Nest Hubシリーズに共通して言えることはやはり、スマート家電の視覚情報付きコントローラーとして優れているということだ。ベッドサイドでの使用にも適していて、眠る直前にスマート照明の灯りを落としたり、照明のホワイトバランスを調整して心地よい睡眠環境にチューニングできる。スマホでもできることだが、7インチという画面サイズが実に心地よかった。

新機能の「睡眠センサー」が追加されている

新機能の「睡眠センサー」とは

 Google Nest Hubの新機能である「睡眠センサー」の一歩踏み込んだレポートは、また機会を改めてお伝えしたい。ここでは機能の概略を説明する。睡眠センサーはSoliレーダーを使う。カメラやほかのウェアラブルデバイスは、使わない。寝ている間、呼吸時に発生する体の“動き”だけをMotion Senseでトラッキングしながら、睡眠状態を計測するという機能だ。

Google Fitアプリから睡眠センサーのデータを見ることもできる

 さらに本体に内蔵するマイク、環境光センサーと温度センサーにより、咳やいびきなどの睡眠障害、環境光や温度の変化を検出して、睡眠に良くない影響を及ぼしそうな要素をセルフチェックできる。毎日の睡眠ステータスは本体のディスプレーに結果がグラフと数値で表示される。またスマホのGoogle Fitアプリから睡眠時のデータを振り返られる。アプリは睡眠の質を改善するための簡易なアドバイスなども提供する。

Apple WatchとiOSのヘルスケアアプリの場合は睡眠トラッキングと呼吸の履歴を並べて見ることが可能だ

アップルの「睡眠」アプリとどこが違うのか

 本機をセットアップしてから、筆者も取り急ぎ2〜3日睡眠センサーを使ってみたが、Motion Senseによる入眠から起床までの睡眠トラッキングは驚くほどに正確だと思う。筆者はApple Watchを寝る時にも身に着けて「睡眠」アプリを使っているが、両方のデバイスが「眠っていた時間」として計測するデータは今のところほぼ一緒だ。

 Apple Watchは眠っている間の心拍数をモニタリングしてくれるが、第2世代のGoogle Nest Hubはウェアラブルデバイスを身にまとわなくても、いびきなど呼吸の状態を見守ってくれる。日本の暑い夏場にも使いやすそうだ。

起床時にGoogle Nest Hubの画面が徐々に明るくなる「めざましディスプレー」を搭載

 睡眠センサー機能は、2022年までプレビュー版としてグーグルが無料提供すると発表している。その後の有料化のスキームについては今のところ定まっていないようだが、ユーザーとしては無料で使える今のうちに、自分のライフスタイルとどのようにマッチするのか色々試せる機会を活用しない手はないと思う。

 音楽再生など土台の完成度がアップして、さらに新機能も加わった第2世代のGoogle Nest Hubが前の機種よりも安価に買えるようになった。これは歓迎するほかないだろう。特に睡眠モニター機能が加わったことで、第1世代のモデルから“もはや別モノ”と言うべき進化をグーグルのスマートディスプレーが遂げようとしている。既にGoogle Nest Hubシリーズを持っている方も、買い増しする価値のあるデバイスではないだろうか。

 

筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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