「Dell Technologies APEX」発表、広範な“as-a-Service化”を推進

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

2021年05月07日 12時30分

 Dell Technologiesは2021年5月6日(日本時間)、オンライン開催中の年次カンファレンス「Dell Technologies World 2021」において、“as-a-Service”モデルにより物理的なITインフラの調達、管理、保守、サービスに伴う時間や複雑さを軽減する「Dell Technologies APEX」ポートフォリオを発表した。ストレージ、ハイブリッド/プライベートクラウド、広範なITインフラ、データセンターオペレーション(マネージドサービス)などをサブスクリプション型で提供し、単一の管理コンソールである「APEX Console」を通じて全体を調達/コスト管理/予測分析できるようにする。

 さらに、APEXサービスの提供においてEquinixとグローバルに協業し、Equinixのデータセンターインフラを用いたマネージドサービスを展開することも発表している。

「Dell Technologies APEX」ポートフォリオの全体像

「Dell Technologies World 2021」基調講演で登壇したDell Technologies 会長兼CEOのマイケル・デル(Michael Dell)氏

3レベルのパフォーマンスを提供「APEX Data Storage Services」

 Dell Technologiesでは2020年10月、同社のあらゆる製品/ソリューションポートフォリオをas-a-Serviceモデルで提供する新たな取り組みとして「Project APEX」を発表していた。

 今回は、Storage-as-a-Serviceや管理コンソールなどをリリースしたほか、従来から提供してきた「Dell Technologies Cloud Platform」「Flex on Demand」をリブランドし、APEXポートフォリオに組み込んでいる。

Dell Technologies APEXは「Simplicity/Agility/Control(シンプルさ、俊敏さ、コントロール性)」をキーワードに掲げる

 「APEX Data Storage Services」は、顧客オンプレミスまたはコロケーションデータセンターにDell Technologiesが所有/管理するエンタープライズクラスのストレージインフラを配置し、マネージドサービスとして提供するサービス(Storage-as-a-Service)。公式ブログによると、99.9999%の可用性設計を持つ高信頼で高速、スケーラブル、弾力性のあるブロック/ファイルストレージリソースを提供できるとしている。米国ではオーダーから14日以内でオンプレミス/コロケーション環境に設置され、利用できるようになるという。

 ストレージ容量は最小50TBからスケールアップすることができ、容量追加のオーダーはAPEX Consoleからセルフサービス型で実行できる。幅広いワークロードに対応するため、オーダー時に3レベルのパフォーマンスティア(Tier1~3)で指定が可能。また、使用量の増加に応じてDell Technologiesがリソース追加を行い、バッファキャパシティ(最大25%)を確保する。

 APEX Data Storage Servicesのサービス利用料は、シンプルな「シングルプライス」を特徴としている。ブロック/ファイルストレージの各パフォーマンスティアにそれぞれギガバイト単位の月額使用料が設定されており、ベースキャパシティ(50TBまたは100TB)以上を使った場合は“使ったぶんだけ”の従量課金型となる。スナップショットの作成/復元やAPIコールなどに対する追加料金はかからない。契約期間は1年間または3年間。

APEX Data Storage Servicesにおける使用料増減のイメージ(ブログ発表より)

各パフォーマンスティア(ブロック/ファイルストレージ)の適合用途や使用料の一覧(公式サイトより)

 なお前述したEquinixとの協業に基づき、Equinixデータセンターにコロケーション配置されたDell Technologiesのリソースを用いるData Storage Servicesも提供される計画だ。APEX Consoleからオーダーする際に、最寄りのEquinixデータセンターを指定するだけでストレージリソースを利用でき、支払い先をDell Technologiesに一元化できるメリットもある。

ハイブリッド/プライベートクラウド環境を提供「APEX Cloud Services」

 「APEX Cloud Services」は、「APEX Hybrid Cloud」および「APEX Private Cloud」の2つで構成されるハイブリッド/プライベートクラウドサービス。月額料金にはクラウドインフラを構成するハードウェアやソフトウェア、またソフトウェアアップグレードやメンテナンス、予測監視、障害検知などのサービス群も含まれる。まずは米、英、仏、独の4カ国で提供を開始した。

 プラットフォームには「VMware vSphere with Tanzu」または「VMware Cloud Foundation with Tanzu」を利用し、仮想マシン環境とコンテナ/Kubernetes環境を併用することができるため、従来型アプリケーションとクラウドネイティブアプリケーションの両方に対応できるとしている。APEX Hybrid Cloudでは、400以上のクラウドパートナーが提供するパブリッククラウドを組み合わせた柔軟なワークロード配置が可能。

 プライベートクラウド環境のオーダーは、APEX Consoleから必要なインスタンスのタイプと数を指定するかたちで行う。インスタンスは汎用(アプリケーション/DBサーバー)、VDI環境、データ分析などワークロードの特性に合わせたものが用意されており、最小で25インスタンス単位からオーダーできる。オーダー内容に応じて、Dell Technologiesが環境設計や構築、設置を行う。14日以内に初期導入ができ、リソースの追加も5日以内に完了するという。

「APEX Cloud Services」では、用途に応じたタイプのインスタンスを指定してオーダーできる

「APEX Custom Solutions」「APEX Console」

 「APEX Custom Solutions」は、サーバーやストレージ、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)といった製品を提供する「APEX Flex onDemand」と、顧客データセンターのオペレーションサービスを提供する「APEXData CenterUtility」により構成される。いずれもas-a-Service化され、必要に応じて柔軟に使用することができ、使用量に応じた従量課金制が適用される。

 なおCustom Solutionsは、Dell Technologiesのチャネルパートナー/アライアンスパートナー経由でも利用することが可能だ。パートナープログラムを強化したほか、使用量のメータリングソリューションも提供されるため、APEXを利用してパートナー自身が付加価値サービス(VAS)を展開することもできる。

 以上で紹介してきたAPEXの各サービス群を、ユーザーがセルフサービス型で一元的に監視/管理できるのが「APEX Console」となる。自社における使用リソース量や使用料金の可視化や予測分析、リソースのカタログとオーダー、デプロイ状況の追跡といった機能を備えている。管理機能の自動化や外部アプリケーションとの連携も可能だ。

APEXのサービス群全体を一元管理できる「APEX Console」。新規リソースのオーダーもセルフサービス型で簡単に実行できる

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 Dell Technologies World 2021の基調講演においてデル氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し続ける中で、多くの企業がその根本的な変化を理解し、未来を作るための投資を今から始めていると語った。

 「われわれが顧客の皆さんのITインフラストラクチャや高度に自動化されたマルチクラウド環境、そしてas-a-Serviceを提供することで、(複雑化した状況を)元に戻したいと考えている。(その代わりに)皆さんは時間やエネルギー、投資を、データやアプリケーションに充てることができ、その結果、ビジネス成果と競合優位性が得られるはずだ」(デル氏)

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