国内PC市場は空前の好況、前年同期比約2.2倍の売上──JEITA発表

文●大河原克行 編集●ASCII

2021年03月22日 15時00分

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2021年2月の国内パソコン出荷統計によると、出荷台数は前年同月比115.5%増の108万1000台となった。前年同期に比べて、約2.2倍の成長となり、2021年1月の109.8%増を上回る実績となった。出荷台数は、4カ月連続で2桁以上の成長を記録。2月単月で100万台を超えたのは2014年以来、7年ぶりのこととなった。

 また、ノートPCの出荷台数は、182.4%増の98万5000台となり、2月単月としては、過去最高の出荷台数を記録した。前年同月は、2020年1月のWindows 7のサポート終了後の反動期に入り、PC市場が落ち込んでおり、それとの対比という優位性はあるものの、それでも国内パソコン市場の勢いの強さが示された格好だ。

 同協会では、「2021年2月の国内パソコン市場は、個人向け、法人向けともに好調に推移し、3カ月連続で台数、金額とも前年を上回った」としている。

 2021年2月の国内出荷金額は、前年同月比49.9%増の747億円となっている。

GIGAスクール構想の影響が色濃く、平均単価の下落も

 好調の最大の理由は、児童生徒1人1台のPC整備が進められているGIGAスクール構想の影響だ。2020年度中までに小中学校への整備が計画されており、急ピッチで導入が進んでいる段階だ。

 GIGAスクール構想では、Windows PC、Chromebook、iPadが整備の対象となっており、Windows PCおよびChromebookでは、11~13型を最適なディスプレイサイズとし、それを中心に9~14型までが、学校に導入するノートPCの仕様に定められている。

 JEITAの出荷統計では、画面サイズが14型以下および重量が1.5kg以下のものは、「モバイルノート」と定義しており、GIGAスクール構想向けのPCは、ここに当てはまる。

 2021年2月の出荷統計では、モバイルノートの出荷台数は、前年同月比484.1%増の56万8000台となっており、前年実績の5.8倍にも増加している。過去の統計を見ても、モバイルノートは、2014年2月の16万8000台が最大で、今回の56万8000台という実績は、2月単月の集計では空前ともいえる実績であることがわかる。

 また、ノートPCの構成比も91.1%となり、9割台を維持する状況が2020年11月から続いている。2020年2月の実績では、69.5%であり、構成比が21.6ポイントも上昇している。

 GIGAスクールの影響に加えて、量販店店頭でも、ノートPCの売れ行きが好調なのが要因であり、引き続き、テレワーク需要が根強いほか、学校へのPCの整備に伴い、子供用にGIGAスクールと同等水準のノートPCを、家庭で購入するといったケースも増えているようだ。

 GIGAスクール構想の影響は、平均単価の下落という形でも表面化している。

 2020年2月には、PC全体で9万9203円だった平均単価は、2021年2月には、6万9103円と、1年間で約3割も下落。とくに、GIGAスクール構想の対象となるモバイルノートは、前年同月の11万5464円から、5万1937円と、55%も下落し、半値以下となっている。1台あたり4万5000円の補助金が用意されているGIGAスクール構想では、PCメーカー各社が、4万5000円以下で導入ができるパッケージ製品を用意しており、そうした動きが平均単価の下落に影響している。

 実際、GIGAスクール構想の影響を受けにくいA4ノートPCなどの「ノート型・その他」のカテゴリーでは、前年同月の9万3626円から、8万4173円と、平均単価の下落率は10.1%に留まっており、GIGAスクール構想の影響をまったく受けないデスクトップPCに至っては、前年同期の9万8693円から、10万4167円と5.6%値上がりしている。

デスクトップは縮小傾向ながら、高性能・高級機へのシフトも

 だが、デスクトップPCの需要は低迷している。

 2月の出荷実績は、前年同月比37.1%減の9万6000台となり、オールインワンタイプが37.3%減の2万8000台、デスクトップ単体モデルが37.0%減の6万9000台となっている。いずれも、3分の2以下に市場が縮小しており、ノートPCとは対照的な結果になっている。

 一部PCメーカーでは、テレワーク環境の整備において、家庭内へのデスクトップPCの設置を提案する動きもあるが、こうしたメッセージが届ききっていないともいえそうだ。ただ、デスクトップPCの平均単価が上昇していることを考えると、オンライン会議などのテレワーク環境や、家庭内での作業の効率化のために、性能の高いデスクトップPCを購入するといった動きが影響している側面もありそうだ。

需要に対してどれだけの製品を供給できるかがカギに

 国内パソコン市場の勢いは、2021年3月までは続きそうだ。

 その背景には、GIGAスクール構想の整備が最終段階に入ることがあげられる。また、比較対象となる2020年3月は、コロナ禍におけるテレワーク需要がそれほど顕在化していない時期であり、むしろ、Windows 7のサポート終了に伴う特需の反動の方が色濃く出ていた。それだけに、2021年3月の成長率がどれだけの数値を記録するのかが注目される。PCメーカー各社にとっては、大きな需要に対して、どれだけ製品を供給できるのかがカギになりそうだ。
その一方で、2021年4月以降は、市場成長には減速感が見られるだろう。2021年4月以降も、GIGAスクール構想は継続されるが、整備のステージが高校に移り、予算規模は大幅に縮小されることになるため、市場成長への効果は限定的だ。

 業界関係者にとっては、3月はどれだけの成長になるか。そして、4月はどれぐらいの落ち込みになるのか。山の高さと、谷の深さが気になるところだ。

 なお、JEITAのパソコン出荷統計は、参加企業による自主統計となっており、Apple Japan、NECパーソナルコンピュータ、セイコーエプソン、Dynabook、パナソニック、富士通クライアントコンピューティング、ユニットコム、レノボ・ジャパンの8社が参加。市場全体の約7割をカバーしている。

■関連記事