Core i9-11900Kなど、Rocket Lake-SことデスクトップPC向け第11世代Coreが正式発表!

文●ジサトライッペイ 編集●ASCII

2021年03月17日 00時00分

最上位の「Core i9-11900K」のパッケージは従来と同様、特別仕様だ

 昨年から小出しで情報を開示されたきた、インテルのデスクトップPC向け最新CPU「第11世代Coreプロセッサー」(開発コードネーム:Rocket Lake-S)だが、ついにその全貌が明かされた。インテルの資料から抜粋して詳しく解説していこう。まずは恒例のラインアップから、国内における実売価格の予想が立てられたモデルはその情報も交えてご紹介する。

Core i9とCore i7は最大8コア

Rocket Lake-SのCore i9とCore i7のラインアップ

 Core i9のラインアップは「Core i9-11900K」(予想実売価格 7万7800円前後)、「Core i9-11900KF」(予想実売価格 7万4800円前後)、「Core i9-11900」(予想実売価格 6万3800円前後)、「Core i9-11900F」(予想実売価格 6万2000円前後)、「Core i9-11900T」の5モデル。従来と同様、サフィックス(型番末尾のアルファベット)が示す意味は「K」がコアの動作倍率変更によるオーバークロック(以下、OC)に対応するTDP 125W版、「F」が内蔵GPU非搭載、「T」がTDP 35Wの省電力版となる。なお、末尾に何も付かない通称「無印」のTDPは65Wになる。

 いずれのTDPも従来のデスクトップPC向け第10世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Comet Lake-S)から変更はなく、LGA1200ソケット採用マザーボードで運用する点も同じだ。そのため、Power Limit設定はマザーボード側で変更できると思われる。

 また、Core i7も「Core i7-11700K」(予想実売価格 5万8800円前後)、「Core i7-11700KF」(予想実売価格 5万7000円前後)、「Core i7-11700」(予想実売価格 4万7800円前後)、「Core i7-11700F」(予想実売価格 4万3800円前後)、「Core i7-11700T」の5モデルとなる。Core i9との差は「Intel Thermal Velocity Boost」への対応のみで、内蔵GPUも「Intel UHD Graphics 750」(Fは非搭載)と同じ。そのため、最大8コア仕様のRocket Lake-SではCore i7のお買い得度が高くなるかもしれない。

Core i5は6コア、Core i3以下は第10世代Coreのリフレッシュ版

Rocket Lake-SのCore i5のラインアップ

 Core i5は「Core i5-11600K」(予想実売価格 3万7800円前後)、「Core i5-11600KF」(予想実売価格 3万5000円前後)、「Core i5-11600」、「Core i5-11600T」、「Core i5-11500」(予想実売価格 2万8800円前後)、「Core i5-11500T」、「Core i5-11400」(予想実売価格 2万5800円前後)、「Core i5-11400F」(予想実売価格 2万3000円前後)、「Core i5-11400T」の9モデル。なお、Core i5-11400系(Fを除く)は内蔵GPUが「Intel UHD Graphics 730」と下位のグレードになる。

新しく追加されたCore i3とPentiumeのラインアップ

 一方で、Core i3を含む下位のラインアップはComet Lake-Sのリフレッシュ版となる。新たに追加されたのはCore i3が「Core i3-10325」、「Core i3-10305」、「Core i3-10305T」、「Core i3-10105」、「Core i3-10105F」、「Core i3-10105T」の6モデル。

 Coreプロセッサーブランドではないが、同アーキテクチャーを採用するPentiumは「Pentium Gold G6605」、「Pentium Gold G6505」、「Pentium Gold G6505T」、「Pentium Gold G6405」、「Pentium Gold G6405T」の5モデルだ。

IPCが最大19%、内蔵GPUは最大50%アップ!

Rocket Lake-Sの要点

 Rocket Lake-Sは前世代からCPUコアも内蔵GPUもアーキテクチャーを刷新している。そのため、CPUコアのIPC(Instructions Per Clock=クロックあたりの命令実行数)が最大で19%、内蔵GPUの性能は最大で50%向上しているという。また、インテル ディープラーニング・ブースト/VNNIへの対応など、AI処理性能についても強化している。

前世代からのアップデートポイント

 CPUコアのアーキテクチャーは「Cypress Cove」、内蔵GPUはIntel Xe Gprahicsアーキテクチャーをベースにした「Intel UHD Graphics」となる。それぞれ詳しく解説していこう。

 前者はノートPC向けの第11世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Tiger Lake)で採用している、10nm+の「Willow Cove」の14nm版で設計は同じ。長年培ってきた14nm製造技術で、多数のコア(ノートPC向けの8コアはまだ市場に存在しない)を安定して高クロックで動かせるという。

 後者もTiger Lakeで採用しているIntel Xe Gprahicsがベースだが、Rocket Lake-Sに内蔵するGPUの実行ユニット(EU)は32基。Tiger Lakeの内蔵GPU「Intel Iris Xe Graphics」(EUは96基)と比べると、その3分の1となる。

 このことから、第11世代Coreプロセッサーは最新アーキテクチャーが目玉だが、ノートPC向けでは内蔵GPUパワーに、デスクトップPC向けではCPUコアのパワーに重きを置いているように思える。

 そのほかの話題では、定格メモリークロックの最大がDDR4-3200に向上、AV1の10ビットやHEVCの12ビットへの対応、オーバークロック(以下、OC)機能のアップデート、最近ではNVIDIAのCPUもサポートして話題になったResizable BARのサポートなど、足回りの強化点も多い。

新チップセットはPCIe 4.0とUSB 3.2 Gen 2x2に対応

インテル500シリーズ・チップセットのポイント

 Rocket Lake-Sは、すでに各マザーボードメーカーから販売が始まっている、インテル500シリーズ・チップセット搭載マザーボードで運用するのがオススメだ。前世代のインテル400シリーズ・チップセット搭載マザーボードでも動く(B460とH410は除く)が、PCI Express 4.0(PCIe 4.0)はサポートしていないので、Rocket Lake-Sをフルパフォーマンスで生かせない。

 Rocket Lake-SではDMI(CPUとチップセットをつなぐバス)こそ、PCI Express 3.0(PCIe 3.0)のままだが、8レーンと従来(4レーン)より倍増。CPUから伸びるPCIe 4.0はインテル500シリーズ・チップセット搭載マザーボードでは20レーン使える(グラフィック用の16レーン+NVMe SSD用の4レーン)が、従来世代のマザーボードではグラフィックのみの16レーン(しかもPCIe 3.0接続)となるからだ。

 また、インテル500シリーズ・チップセット搭載マザーボードはUSB 3.2 Gen 2x2ポートを標準で備える点も魅力的だ。徐々に対応製品が増えてきた同規格のストレージなどを最高速度で動かしたい場合は、インテル500シリーズ・チップセット搭載マザーボードで決まりだろう。

 一方で、Comet Lake-Sはインテル500シリーズ・チップセットの種類に関係なく動かせるが、当然PCI Express 4.0などの新機能が使えるわけではなく、その運用は限定的なものとなる。

H570やB560といった下位グレードのチップセットでもメモリーOCに対応。インテルのチューニングソフト「Intel Extreme Tuning Utility」(通称:IXTU)からも設定できる

 チップセットのラインアップは上から順にZ590、H570、B560となるが、従来は「Z」グレードにしか許されなかったメモリーのOCが、今回は「H」/「B」グレードでも解放している。もちろん、OCはそれ自体が製品保証外の行為だが、今後は手頃なマザーボードとCPUの組み合わせでも、手軽にパワーアップできる可能性が上がった点は評価すべきだろう。

「新たなオーバークロック機能」にある「Gear 2」に注目

 しかしながら、メモリーまわりには懸念材料もある。というのも、上記スライドにある「Gear 2」の表記だ。これはメモリーのFCLK比の話で、Gear 1の場合はFCLK比1:1動作、Gear 2の場合はFCLK比1:2動作になる。Rocket Lake-SのDDR4-3200対応は、Core i9-11900Kと同KFがGear 1、その他はGear 2動作になるのだ。このFCLK比は1:1動作が理想で、1:2動作ではパフォーマンスが落ちるアプリもある。

 つまり、Core i9-11900Kと同KF以外のCPUでは、場合によってはGear 2動作のDDR4-3200で動かすよりも、Gear 1動作のDDR4-2933で動かしたほうが良いケースが出てくるということだ。この点が「DDR4-3200対応」という新規ポイントの歯切れを悪くしているように感じるのは筆者だけだろうか。もちろん、具体的にどの程度の影響が出てくるかは今後検証していく予定だ。

 そのほか、別途マザーボードに専用チップの実装が必要なディスクリート対応ではあるが、Wi-Fi 6EやThunderbolt 4をサポートするのもポイントだ。しかし、Wi-Fi 6Eについてはまだ日本の法整備が終わっておらず、まだ使えない。もろもろの環境が整ったら、各マザーボードメーカーが日本向けにもドライバーを配布し、使えるようになると思われる。

前世代やRyzenと比べても強いゲーム性能

 ここからはRocket Lake-Sのゲーミング性能にフォーカスして、前世代と競合であるAMDのRyzenと比べたデータを見ていこう。

Rocket Lake-Sの最上位Core i9-11900Kと、前世代の最上位「Core i9-10900K」のゲームタイトルごとの性能比較。Core i9-10900Kを100とした時のCore i9-11900Kの性能を%で表示している

 まずはRocket Lake-Sの最上位Core i9-11900K(8コア/16スレッド、3.5~5.3GHz)と、前世代の最上位「Core i9-10900K」(10コア/20スレッド、3.7~5.3GHz)の比較。ビデオカードはGeForce RTX 3090 Founders Editionを用いてなるべくGPUで律速しない環境で検証しているようだが、そこで8~14%と大きな差が生まれている。

Core i9-11900Kと「Ryzen 9 5900X」の比較

 続いては「Ryzen 9 5900X」(12コア/24スレッド、3.7~4.8GHz)との比較だが、こちらでもコア数の差をものともしない3~11%の性能差でCore i9-11900Kが勝利。そもそもゲームは、CPUのコア数よりも少数スレッド動作時の動作クロックやIPCの高さがモノを言うプログラムが多い。そう考えると、インテルのスライドに入っている「パワフルかつ最適なバランス」というのは、ゲーミングPCに強く訴求したメッセージにも聞こえる。

Core i5-11600Kと「Core i5-10600K」の比較

 Core i5-11600K(6コア/12スレッド、3.9~4.9GHz)と、前世代の「Core i5-10600K」(6コア/12スレッド、4.1~4.8GHz)の比較も見てみよう。こちらは7~16%の性能アップと、Core i9対決よりも性能向上の度合いが高い。

ゲームメーカーと協力して、様々なゲームタイトルで最適化を図っている

 ここ数年はコア数で劣勢を強いられてきたので、単純なコア数差では性能差が出づらいゲーミングPC市場へのアプローチを強めてきたインテルだが、Rocket Lake-Sではさらにその印象が強まった印象だ。競合に圧勝しているノートPC向けCPUでもそうだが、ゲームメーカーと連携して最適化を図るなど、少数スレッド動作時の性能が重要なゲームにおいては、「絶対に王座は譲らない」という強い姿勢を感じる。

 情報の小出し感の影響か、打ち上げ準備に時間がかかっていた印象があるRocket Lake-Sだが、いよいよ3月下旬に発売する。空前のグラボ不足で逆風のただなかにある自作PC市場だが、果たしてそこを突き抜ける強い推力があるのかどうか……。レビューが待ち遠しい。

Core i5、Core i9、Core i7のBOX。グレードが上がるほど青味が強くなるようだ

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