GeForce RTX 3060速報レビュー!VRAM 12GB&Resizable BAR対応のメインストリームGPUを検証
文●加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII
2021年02月25日 23時00分
VRAM 12GBを搭載した新60番台
「GeForce RTX 3060」速報レビュー
NVIDIAのAmpereアーキテクチャーを採用した新GPU「GeForce RTX 3060」が、2021年2月25日23時(日本時間)をもってワールドワイドで販売解禁となった。本邦での販売も、26日より順次解禁される模様だ。このGPUの存在自体は今年1月のCES 2021で発表され、VRAMを12GB搭載するというスペックが話題になっていた。
RTX 3060の価格は北米MSRP(希望小売価格)で329ドルだが、国内の実売価格は税別5万円台中盤スタートになるだろうと筆者は予想している。現在PCパーツ業界は、新型コロナウイルスの影響や部材不足、そして仮想通貨マイニング熱の再加熱といった要因が重なり、史上希に見る“ビデオカード不足”の状況にある。加えて様々なコスト上昇が積み重なった結果、RTX 2060(2019年発売)の初値よりもがっつりと上乗せになるはずだ。
RTX系GPUの核心であるRTコアとTensorコアを備えることで、DXR(DirectX Raytracing)やDLSS対応ゲームにおけるパフォーマンスも向上している。GeForce GTX 1060やGTX 1660等のRTコア&Tensorコアを持たないGPUからステップアップするには手頃なGPUとなるだろう。
今回のRTX 3060に関しては、Founders Edition(FE)は用意されず、AICパートナーによるカードのみの供給となる。今回は幸運にもZOTAC製「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」を手にする機会に恵まれた。ただ今回はドライバーの提供タイミングが極めて遅かったため、RTX 3060の解説と基本的パフォーマンスの解説のみにとどめ、後日詳細なゲームパフォーマンス検証をお届けすることとしたい。
今回NVIDIAからレビュー用にお借りしたZOTACのファクトリーOCモデル「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」。原稿執筆時点(本稿公開日の朝7時)での価格は不明だが、税込み6万円程度まで行くかもしれない
メモリーバス192bitで12GB搭載&Resizable BAR対応
まずはRTX 3060のスペックをおさらいしておこう。2020年末に発売したRTX 3060 Tiは、GA104コアをベースにCUDAコアを減らしたものなのに対し、今回のRTX 3060はメモリーコントローラー数の少ないGA106コアを利用したものとなる。SM数は28基であるため、フルスペックGA106よりもSM2基分が無効化されている(おそらくフルスペックはQuadro向けだろう)。RTX 3080や3070はTuring世代の同格GPUに比べ、CUDAコアが2倍以上に増えていたが、RTX 3060はRTX 2060に対し1.86倍とやや控えめなCUDAコア増にとどまっている。
メモリーバス幅192bitはRTX 2060やGTX 1660、GTX 1060と同じだが、RTX 3060はメモリー搭載量が12GBに増えている。この12GB搭載の理由についてはRX 6700 XTへの対抗説が考えられるが、ライバルAMD陣営が多量にキャンセルしたGDDR6Xを引き取った結果という説もある。もちろん真実はNVIDIAの中の人しか知らないことではあるが、昨今の大作系ゲームではフルHDですら6GB以上確保しようとするものもあるため、12GB搭載という決断は多いに歓迎すべきだろう。
「GPU-Z」で評価用カードの情報を拾ってみた。ファクトリーOCモデルなのでブーストクロックは1807MHzにOCされている。メモリーバス幅192bitだが、搭載量が12GBと大きいのがRTX 3060の特徴
RTX 3060の存在が発表された直後は上位モデル(RTX 3060 Tiなど)よりもVRAMが多いことが話題になった。だが、上位GPUに比べCUDAコア数もメモリーバス幅も抑えられているため、VRAM 12GBのRTX 3060の方がパフォーマンスが良いのではと考えるのはやや早計だ。12GBが力を発揮しやすいのは4K(3840×2160ドット)以上の解像度だが、4KではCUDAコアの方が飽和するため、結局は上位GPUの方が性能は上になるだろう。ただし、メモリーのデータレートが15Gbpsと高いので、メモリーバス幅が効きにくいフルHD(1920×1080ドット)では、RTX 3060が上位GPUを食う可能性は十分に考えられる。
ゆえに、VRAM 12GBというスペックは特別にVRAMを消費するような状況(Mod盛りまくりなど)でない限りは、ゲームでの劇的な効果は期待しない方が良いだろう。ただ、CGレンダリングや動画編集など、VRAMを使いまくる系の用途にはRTX 3060は極めて有効であると考えられる。NVIDIAは8K(7680×4320ドット)動画編集などの用途向けにRTX 3090を出しているが、さすがにビデオカードに25万円(昨年よりも値上がりしている)は出せないという人には、RTX 3060は注目すべきGPUといえるだろう。
RTX 3060の設計・機能については既存のRTX 30シリーズと共通だが、RTX 3060ではPCI Expressの「Resizable BAR」に対応した点に注目しておきたい。この機能はAMDがRadeon RX 6800シリーズで導入した「Smart Access Memory」と同じものであり、VRAMへ巨大なデータを転送する際のボトルネックを解消してくれる可能性を秘めている。既存のRTX 30シリーズも、3月以降にvBIOS更新という形で対応するとのことだが、RTX 3060は最初からResizable BAR対応のvBIOSで出荷される。
ちなみに、Resizable BARを利用するにはマザーのBIOSをResizable BAR対応のものに更新しておき、さらにBIOS設定で有効化&CSMモジュールを無効化してUEFIブートというハードルがあるため、どんな環境でも利用可能、という訳にはいかない。AMDプラットフォームならX570/B550マザー、インテルプラットフォームならZ490マザー(まだ現物を手にできていないがZ590マザー等も対応すると思われる)が必要だ。
Resizable BAR対応BIOSを導入した後で「Above 4G Decoding」と「Resizable BAR Support」をEnabledに、「CSM Support」をDisabledにする必要がある
Resizable BARの設定を済ませた環境にRTX 3060を追加すると、デバイスマネージャーのリソースタブに「大容量メモリの範囲」という項目が出現する。同時にNVIDIAコントロールパネルの「システム情報」でも「Resizable BAR」が“Yes”になっていることを確認できるはずだ
仮想通貨マイナーと決別
RTX 3060を語る上で、仮想通貨マイニングの話題は避けて通ることができないだろう。昨今のビデオカード不足&価格上昇の原因の一端は、仮想通貨マイナーによる買い占めが担っているからだ。
だがNVIDIAはこれを良しとしていない。GeForceはあくまでゲーマーのためのものであると表明し、RTX 3060には仮想通貨マイニングの効率を落とす機能が実装されているというのだ。
この機能は、Ethereumマイニング時に使われるアルゴリズムが引き起こす独特なVRAMアクセスパターンをドライバーが検知すると、ハッシュレートを自動的に引き下げるというもの。NVIDIAによれば、今回Ethereumを名指ししているのは、現在GPUマイニングが可能な仮想通貨の中で最も収益が期待されるため、Ethereumのハッシュレートを引き下げることでGPU買い占めを抑制しようという狙いがあるという。
これは同時に、Ethereumマイニングとは違うアルゴリズムを使う仮想通貨マイニングに対しては対策していないことを示唆しているが、他の仮想通貨のアルゴリズムは今のGPU需要に大きく影響していないため、現時点ではEthereumのみに絞った対策にとどめているようだ。Ethereumマイニング時の特異なVRAMアクセスパターンを検出するので、ゲームや一般的なGPGPU用途には影響しないという点も憶えておきたい。
今回RTX 3060に導入されたハッシュレート制限機能は、ドライバー上で実装されているので無効化されそうな気がするが、実際は相当に難しいようだ。NVIDIAによればRTX 3060のシリコンとvBIOS、そしてGPUドライバーの間にはセキュアハンドシェイクが実装されており、この仕組みを破らない限りはドライバーを改変してハッシュレート制限を取り払うことはできないという。
いつかはこの仕組みが破られるかもしれないが、それまでは仮想通貨マイナーにとってRTX 3060は“収益性の良くないGPU”になるだろう。既存のRTX 30シリーズに対しこの機能を実装することはない(まず確実に訴訟で負けるだろう)が、今後NVIDIAが“SUPER”や“V2”のような新SKUを出して上位GPUにも同じ機能を提供することは十分考えられる(幸運にも市場にモノがないのでSKU移行は簡単だ)。
なおNVIDIAでは、RTX 3060のハッシュレート制限をかけた一方で、マイニング向けの新GPU「CMP HX」シリーズを先日発表するなど、仮想通貨マイナーのための施策も新たに用意している。いわばアメとムチのような異なる施策を用意することで、GeForceの買い占めを防ぐ考えのようだ。
↑RTX 3060のハッシュレート制限機能がムチとするならば、アメに相当するのが先日発表された新GPU「CMP HX」シリーズだ。グラフィック出力を持たず、マイニング向けに電力効率を重視した製品となる
検証環境は?
前置きはここまでにして、今回の検証環境を紹介しよう。ZOTAC製RTX 3060カードと比較するためにRTX 3060 Ti/RTX 2060 SUPER/RTX 2060のFE版、さらに旧世代60番台との比較用にGTX 1660とGTX 1060 FEを用意した。基本的にどのGPUもResizable BARを有効にした状態(RTX 3060以外は意味を持たない)で検証しているが、RTX 3060のみResizable BARを無効にした状態でも検証している。
また、ドライバーはRTX 3060以外はすべて検証時点における最新WQHL(GeForce 461.40)を使用している。
| 検証環境 | |
|---|---|
| CPU | AMD「Ryzen 9 5950X」(16コア/32スレッド、3.4~4.9GHz) |
| CPUクーラー | Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」(簡易水冷、280mmラジエーター) |
| マザーボード | GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」(AMD X570、BIOS F33c) |
| メモリー | G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」 (DDR4-3200、16GB×2)×2 |
| ビデオカード | NVIDIA「GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition」、 ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」、 NVIDIA「GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition」、 NVIDIA「GeForce RTX 2060 Founders Edition」、 ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 6GB GDDR5」、 NVIDIA「GeForce RTX 1060 Founders Edition」 |
| ストレージ | GIGABYTE「AORUS GP-ASM2NE6200TTTD」(NVMe M.2 SSD、2TB)、 Western Digital「WDS100T2X0C」(NVMe M.2 SSD、1TB) |
| 電源ユニット | Super Flower「LEADEX Platinum 2000W」(80PLUS PLATINUM、2000W) |
| OS | Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(October 2020 Update) |
RTX 2060を10〜20%上回る
では定番「3DMark」のスコアー比べから検証を始めよう。RTX 3060のみResizable BAR有効時と無効時の2通りでデータをとっているが、両者に差が出るのか注目していきたい。
前述の通り、RTX 3060はRTX 2060に対しCUDAコア数が1.86倍になったが、3DMarkのパフォーマンスを見る限りは、RTX 2060のせいぜい10%〜20%増程度にとどまっている。一番伸びたのはDXRを利用するPort Royalだが、これはAmpereではRTコアの世代が更新したことも効いている。
これまで発売されたRTX 30シリーズのような、Turing世代に対する圧倒的な力量差が感じにくいスコアーになっているのは、メモリーバス幅が狭く、ROPやテクスチャーユニットが削られているためだと推測できる。実際、CUDAコア数が少ないがROPやテクスチャーユニット数が多く、メモリーバス幅の太いRTX 2060 SUPERに対しては、わずかに下周るかほぼ同等のスコアーを出すにとどまっているからだ。
続いてはシステム全体の消費電力をチェックしよう。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、「3DMark」Time Spyデモ実行中のピーク値を“高負荷時”としている。消費電力の計測にはラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を利用した。
RTX 3060とRTX 2060 SUPER FEの消費電力はほぼ同レベルだが、ややRTX 3060の方が多い程度で、GTX 1060 FEから見ると約100W増になっている。この程度であれば500W電源で十分まかなえるので、電源ユニット更新を考えたくない人には好適なGPUといえる。
Resizable BARの効果はほぼ感じられず……
では実ゲームベースの検証に入ろう。今回は時間確保が難しい状況下であるため、RX 6800シリーズ検証においてResizable BARが効くと確認できている「Rainbow Six Siege」「Assassin's Creed Valhalla」「Red Dead Redemption 2」の3本に注目する。さらにDXR対応ゲームの代表として「Watch Dogs: Legion」の都合4本のゲームを用意した。それ以外のゲームについては続報をお待ちいただきたい。
まずは「Rainbow Six Siege」だ。APIはVulkan、画質は“最高”をベースにレンダースケール100%を追加。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測した。
まず平均fpsに注目すると、GPUの型番通りの序列になっていることが分かる。RTX 3060 Ti FEの平均fpsが飛び抜けて高く、続いてRTX 3060、次に3DMarkではRTX 3060に並んでいたRTX 2060 SUPER FE、そしてRTX 2060 FE〜GTX 1060 FEまで順序よく並んでいる。フルHDの結果のみに注目すると、RTX 3060はGTX 1060 FEの約2.3倍弱、GTX 1660の約1.7倍弱のパワーであることが分かる。旧世代60番台、特にGTX世代から乗り換えれば、かなりのパワーアップが期待できるはずだ。
Rainbow Six SiegeはRX 6800 XT+AMD環境でResizable BARのメリットが確認できたゲームだが、RTX 3060+AMD環境ではResizable BARを有効にしても効果が観測できなかった。ただ3DMarkでスコアーが非常に近かったRTX 2060 SUPER FEに対しては約13%、RTX 2060 FEに対しては約25%(ともにフルHD時)上回っており、Ampereアーキテクチャーの強さ(FP32専用ラインとINT32/FP32併用ラインを分けた、など)が上手く機能していることが分かる。
そして何より面白いのは、上位であるRTX 3060 Ti FEとの対比だ。平均fpsにおいてはCUDAコア数やメモリーバス幅等で勝るRTX 3060 Ti FEに終始後れをとるものの、最低fpsは常にRTX 3060が上回る。Rainbow Six SiegeのVRAM消費量はそれほど多くないため、RTX 3060に搭載されているVRAMのクロックが高いことが原因と考えるのが妥当だ。
続いては、RX 6800シリーズの検証においてResizable BARの効果が非常に大きいことが確認できた「Assassin's Creed Valhalla」だ。画質は“最高”とし、ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測した。
Assassin's Creed ValhallaではRTX 3060のパフォーマンスはRTX 2060の約20%上、RTX 3060 Ti FEの約14%下となった(いずれもResizable BAR有効時のデータを基準に算定)。そしてResizable BAR有効時は無効時に比べ、フルHD時で平均3fps上回るデータを出しているが、RX 6800シリーズでの結果(おおよそ10〜20%アップ)を考えると誤差程度の差でしかない。
何らかの不具合でResizable BARが正しく働いていない可能性も残されているが、このデータからAssassin's Creed ValhallaでResizable BARの効果が大きいという検証データは、RX 6800シリーズのアーキテクチャー(恐らくInfinity Cache)と上手く噛み合った結果出たものであり、今のGeForceではあまりメリットがないものという推測ができる。
もちろん、RTX 3060ではResizable BARのボトルネックを解消する前に、狭いメモリーバス幅の方がボトルネックになっているという仮説も捨てきれないため、今後登場するRTX 30シリーズ用のResizable BAR対応vBIOS登場まで、結論は棚上げすべきだろう。
最低fpsの挙動に注目
続いて「Red Dead Redemption 2」だ。画質(精密度)は最大とし、ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測した。
Red Dead Redemption 2のベンチマークは非常に最低fpsがブレやすいことが経験則で明らかになっているが、RX 6800シリーズ検証においてはResizable BARを有効にすると最低fpsのブレがピタリと止まることが分かっている。
この観点からデータを眺めると、RTX 3060ではResizable BARの有効性は感じられないどころか、むしろ悪化しているケースもみられた。今回のデータは3回計測し最低fpsが中央値を出した回のデータを計測しているが、RTX 3060でResizable BARを有効にしてもブレが止まるどころか、低めで安定したのだ。ただ、前述の通りResizable BAR周りの実装の不具合である可能性やメモリーバス幅の狭さに起因する可能性もあるので、今回はこういうデータが出た、程度の表現にとどめたい。
最後に、DXR対応ゲームのベンチマークとして「Watch Dogs: Legion」のパフォーマンスを計る。APIはDirectX 12とし、画質“最大”をベースにレイトレーシング“最大”設定とDLSS“高性能”、さらに精密度“100%”を追加。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。
まず平均fpsに注目すると、RTX 3060はRTX 3060 Ti FEの12〜17%下に位置しており、VRAM消費量の多いゲームであっても、CUDAコア数の多いRTX 3060 Ti FEを上回るほどのものではない、ということが分かる。だが最低fpsを見ると、RTX 3060がわずかにRTX 3060 Ti FEを上回っている。これはVRAM搭載量の恩恵を完全に否定はできないものの、バス幅が狭い割に高データレートのGDDR6を搭載したメリットが効いたためではないかと筆者は考えている。
そしてResizable BARだが、Watch Dogs: Legionでもわずかではあるが平均fpsを上乗せする効果が確認できた。ただ差はあまりにも小さい。
GPGPUと仮想通貨マイニングで差は出るか?
これ以上のゲーム検証は続報をお待ちいただくとして、次はRTX 3060の技術的なトピックである仮想通貨マイニング対策について、簡単に検証していきたい。RTX 3060に実装されたハッシュレート制限は、Ethereumマイニングにターゲットを絞ったものだと解説したが、本当にEthereumのハッシュレートが渋くなっているのかをチェックする。Ethereum以外の仮想通貨もマイニングし、ハッシュレートとGPUの関係をみれば、ハッシュレート制限がどういうものなのか見えてくるはずだ。
今回はEthereumとErgoの2種類の仮想通貨をマイニングしてみた。EthereumとErgoはnanopool.orgで配布している「nanominer-cuda11」を使用した。パラメーターはデフォルト設定のままで10分マイニングし、その際の平均ハッシュレートを比較する。同時にツールが報告するGPUパワー(≒GPUの消費電力)も比較する。
このグラフを見ると、確かにRTX 3060のハッシュレートは他のGPUに比べて下がっている。また、この傾向はEthereumだけでなく、Ergoにも適用されているようだ。NVIDIAの謳う“Ethereumマイニングのハッシュレートを制限”というのは、単にEthereumをマイニングしているかどうかという訳ではなく、もっとディープな部分の動きを見て制限を行なっていることが分かる。そしてGPUパワーのグラフから明らかな通り、ハッシュレート制限はパワーリミットを大幅に引き下げることで実現しているようだ。
※記事掲載当初、本検証におけるBitcoinマイニング時のデータも記載しておりましたが、筆者の認識の誤りによるもので、Bitcoinマイニングのデータではありませんでした。Bitcoinマイニング時の数値、およびその考察は誤りとなります。記事内容を訂正し、謹んでお詫び申し上げます。(2021/5/27 21:00 編集部追記)
しかしこのハッシュレート制限機能は本当にマイニング以外のGPGPU用途には影響が出ないのか? そもそもRTX 3060のGPGPU性能が低いだけではないのか? という疑問も出てくる。そこで「LuxMark」および「V-Ray Benchmark」を利用し、GPUを利用したレンダリング処理時の性能を比較してみた。
これらの結果を見ると、RTX 3060のGPGPU性能は決して悪くない。特にV-Ray Benchmarkでは、CUDAでRTX 2060 SUPER FEのおよそ86%増のスコアーを出しており、CUDAパフォーマンスが欲しいユーザーにとっては極めて魅力的なGPUといえる。
もちろん、VRAMのアクセスパターンが仮想通貨マイニングに酷似していれば、ドライバーにより性能が絞られてしまう可能性は十分考えられる。だが制限機能はドライバー側の実装なので後からでも修正が効く。この点は高く評価すべきだろう。
まとめ:やや割高感もあるがRTXシリーズの新ベースライン
ただ問題は出荷状況にある
今回の速報レビューはここまでだ。まだ見ておきたいゲームの性能も残っているし、詳細なTBP(Total Board Power)の分析も残っている。そしてDaVinci Resolve等のクリエイティブ系アプリでVRAM 12GBがどの程度効くのか等についても続報でお届けしていきたい。
今回検証した範囲で言えるのは、RTX 3060の性能はRTX 3080や3070登場の時のようなインパクトは感じられない(RTX 3060 Tiレビューの時も同じことを書いた記憶があるが……)ということ。その理由はCUDAコア数があまり増えてないためもあるし、メモリーバス幅が192bitと狭く、描画処理のスループットを支えるROPユニット等も少ないためである。
3DMarkではRTX 2060 SUPER相当の性能だったが、ゲームではRTX 2060 SUPERを大幅に上回るシーンも見られた。だがRTX 3060に買い換えるメリットを感じたいのであれば、RTX 2060がボーダーラインとなるだろう。RTX 2060から比べると、VRAMも倍増し、DXRのパフォーマンスも大きく向上する。RTX 2060ではかなり設定を下げなければならないようなシーンでも、RTX 3060ならマイルドな設定下げ程度で対応できるだろう。GTX 1660やGTX 1060(あるいはそれ以下)ならば、圧倒的な性能差を感じることができる。特に高フレームレートでのプレイを期待しているゲーマーや、DXR対応ゲームを楽しみたいゲーマーにはオススメだ。
しかしRTX 3060の最大の懸念は、価格と今後の入荷状況だ。様々なコストが上昇している情勢とはいえ、RTXシリーズ入門用のGPUとしてはまだ割高な印象は拭いきれない。そしてGPUの入荷状況がRTX 3060の登場で劇的に改善するとは考えにくい。仮想通貨マイナーによる買い占め圧が緩和される可能性があるとはいえ、旧世代のGPUも再供給という噂の流れる状況を一変させる力があるとは考えにくい。
世界的に新型コロナウイルス対策による行動制限が解除されるまでは、RTX 3060も既存のRTX 30シリーズ同様に入荷は渋くなるという読みをした方が無難だ。つまり、今後さらに製品価格も上昇することを警戒せねばならない。RTX 3060が欲しければ見た瞬間に買え、が筆者からできる最良の助言だ。
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