KDDI「povo」テザリング無制限のトッピングに注目

文●山口健太 編集● ASCII

2021年01月25日 09時00分

KDDIの「povo」は音声かけ放題なし、トッピングの追加など新たな方向性を示した

 1月13日、KDDIが発表した新料金プラン「povo(ポヴォ)」は、音声かけ放題を別にすることで2480円を実現。24時間のデータ使い放題など「トッピング」を追加できることから、変化に強い新時代の料金プランとして独自の魅力があります。

■「音声不要」なら安く使える、トッピングにも期待

 povoの特徴として、最初に注目を浴びたのが音声かけ放題が別料金である点です。KDDIは、20歳未満の若い世代は6割以上が月に10分未満しか音声通話を利用しないとの数字を挙げています。音声かけ放題が不要なら、ドコモやソフトバンクの2980円プランより安く使えるのがメリットといえます。

音声かけ放題を別にすることで月額2480円(税別)を実現した

 若い世代が音声通話に使っているのは、LINEなどのアプリ通話です。電話番号を知らない友達でも、LINEでつながっていればアプリで通話ができます。音声の需要はあっても、携帯電話の音声通話は使われていないという実態に即した料金設計といえます。

 もう1つの特徴が「トッピング」機能です。音声かけ放題やデータ容量を必要に応じて追加することで自分好みのプランを作れるというもので、将来的に動画やSNSの使い放題といったトッピングの構想も語られました。

 割引適用前の料金を明示すること、期間限定の割引を廃止するなど、分かりにくいとの声があった点も改善されています。auの大容量プランやUQの値下げも同時に発表したことで、2020年末の「炎上」で落ちた評判を取り戻しつつある印象です。

■改めて注目したい「無制限」の魅力

 povoのトッピングとして面白いのが、200円で追加できる「24時間データ使い放題」です。スマホ本体だけでなく、テザリングでも使い放題とのことから、PCやタブレットをau回線につなげる用途にも対応できます。

「24時間データ使い放題」のトッピングが新しい

 KDDIは具体的な利用例として、動画の「一気見」やオンライン授業を挙げています。たとえば平日はあまり家にいない人の場合、土日や祝日だけトッピングで無制限にすることで固定回線が不要になり、毎月の通信費を大きく節約できる可能性があります。

 こうしたデータの使い放題は、単に「大容量を使える」だけでなく、「容量を気にする必要がない」点もメリットです。これまでモバイル回線ではデータを節約することが半ば常識となっていましたが、今後はモバイルでも無制限が当たり前という世代が増えていくはずです。

 とはいえ、モバイルの帯域にはまだ限りがあり、どのキャリアも特定の人が占有しないよう対策をしています。povoにも「混雑時や動画などへの通信制御があります」との注釈があることから「使い放題の中身」はサービス開始後に検証したいところです。

 また、auの上位プラン「使い放題MAX」ではテザリングの容量制限が残っています。テザリングの使い放題はインフラへの負荷が大きく、キャリアによっては対応が難しいとみられていましたが、そこにpovoが挑戦したのは注目といえるでしょう。

■突発的なテレワークやオンライン授業にも対応できる

 povoを始め、各キャリアのオンライン専用プランでは「アプリの活用」が進みそうです。すでにキャリアのさまざまな手続きはWebサイトからできるよう整備されていますが、それがさらに進んで、契約からサービスの変更、サポートまでがアプリで完結することになりそうです。

 3月のサービス開始に向けて、各キャリアはアプリやWebサイトを作り込みを進めています。その中でもKDDIは、シンガポールで実績のあるCircles Asiaと組んで2020年10月から開発を進めており、使い勝手の良さに期待が高まっています。

povoのアプリ開発はシンガポールのスタートアップと協業している

 昨今の社会情勢により、突発的にテレワークやオンライン授業の予定が入るなど、生活スタイルが急変することも珍しくありません。ワーケーションをしたいのにWi-Fiが遅くて仕事にならないとか、固定回線がない自宅から授業を受けなくてはならないなど、新たな課題も生まれています。

 こうした変化に耐えられる料金プランを選ぼうとすると、これまでは高額の上位プランになりがちでした。しかしアプリでトッピングを追加できるpovoは、ムダを省きつつ変化にも強い「ニューノーマル」な料金プランといえるでしょう。

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