観たい動画が集まる、グーグルの新「Chromecast with Google TV」レビュー

文●山本 敦 編集●飯島恵里子/ASCII

2020年11月25日 12時00分

2020年11月25日発売開始、グーグルの最新メディアストリーミング端末「Chromecast with Google TV」。価格は7600円(税込)

 グーグルがメディアストリーミング端末「Chromecast with Google TV」を発売する。テレビやモニター、プロジェクターなど映像機器のHDMI端子に接続して、Wi-Fi経由で動画に音楽などアプリを媒介にしながら様々なコンテンツが楽しめる。グーグルのオーディオ・ビジュアル系スマートデバイスをレポートしよう。

ホーム画面と専用リモコンを揃えて大幅リニューアルを遂げたChromecast

 Chromecastシリーズは、2014年に日本上陸を果たしたグーグルのスマートデバイスだ。ChromecastはWi-Fiネットワークに接続してから、テレビなどHDMI端子を持つ映像機器につなぐ。続いて、同じネットワーク上にあるスマホやタブレットから無線接続によりChromecastへコンテンツをキャストすると、テレビの大きな画面で楽しめる。発売当時はテレビやプロジェクターを手軽に「スマート化」できるデバイスとして注目された。初代機は発売時の販売価格が4200円(税別)とすごく安価だったことから、当時筆者のまわりにはこれに飛び付いた人も多くいた。

 Chromecastは基幹ソフトウェアに、グーグルのテレビ向けOSであるAndroid TVを採用している。現在はWi-Fi機能とAndroid TVを内蔵するテレビが増えたので、Chromecastがなくても、そしてスマホからキャストしなくてもテレビ単体でアプリをインストールして動画・音楽配信にゲームなどが楽しめる環境が整った。筆者宅のテレビは、数年前にソニーのブラビアがAndroid TVを搭載しはじめた頃に買った、4K/HDR対応のスマートテレビだ。

筆者宅のソニー“ブラビア”「X8300D」シリーズ。2016年発売のモデルながらAndroid TVを搭載。Googleアシスタントによる音声操作にもアップデートで対応した

 グーグルのAndroid TVを採用していなくても、いま日本国内で買えるテレビメーカー各社のスマートテレビの多くがYouTubeやNetflixなど動画配信を見たり、音楽配信を受けてテレビのスピーカーで聴くことができる。もはやChromecastというデバイスの果たすべき役割は達成したものと思っていたら、今年グーグルが4K/HDR対応の新しいChromecastを発売するという知らせを受けて筆者は面食らった。

 さらにそのChromecastには「Google TV」という、デバイスのユーザーとコンテンツの出会いをさらに促進するための新しい“ホーム画面”が搭載されるという。そしてスマホやタブレットなどモバイル端末からキャストしなくても、Googleアシスタントの音声検索も含めてChromecastの本体が操作できる専用リモコンも用意された。

楕円形になったChromecast with Google TV。HDMIケーブルは本体に固定されている

本機専用のリモコンを同梱。黒いボタンをクリックするとGoogleアシスタントが起動する。電源ボタンの隣にマイクがある

リモコンの側面にボリュームのアップダウンボタンがある

 映像は4K/60p/HDR、音声はドルビーアトモスを含むサラウンドフォーマットに対応する。デザインは1つ前の世代のChromecastから大きく変わってポップな印象になった。カラバリは3色(ホワイト系、ピンク系、ブルー系)を揃える。本体はテレビの背面にあるHDMI端子に接続して、ぶら下げながら使えるように55gと軽量・コンパクトにした。

カラーバリエーションはスノー、サンライズ、スカイの3色

 以上が2020年11月25日に7600円(税込)でグーグルが発売するChromecast with Google TVの概略だ。

 Android TV内蔵の機種を含めて、スマートテレビが広く普及しつつある今、Chromecast with Google TVはどんなユーザーに役立つデバイスになるのだろうか。

Chromecastの初期セットアップにはモバイルのGoogle Homeアプリが必要になる

Chromecastに実力を発揮させるために、知っておきたい
初期設定のイロハ

 新製品のChromecast with Google TV(以下、Chromecast)も初期セットアップにはAndroid、またはiOS/iPadOSを搭載するモバイル端末が必要だ。

 設定の手順はシンプルだが、普通のテレビのように梱包を開けて電源ケーブルとアンテナ線をつなぎ、チャンネル設定を済ませればすぐに何かしらの番組が観られるという“スマホレス”な使い方ができるデバイスではない。もしChromecastをITに不慣れな家族にプレゼントする場合は、電話などでアフターケアをした方が良いかもしれない。

テレビのHDMI端子にChromecastを接続。USBアダプターで電源を取る

 リモコンはパッケージに同梱されている単4電池2本を、Chromecast本体にはUSBアダプターを使って電源を供給する。Chromecast本体はテレビのUSBポートから給電できるものと期待していたが、試してみたらこれが非対応だった。仕方ないのでコンセントの口をひとつChromecastのために割いた。

Chromecastの新しいホーム画面。Google検索のほか、トップにグローバルメニューが並ぶ

 ChromecastはHDMI-CECに対応するデバイスなので、テレビのCEC機能が使えるHDMI端子に装着すると、互いのリモコンにより電源のオン・オフ、音量のコントロールなど一部操作が連動する。

「ディスプレイと音」の中にある「コンテンツと一致」をオンにする

 初期設定を完了後、Chromecastの詳細設定と変更は画面右上に表示されるユーザーのGoogleアカウントのアイコンを選択、表示される「設定」で実施する。ひとつ「ディスプレイと音」の中にある「コンテンツと一致」の選択がオンになっていることを確かめておこう。Chromecastを接続するテレビがHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)の高画質コンテンツとSDR(通常画質)の映像を正しく認識して表示するために必要な場合があるからだ。

ホーム画面にはユーザーにおすすめの動画や便利なアプリなどが並ぶ

見たくなる動画がGoogle TVに集まる
テレビ放送を楽しむ方法は?

 Chromecastを起動すると、Google TVのホームページとしてユーザーに「おすすめ」のコンテンツが並ぶ。ユーザーの視聴履歴に基づいて興味を引きそうなコンテンツを並べる「あなたへのおすすめ」のほか、ユーザーが端末にインストールしているアプリ、サブスクリプション登録を済ませて視聴を楽しんでいるVOD映像配信サービスの中から「Googleで人気」の作品などが「おすすめ」に集結するようだ。

 トップに表示されるグローバルメニューの中から、「映画」と「アプリ」については名前の通りの機能だが、「番組」については少し説明を補足しておきたい。

「番組」の中には元がテレビ番組のものであり、現在VODプラットフォームで配信されているコンテンツが集められる

 アメリカではYouTube TVという、ChromecastやPC、スマホなどのデバイスでテレビ放送が楽しめるストリーミングサービスがあって、Chromecastでテレビのライブ放送を視聴したり、録画して後から見ることができる。日本には同じサービスが上陸していないため、アメリカで新しいChromecastに実装されている「Live」「Shows」のタブの役割をやんわりとこの「番組」が肩代わりしている。中をのぞくとテレビで放送されたドラマやアニメなど、現在VODサービスで配信されている「テレビ番組」が元のコンテンツが一望できる。

TVerアプリから国内民放で放送されたテレビ番組の見逃し配信を視聴できる

 もしもChromecastでテレビ番組を楽しみたいのであれば、民放放送の見逃し配信サービスが利用できる「TVer」やAbema TVなどのアプリが使える。あるいはそもそも日本には高機能なビデオレコーダーが様々なメーカーから発売されているので、VODが快適に楽しめるChromecastと上手に併用したい。

ライブラリの中の「観たいものリスト」にはユーザーがブックマークを付けた興味のある作品が並ぶ

 グローバルメニューの「ライブラリ」には「観たいものリスト」として、ユーザーがブックマークを付けた作品が集められる。Chromecastから、またはユーザーのGoogleアカウントでログインしているスマホやタブレットのブラウザから検索してヒットした作品情報から、ブックマークを付けるとChromecastと連動する。

スマートフォンもGoogle検索の結果にブックマークを付けられる

リモコンによるGoogleアシスタントの起動がとても速い

Googleアシスタントの音声検索も含めてリモコンは快適操作

 専用リモコンはBluetoothでChromecastの本体に接続される。ペアリングはあらかじめ済んでいるので、ユーザーが設定を気にする必要はない。

 リモコンのボタン操作はとてもレスポンスが良く快適だ。Googleアシスタントボタンを押し込むと音声検索が素速く起ち上がる。Googleアシスタントからの応答音声はないが、やり取りはスムーズにできる。

 GoogleアシスタントはGoogle TVのどの画面からでもボタンを押すと起動して、音声検索でコンテンツが探せる。YouTubeなどのアプリの中に入ってからも同様にGoogleアシスタントによる音声検索の動作は速くて正確だ。

左が筆者宅のAndroid TVを搭載するスマートテレビのリモコン

 ChromecastがテレビのHDMI CEC対応の端子に接続されていれば、テレビの電源がオフになっている状態からでもリモコンのGoogleアシスタントボタンを押しながら、例えば「YouTubeでネコの動画を再生して」と発話すると、テレビが起動してGoogle TVの画面に切り替わり、YouTubeでネコの動画を検索した結果のリストが画面に表示される。

 Googleアシスタントを内蔵する筆者宅のスマートテレビでも、音声操作でYouTubeの動画を検索・再生できるが、テレビの電源をオフにした状態からではChromecastと同じことはできなかった。

Android TVを搭載するブラビアX8300Dシリーズで、付属するリモコンから動画を検索

Chromecastの音声操作で、先ほどのAndroid TVの条件と揃えて音声検索を実施すると、Chromecastの方がレスポンスの改善を実感できた

Android TV搭載テレビと比べた
Chromecastのメリットとデメリット

 Googleアシスタントの音声検索については、筆者宅にある2016年発売のスマートテレビと比べものにならないほど、新しいChromecastの方が全般に速さと正確さが勝っていると感じる。Android TVを搭載する最新のスマートテレビと比べれば、その差は縮まるのかもしれないが、現在のスマートテレビの操作感に不満を感じている方は7600円で買えるChromecastを試してみる価値が大いにある。

 ただ、Chromecastのリモコンからテレビのチャンネルを変えたり、テレビの本体設定にはアクセスできないので、必然部屋にはテレビとChromecastのリモコンが2つ置かれることになる。リモコンをまとめられることがAndroid TVを内蔵するテレビのメリットだったりもするので、この点はトレードオフになる。

 また筆者がソニーが2020年に発売したAndroid TVを内蔵する最新のブラビアシリーズのスマートテレビについて調べた限りでは、ブラビアの場合は「見たいコンテンツの横断検索」がVODサービスに限らず、番組表(現在放送中のテレビ番組)と外付けUSB-HDD等に録画した過去番組にも横串を刺しながら、Googleアシスタントを使って行える。

 さらにHDMI接続しているBDレコーダーに録りためたコンテンツも、テレビと同一のホームネットワークに接続すれば横串検索の結果に並ぶようだ。自身が“テレビ好き”であることを自覚している方は、新しいスマートテレビとビデオレコーダーの組み合わせでどんな便利な機能が使えるのかを先によく調べておくべきだ。その後、VODや音楽サービスをより快適に楽しむためにChromecastが必要か決めればいい。

グーグルのスマートスピーカー、Nest Audioに音声操作で話しかけて、Chromecastで見たい動画を呼び出すこともできる

Nestシリーズのスマートスピーカーと連携してできること

 Chromecastは、Googleアシスタントを搭載するNestシリーズのスマートスピーカーによる音声操作とも連携する。例えばスマートディスプレイのGoogle Nest Hubに話しかけて、ChromecastからYouTube、Netflix、Spotifyなどのアプリでコンテンツを指定して再生することもできた。

アプリからスピーカーをグループ化してマルチルーム再生が楽しめる

 Google Homeアプリから「スピーカーグループ」を作成すると、Chromecastを接続したテレビの内蔵スピーカーも含めて、Nestシリーズと同じ音楽を複数の部屋で鳴らせるマルチルームオーディオ再生ができた。それぞれの音量コントロールは画面を搭載するNest Hubか、スマホのGoogle Homeアプリでスライダーを見ながらバランスを調整する方法が楽だ。同様にスピーカーグループをテレビが置いてある部屋から俯瞰できる機能がChromecastにもほしい。そしてChromecastを接続しているテレビの画面でも、Nest Hubのように宅内にあるスマート家電の動作ステータスを確認できる機能があればなお良いと思う。ぜひアップデートで追加してもらいたい。

Google Nest Hubの画面からグループ化されたスピーカーのボリューム設定や動作状態が確認できる

 Nestシリーズのスマートスピーカー連携については、Chromecastで再生している映像の音声をより音の良いNestスピーカーで聴くことができるのかが気になるところだ。答えは残念ながら現在時点では「ノー」のようだ。先ほど紹介したスピーカーグループを作成しても、聴けるのは音楽配信などオーディオオンリーのコンテンツに限られる。

Chromecastの設定から「リモコンとアクセサリ」に入るとBluetoothオーディオ機器がペアリングできる

 もしも近い使い方を試みるのであれば、Chromecastの設定から「リモコンとアクセサリ」に入るとBluetoothオーディオ機器がペアリングできるので、Nestシリーズのスマートスピーカーや、そのほかのBluetoothオーディオ機器をBluetoothでペアリングしてChromecastで再生するコンテンツの音を聴く手がある。

Google Pixel BudsやNest AudioなどBluetoothオーディオ機能を搭載する機器のペアリングが可能だ

 ただ、この場合は若干リップシンクの遅延(映像と音声のズレ)が発生する。またヘッドホンやイヤホンを使う場合はBluetoothオーディオの音声をユーザーが独占してしまうため、自身がイヤホンを着けてキッチンで作業をしながら、リビングにいる家族と同じ映画やドラマを見て楽しむという使い方ができない。

Chromecastにログインしているユーザーごとにアカウントが使い分けられるようになると、ユーザーのプライバシーが守られるのでより安心感が高まる

ソフトウェアアップデートにより
Google TVの最新機能が体験できるデバイスに期待

 Chromecastは、自宅にあるチューナーレスのPCモニターやプロジェクターを使って、週末などに映像コンテンツを楽しむためのシアタールームを作りたい人にもおすすめできるデバイスだ。本体が軽くてコンパクトなので、電源さえ確保できれば複数の映像機器に挿し替えながら使える。

 アカウントを登録したユーザーに「おすすめ」の動画をレコメンドしたり、視聴履歴、観たいものリストからユーザーの気になるコンテンツをプッシュしてくれるアルゴリズムもよくできていて、使いやすいと思う。反面、家族が集まるリビングルームのテレビにChromecastを設置してしまうと、例えば子どもには見せたくないコンテンツも一緒に表示されて困ることがある。家族間のプライバシーも尊重しながら使えるように、マルチユーザーアカウントを登録して切り換えながら使える機能や、または一定の年齢以下の子どもには閲覧できるコンテンツを制限するペアレンタルロック機能も今後追加するべきだろう。

 Google TVは近い将来にはAndroid TVを内蔵するテレビにも、そのままアップデートにより追加搭載されることになるかもしれない。同時にスマートテレビの過去の進化を振り返ってみても、リモコンや音声操作はさら良いものになるはずだ。でもきっと、Chromecastは今後もソフトウェアアップデートによりGoogle TVの最新機能がいち早く体験できるグーグル純正のスマートデバイスとして、ユーザーを飽きさせることなく楽しませてくれる魅力的なデバイスになると思う。

※この記事に使用した機器

・メディアストリーミング端末:Chromecast with Google TV(Android TV 10)
・スマートフォン:Google Pixel 5(Android 11)
・スマートスピーカー:Google Nest Audio(ファームウェアバージョン 231584)
・スマートディスプレイ:Google Nest Hub(ファームウェアバージョン 229149)

 

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