フレンチスポーツ・アルピーヌ「A110S」はオシャレと走りが両立している!

文●栗原祥光(@yosh_kurihara) モデル●星野 奏(@hoshino_kanade_)

2020年08月29日 12時00分

 久々の連載再開です。スポーツカーが大好きな美人歯科衛生士兼モデルである星野奏さんに、国内外のスポーツカーを診察してもらうこの連載。その連載当初から個人的に「ぜひ乗ってもらいたい」「絶対に似合う」と思っていたクルマがありました。それはフランス、アルピーヌが創るピュアスポーツカー「A110」。実にエレガンスな1台です。

アルピーヌA110 Pure(804万6000円~)

 そのアルピーヌA110に高性能ヴァージョン「A110S」が、今年日本上陸をはたしました。これは好機ということで星野先生にクリニックしてもらいました!

アルピーヌA110S(899万円~)

往年の名車・A110のオマージュ

 アルピーヌの名を聞いてトキメキを覚えるのは、おそらく昭和生まれの人。平成生まれの星野先生は「初めて聞くメーカーです。何て読むんですか? アルパイン? アルペン?」とアルピーヌをご存じありませんでした。それもそのハズ、アルピーヌは1956年にフランスのレーシングドライバーで、ルノーのディーラーを経営していたジャン・レデレが興したメーカー。当初はルノーのチューンナップおよびレースバージョンを数多く手がけていました。

アルピーヌA110(オーナーの許可を得て撮影・掲載)

アルピーヌA110のエンジン。とてもコンパクトな4気筒エンジンだ

 そのアルピーヌの名が一気に広まったのは、1963年に登場したコンパクトな2ドアクーペ「A110」。車体の中心軸に鋼管を配したバックボーンタイプのシャーシに、FRP製モノコックを載せた800kg程度のボディーに、1100~1600ccというコンパクトな直4エンジンをリアに配置したA110は、モンテカルロをはじめとする主要なヨーロッパラリーを席巻。そして1973年にはWRC(世界ラリー選手権)の初代コンストラクターズチャンピオンに輝きました。

アルピーヌA110のサイドビュー

 現代に蘇ったアルピーヌA110は、ボディーサイズは86/BRZとほぼ同じでありながら、車重は1110kgと86/BRZと比べて100kgほど軽量です。エンジンは約250馬力を発する1.8リットル直4ターボ型で、それを運転席後方にミッドシップマウント。7速DCTの組み合わせです。A110Sは、そんなA110を約300馬力へとパワーアップし、サスペンションやスタビライザーを強化。そして天井をカーボンにして低重心化を図ったモデル。価格は899万円で、A110のPureエディションと比べると約90万円アップ。ライバルはズバリ、ポルシェ「ケイマン」のハイパフォーマンス版「ケイマンS」。あちらも4気筒のミッドシップで、車両価格もほぼ一緒です。

美しい曲線を描くボディーラインと星野先生のマリアージュ

 美しいボディーラインは初代アルピーヌをオマージュしたもの。それはA110Sと同じです。「このデザイン、とても可愛いですね」とトキメキを覚える星野さん。「優しい雰囲気がありますね。あとゴテゴテしていないのもいいですね」と気に入られたご様子です。「この色も面白いですね。白というか、グレーというか。スポーティーグレードというと、真っ白いボディーに赤いラインというのが定番ですけれど、同じ白でも落ち着いていて、それでいて印象の残る色見です」。A110Sは一見、何も変わっていません。ただよく見ると、ALPINEやAのエンブレムなどが光沢のあるシルバーからブラックに変わっている程度。このセンスがオシャレ大国のフランスらしいです。

ルーフ素材がカーボンであることに驚く星野先生

 カーボンルーフを目ざとく見つけた星野先生。「スポーツカーというとカーボンというイメージはありますよね。カーボンボンネットはよく見かけますけれど、カーボン天井はなかなかないかな。でも絶対に効果ありますよねコレは」

フロントのトランクスペース

リアのトランクスペース(写真はアルピーヌA110 Pure)

 収納は気になるところ。アルピーヌA110Sの収納は、フロントとリアの両方に用意されています。フロントはバックパックが2個、並べて入る程度の容積。リアは機内持ち込みサイズのスーツケースがギリギリ1個入る程度です。「これでゴルフは行けないんですね。そこはちょっと残念ですけれど、後ろにエンジンが載っていますから仕方ないかな」

アルピーヌA110のエンジン

エンジンは横置きにマウントされている

エンジンが見れないためサービスショット

リアまわり。マフラーはセンター出しで、その両脇にディフューザーを配置。床面はフルフラットとのことだ

アルピーヌA110Sのリアまわりを見たところ。リアウインドウ下部に放熱用のエアーアウトレットが設けられている

 さて、エンジンを見ようとした星野先生。ですが残念ながら見ることは叶いませんでした。中を見るにはあれやこれや板を外さないとダメで……。取材時は雨が降っていたこともあり、諦めました。

アルピーヌA110Sのホイールとブレーキシステム。タイヤはミシュラン(プロパイロットスポーツ4)の専用品を採用する

 ブレーキはベンチレーテッドディスクにブレンボキャリパーの組み合わせ。サイドブレーキは電子式で、ブレンボに電子サイドブレーキに対応するリアキャリパーがなかったことから、アルピーヌA110のために専用設計させたとか。ちなみにタイヤサイズはA110と比べて大型化しているようです。

オシャレでカッコいい! この室内はイイ

アルピーヌA110Sの車内に笑顔の星野先生

 フランス車の車内というと質実剛健なところがありますが、アルピーヌA110のそれは所有欲を満たすばかりか、このクルマでしか味わえない、フレンチラグジュアリーが魅力。とはいえ、ピュアスポーツカーの高性能版であるA110S。軽量化のため、内装ドンガラでだったりロールバーでガチガチかもと身構えたのですが、そんなことはありません。快適にサーキットまで行って、スポーツ走行を楽しんで、そのまま帰れるという1台に仕上げられていました。

 ステアリングもまたイイ感じ。ハンドルにスポーツモードボタンがあるのも気分を盛り上げます。メーター類は液晶モニター式で、指針式を表示。ちなみにバック時はモニターにもなります。「色使いがトリコロールなのがフランスらしいですね」と星野さん。

アルピーヌA110Sの車内

アルピーヌA110Sのメーターまわり

アルピーヌA110Sのペダルまわり。大きなフットレストが印象的だ

特注のフルバケットシート

特注シートはサベルト製だ

 シートはサベルト製のフルバケット。フルバケットシートの形状そのものはA110と同じですが、A110S専用の素材として「Dinamica」という人工スエードが使われています。高級スポーツカーに使われる人工スエードといえば、ウルトラスエード=アルカンターラ(東レ)が広く知られていますが、こちらは旭化成の傘下であるイタリアのDinamica Miko社が供給するもの。アルカンターラと比べて生地が薄い傾向があります。A110がフルバケットシートを採用したのも軽量化のためですから、おそらく軽量化ゆえにこの素材を用いたのでしょう。ちなみにDinamicaはピラーや天井にも使われています。

 「少し乗り降りしづらいですけれど、座ってみると幅が広くていいですね。フルバケットシートというので、BRIDEとかレカロのようなものを想像していたのですが、高級感がありますし、座り心地もよいですから、言われなければフルバケットシートとわからないですね」とニッコリ。「それにオレンジ色のステッチが素敵ですね。派手さが抑えられています。さすがフランスですね」。ちなみにノーマルのA110にはブルーのステッチが入っています。「あ、青の方が好みかも」と星野さんは言います。

A110Sのセンターコンソール部分

シフトセレクターボタン。選択するとボタン周囲にLEDが点灯。パッと見でポジションがわかる優れモノだ

センターコンソールは二段式。下段にはUSBインレットやETCがあり、スマートフォンを置いても動かないよう、滑り止めの加工がなされている

 「センターコンソールが特徴的ですね」と星野先生。「コクピット感がいいですね。シフトがボタン式なのもイイ感じです。2階建てで下にスマホなどが置けるのはいいアイデアですね。あと液晶モニター下のスイッチ類も気分が盛り上がりますね」と星野先生は細かくチェック。使いやすさと雰囲気づくりの上手さ。そしてハイセンス。フランス人のセンスに、星野先生は大満足のご様子です。

センターモニターで車両表示させた例。出力やトルクも表示される

走行会などに便利なラップタイムモニターも搭載

 液晶モニターは、専用アプリをインストールしたiPhoneとUSB接続すればナビとして機能します。さらに車両の状態が一目でわかるモード、さらにラップタイムなどを計測する機能もあります。

選ぶならポルシェ・ケイマンではなくアルピーヌA110

アルピーヌA110の儀式「助手席にカードリモコンをセット」

 それではエンジンをかけてもらいましょう。カード型のキーを渡された星野先生。何の迷いもなくブレーキを踏んでイグニッションをオン! ですがエンジンはかかりません。アルピーヌA110Sは、ダッシュボードにカードキーを差し込まないとエンジンがかからないのです。エンジンが始動すると、ターボ車らしい低音が車内を包みます。「お! いい音」と合格点。それでは早速ドライブへ。

濡れた路面を走行するアルピーヌA110S

 取材日はあいにくの大雨。ミッドシップ・リアドライブのクルマで雨は滑りやすいので注意が必要です。ですが危うさは皆無。実に安定感があります。公道では危険なのでオススメしませんが、トラクションコントロールなどをオフにすることもできます。

海岸線を走るアルピーヌA110S

 「結構脚が硬めですね」と星野先生。「でも苦痛かというとそうではない。公道で不快にならないギリギリのセッティングだと思います」と診察。ステアリングは重めで女子にはちょっと辛そう。ですが「回頭性がイイ! 気持ちよくコーナーを抜けていきます。それにロール量が少ないですね。だから怖さが少ない」と適格に判断されます。「とてもイイと思います。日常的に使うなら、もう少し柔らかい方がラクだと思いますが、サーキット走行も視野に入れられる方はこちらなのでしょうね」とのこと。A110は一般道向け、A110Sは走行会を楽しむ方向け、という狙いなのは明白でしょう。

アルピーヌA110S

 「あと、アクセルが結構ダイレクトですね。踏めば背中にシートが張り付くほどの強烈な加速をしますね。リアにトラクションがかかっている感も楽しい。さらに背中からいい音が聞こえて。これはイイ感じです!」

サイドミラーを見る星野さん

リアに太いピラー(エアインテーク部)があるため、ルームミラーでは斜め後方が見づらい。高速道路の合流などでは注意が必要

バックすると、メーターパネル内にカメラミラーが表示される

 いっぽうで「後方視界は見づらいですね。特に斜め後方は怖いかも」だとか。幸いアルピーヌA110Sのサイドミラーは大きめなので、車両後方がきちんと見えるよう、普通車よりも内向きにセッティングすることをオススメします。

アルピーヌA110Sに大満足の星野先生

水しぶきを上げながら走行するアルピーヌA110S

 アルピーヌA110Sを体験した星野先生。「ライバルはポルシェ・ケイマンSですか。あちらは結構街中で見かけますね。アルピーヌA110とどっち? と言われたら、私はこっちがいいな。だってアルピーヌA110は街で見かけないですもの」。確かにアルピーヌA110Sと星野先生、とてもお似合いでした。次回は官能の国、イタリアのクルマに触れて頂きたいと思います。お楽しみに。

後ろ姿がが美しいアルピーヌA110S

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星野 奏(ほしのかなで)プロフィール

 

 10月30日神奈川県生まれ。歯科大卒業後に歯科衛生士の資格を取得。いっぽう、車好きなことからレースクイーンの道も志し、2017年「R'Qs triplets」でSUPER GTの表舞台に。翌年はGT500クラス「ARTA」で活躍。2019年はSUPER GT「T-DASHエンジェル」のほか、SUPER FORMULA「YOKOHAMA promotion model」としてサーキットに花を添えた。趣味はアクセサリー作り、ゲーム、ゴルフ、アニメ鑑賞。

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