Windows 10で標準で用意されるようになったcurlを使ってみる

文●塩田紳二 編集● ASCII

2020年07月26日 10時00分

Windows 10には、マイクロソフトが実装したcurl.exeコマンドが同梱されている。公開されているソースを元に作られた公式のcURLとはバージョンなどが異なっている

 Windows 10には、2018年のWindows 10 Ver.1803(RS3)からcurl.exeコマンドが標準で付属している。curl(カール)は、cURLの意味で、URLを使って指定するプロトコルを実行するコマンドラインツールである(以後記事中ではcURLをオリジナルの表記として使う)。

 curlは1990年代後半に開発が始められ、当初はUnix(SunOS)上で、名前もhttpgetだった。開発が進むとともに、複数のプロトコルをサポートするなどして「cURL」となったのは1998年で、この頃にLinuxにも移植されたようだ。

 Windows 10に付属しているのは、cURLの仕様からMicrosoftが作った独自バージョンのようである。というのもMicrosoft社内には、Windowsに「オープンソースソフトウェア」を載せないというルールがあり、こうしたコマンドやAF_UNIX、9pサーバー/クライアントなどは、すべてMicrosoftが仕様を元に自社内でゼロから作ったプログラムであるようだ。実際、Windows 10に付属のcurl.exeと、オープンソース版cURLのWindows公式配布バイナリではバージョン表記などに違いがある。

 Linuxと同じ使い勝手を必要とするなら、Windows 10付属のcurl.exeは使わずにオープンソース版curlのWindows用64bitバイナリを使えばいいだろう。しかし、簡易な利用ならば、Windows 10付属のcurl.exeでも十分ではある。今回は、Windows 10 Ver.1909に付属しているcurl.exeを使った。

実際にcurl.exeを使ってみる

 Windows 10付属のcURL(以下、curl.exe)は、C:\Windows\System32にあるので、そのまま実行できる。対応しているプロトコルは、バージョン表示で見ることが可能だ。

curl.exe --version

 オリジナルの最新版(ver.7.71.1)のほうが対応プロトコルが多いが、別途open-sslなどのインストールも必要なのに対して、curl.exeは、単体で動作可能な点が違う。使い方は、オンラインヘルプ(curl.exe --help)や公式ドキュメント

●curl - Documentation Overview(英語)
https://curl.haxx.se/docs/

などを参考にしていただきたい。簡単には、引数にURLを付ければOKで、URLのスキーマ部分(先頭から:までの部分)を見てプロトコルを選択してくれる。たとえば、「https://ascii.jp/」をアクセスしたいなら、

curl.exe https://ascii.jp/

とする(詳細は後述)。

 なお、PowerShell内でcurlを使うのには注意が必要だ。デフォルトで「Invoke-WebRequest」コマンドのエイリアスとしてcurlが設定されている。このため、PowerShell内でcurlコマンドを使うには、フルパスを指定するか、curl.exeと指定する必要がある。

PowerShellはデフォルトAliasでcurlという名前を使っているため、PowerShellから使う場合には、curl.exeと指定する必要がある

 もちろん、cmd.exeで使うなら、こうした問題は起きないが、逆に、PowerShellのほうが、curl.exeのコマンド出力を処理しやすい。cmd.exeなら単純な表示程度にとどまる。まあ、処理の内容次第だが、curlを使ってインターネット側から取得した情報を処理して必要な情報を取り出すなんて場合にはPowerShellが必要だが、単純にサーバーにコマンドを送る、ちょっとした情報を取得するだけなら、cmd.exeでも構わない。

 少し注意したいのは、cmd.exeではコマンドラインの引数にあるスペースなどをエスケープするときに文字列を囲むことができるのはダブルクオートだけで、シングルクオートは普通の文字扱いでそのままコマンドに渡ってしまう点だ(PowerShellはシングルクオートも使える)。curlは、UnixやLinuxでの利用が多いため、インターネットなどで実行例を示すとき、シングルクオートで文字列をくくることが少なくない。しかし、そのままではcmd.exeでエラーになるので注意されたい。

curlでWebページを取得する

 Webサーバー(HTTP)にアクセスするには、以下のようにする。ただし、Windowsのコンソールは標準では日本語文字コードとしてシフトJISを表示するようになっているため、先にコードページをUTF-8に切り替えておく。

Webページの取得。cmd.exeで使うなら事前に「chcp 65001」でコードページをUTF-8に切り替えておくとそのままで表示が可能

chcp 65001
curl.exe -s curl.exe -s https://ascii.jp/serialarticles/839756/ | find "塩田"

 最近では、HTMLにUTF-8を使うところがほとんどなので、これでなんとかなる。cmd.exeの環境では、すべてのコマンドがコードページに応じて動くので、コードページを切り替えるとfind.exeもUTF-8の文字列を検索する 。

 なお、PowerShellを使うと、文字エンコードと表示エンコードの問題があって、結果を表示させるような場合に、ちょっと面倒なことになる。普通にコマンドを使うと表示が化ける。このあたり、いつもPowerShellで「憂鬱」になるところ。内部エンコードと出力エンコード、入力エンコードの問題なので、できれば関わりたくない。

PowerShellから同じことをするのはエンコーディングの関係でちょっと面倒。$OutputEncordingをシフトJISに切り替えておき、curlの出力をnkfでシフトJIS化しておく。これでほぼOKなのだが、一部表示が化けることがある

cmd.exe /c "curl.exe -s https://ascii.jp/serialarticles/839756/ | nkf -W8 -s" | Where-Object { $_ -like "*塩田*" } ;

 PowerShellでは、exeコマンドからはシフトJISで来ることを期待している。このため、curl.exeの出力(UTF-8)をnkfシフトJIS化する。ところが、PowerShellのパイプは、exeコマンドの出力はシフトJISと仮定して動作するようなので、cmd.exe側でnkfコマンドを使い、シフトJISを出力するようにした。

 そのためにnkf.exe(nkfコマンド)を使っている。nkfは文字コード変換などが可能なオープンソースのコマンドラインツールである。古いものだが、文字コードの変換やメールで利用するMIMEのquoted-printableやbase64のエンコード、デコードなどに対応していて、現在でもWindowsのコマンドラインで使うには十分な機能を持っているため、入れておくと重宝する。

●ソースコードなど
パッケージ nkf - nkf Network Kanji Filter - OSDN
https://ja.osdn.net/projects/nkf/releases/p533
バイナリダウンロード
nkf.exe nkf32.dll Windows用の詳細情報 : Vector
https://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se295331.html

 PowerShellを使うならaliasに設定されているInvoke-WebRequestを使うほうが素直に動くが、cURLとは引数形式などがまったく違う。インターネット検索で探せば、さまざまな例が見つかるcURLに比べると情報量が違うのが問題だ。

続いてGmailにアクセスしてみる

 Gmailはスマートフォンに通知が来るし、ウェブブラウザで開いても使えるのだが、curlであれば未読メールを調べるのも容易にできる。なお、curlでGmailにアクセスするなら、事前に「アプリパスワード」を作って置くと、Googleアカウントのパスワードを使わずに済み、コマンドが外部に万が一漏れたとしても、簡単に無効にできる。コマンドとしては、

GmailをIMAPでアクセスしてみる。このときには、Gmailアカウントでアプリパスワードを使っておくといい

curl.exe -u ユーザー名@gmail.com:パスワード "imaps://imap.gmail.com:993" -X "STATUS INBOX (UNSEEN)"
※ ユーザー名、パスワードには各自のものを入れる。以下同様

とすると、未読のメール数を表示できる。コマンド出力の「(UNSEEN 」の後ろに表示されるのが未読のメール数だ。メールを読むには、それぞれのUIDを表示させ、UIDを指定してメールを取得する。UIDの取得は、

curl.exe -u ユーザー名@gmail.com:パスワード "imaps://imap.gmail.com:993/INBOX" -X "SEARCH UNSEEN"

とすればよい。IMAPに関しては、ここで説明しないが、これでINBOX内の未読メールを示すUIDがスペースで区切って表示される。Powershellなら、-splitでこれを分割できる。

PowerShellだとUIDを分離する処理などが簡単になる

(curl.exe -s -u ユーザー名@gmail.com:パスワード imaps://imap.gmail.com:993/INBOX -X "SEARCH UNSEEN") -split ' ' | Select-Object -Skip 2

 ASCII.jpからのメールを検索するなら、

curl.exe -s -u ユーザー名@gmail.com:パスワード imaps://imap.gmail.com:993/INBOX -X "SEARCH FROM "ASCII.jp""

とする。

差出人をASCII.jpで検索して、得られたUID(17695)を使ってメールを表示させてみた。なお、ASCII.jpからのメールは、Base64でエンコードされていたのでnkfには-mBオプションが必要だった。このあたりはメールの形式に依存する

 このメールを見たい場合、ASCII.jpからの場合、Base64でエンコードされているので、

curl.exe -s -u ユーザー名@gmail.com:パスワード "imaps://imap.gmail.com:993/INBOX;UID=17695/;section=Text" | nkf -mB -s
※番号には、前のコマンドで取得したUIDを入れる

とする。ただし、ここでは、nkfコマンドでBase64エンコード(-mB)を行い、出力をシフトJIS(-s)に変換している。

curlでファイルをダウンロード

 crulは、Webページを取得するのにも利用できるが、あらかじめURLがわかっているファイルならhtml以外もダウンロードが可能だ。たとえば、PowerToysの最新版は以下のコマンドでダウンロード可能だ。-sオプションを付けないと、途中経過を表示してくれる。

URLがわかっているなら、curl.exeで直接ダウンロードすることも可能。同じURLで公開されるプログラムなら、定期的にcurl.exeでアクセスして最新版を入手するといった操作もできる

curl.exe -OL https://github.com/microsoft/PowerToys/releases/download/v0.19.2/PowerToysSetup-0.19.2-x64.msi

 URLがわかっていないと使えないが、逆に固定してURLであれば、簡単にダウンロードできる。

 cURLは、インターネットプロトコルに慣れていれば、簡単にさまざまなプロトコルを発行でき、ちょっとした用途に利用できる。ここでは説明しなかったが、WebHookのトリガーとすることも可能で、たとえばIFTTTのトリガーとしても利用できる。コマンドラインから起動できるため、スクリプトに組み込むこともできる。ちょっと使って、コマンドに慣れておくと、いずれ役立つはずだ。

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