今秋以降のWindows 10のバージョンとプレビュー版はこうなる

文●塩田紳二 編集● ASCII

2020年06月28日 10時00分

Windows 10 Ver.2004(20H1)の一般向け配布は開始されているものの、機種によっては提供され例ないケースもある。一部の機種では案内が表示されるようになったようだ

 Windows 10 Ver.2004(May 2020 Update)の一般向け配布が開始されている。いつものことだが、いくつか問題が起きており、機種によっては、アップデートが停止されているケースがある。Ver.2004で現在判明している問題に関しては、以下のページに情報がある。

●Windows 10, version 2004 and Windows Server, version 2004 - Windows Release Information
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/release-information/status-windows-10-2004

 速報性を重視しているのか、地域設定を日本語にしていても、英語のままの表示である。ただ、Ver.2004固有の問題は減ってきており、過去バージョンを含めた問題のほうが増えつつある。

 さて、Windows 10やプレビュー版を配布するWindows Insider Programにもいくつかの動きがあった。これらの報告がてら今後のWindows 10のアップデートなどについて解説しておく。

Windows 10のバージョン番号が変わる

 Windows 10の今年秋のアップデートである20H2のプレビューが開始されている。これにともなって、いくつかの発表があった。1つは、今年秋のバージョンからWindows 10のバージョン表記が変更になることだ。

 Windows 10は、最初のアップデートである「2015 November Update」(TH2)から、西暦年の下2桁とアップデートが完成した月を2桁表示したものを組みあわせていた。May 2020 UpdateならばWindows 10 Ver.2004、昨秋のアップデートはVer.1909だった。

 今年秋のバージョンからは、西暦年の下2桁とH1、H2を組みあわせたものになる。これまで、プレビュー版に付けられていた略称が今後の正式なWindows 10のバージョンになる。このため、今年秋のアップデートは「Windows 10 バージョン20H2」となる予定だ。

 これまでの完成月を元にしたバージョン表記をやめるのは、おそらく、開発スケジュールの変更が大きいと思われる。2018年秋のアップデートでファイルが消えるという大きな問題が発生し、マイクロソフトは機能アップデートが完成してから一般向け配布までの間の検証に時間をかけるようになった。このため、これまで4月と10月になされていた一般向け配布の開始が5月と12月になった。プレビュー版での完成は以前と同じく3月と9月だったのにだ。

 Windows 10のバージョンは、この完成の月を取って付けられていた。しかし、リリースが1ヵ月伸び、プレビュー版のレベルでの「完成」(ビルド番号の固定)のタイミングがズレ始め、曖昧なものになってきた。また、最新の20H1では、過去のWindows Serverなどとの混同を避けるため、本来「2003」になるはずだったバージョン番号が「2004」になった。

 こうした背景からWindows 10のバージョンを上半期(H1)、下半期(H2)と区別するようになったのだと思われる。そもそも、Windows 10のコードネームを公開しなくなってから、西暦年2桁+半期の表記は、コードネーム代わりに使われてきた。これをそのままバージョンにするということだ。すでに配布が始まっている20H2のプレビュー版では、winver.exeのバージョン表記が変更になっている。

今秋のアップデートとなる20H2では、Windowsのバージョン番号表記が変わる。プレビュー版Build 19042.330ではすでに変更されていた

Windows Insider ProgramではRingが廃止に

 昨年12月、20H1のプレビューがSlow Ringに移行し、Fast Ringの役割が変更された。また、Skip Aheadが廃止されることになった。この時点でWindows Insider Programの各Ringは、

Skip Ahead Ring:廃止
Fast Ring:特定のリリースを想定しないWindowsの開発プレビュー
Slow Ring:次期機能アップデートのプレビュー
Relase Preview Ring:リリース直前の機能アップデートのプレビュー

という定義に変わった。

 そして今月15日、開始から5年にわたって使われてきたRingの名称が消え、3つのチャンネル(Channel)に名称が変更された。

Dev Channel:特定のリリースを想定しないWindowsの開発プレビュー
Beta Channel:次期機能アップデートのプレビュー
Relase Preview Channel:リリース直前の機能アップデートのプレビュー

 そもそも、Windows Insider ProgramでRingの名称を使ったのは、プレビュー版を含めたWindows 10のリリースが、マイクロソフト内の内部Ring、Fast、Slow、Release Previewと同心円状に広がっていくイメージを想定したものだった。しかし、昨年12月の役割変更で、このイメージはなくなってしまった。

 もう1つは、Officeのプレビュー版との整合性だ。不思議なことに、マイクロソフトは外から見ていると、WindowsよりもOfficeの開発チームのほうが主導権を握っているように見える。開発関連の方針は先にOffice側で決まって、そのあとでWindows側がこれに合わせるといった動きになることが多い。たとえば、Windowsのリリースを示す、「Semi-Annual Channel」「Semi-Annual Channel (Targeted)」は、もともとOfficeのリリース用語だった。

 また、いくつかの技術は、先にOffice側で採用され、その後、Windowsの標準的な機能となることも少なくない。たとえば、リボンや古くは共通ダイアログなどだ。また、ExcelのアップデートにWindowsのカーネルが含まれていたこともあった。

 Windows Insider Programが大きく変わることになるが、これは、Windowsのリリース形式変更とある程度関わりがあるようにも見える。昨年の19H2は、段階的なアップデートとして毎月配布され、最後に配布されたモジュールを有効化してバージョンを切り替えるという方式が取られた。秋のバージョンはインストールが簡易になる反面、大きな変更を盛り込みにくくなったのか、追加機能が限定されている。このため、春のアップデートのように長期間のプレビューはなくなった。

 春のアップデートの一般向け配布が開始された現在、Beta Channelには「20H2」こと今秋のアップデートのプレビュービルド19042.330が登場している(ちなみに20H1のビルド番号は19041)。20H2のプレビュー版を受信し続けるためには、Beta Channelに参加し、「設定」→「セキュリティとアップデート」→「Windows Update」で「20H2」のインストールに同意する必要がある。

 合意が必要になるのはおそらく7月あたりから、21H1のプレビューがBeta Channelで開始されるからだ。つまり、Beta Channelは、同時に2つのプレビューを配布することになり、Windows Insider Programの参加者は、リリースを選択して受信するのだろう。

 Dev Channel/Fast Ringでのプレビュー版は、原稿執筆時点では、Build 20152が配布されている。しかし、5月末のBuild 19631でリリース名がmn_releaseとなった後、19645までこれが続いた。しかし、その後、番号を大きく更新させたBuild 20150では、rs_preleaseに戻った。“mn”はマンガン(manganese)の略で、21H1の開発コードだとも言われている。ここから推測すると、21H1のプレビューは、この19645以降のビルド番号が使われるのではないかと思われる。

 昨年から変わり始めたWindows 10の機能アップデート。Windows Insider Programの変更で、とりあえず体制変更が一段落した感じだ。

■関連記事