ZoomやSkypeなどビデオ会議サービスのCPU使用率を調べてみた

文●林 佑樹(@necamax) 編集●北村/ASCII

2020年05月12日 09時00分

 ビデオ会議サービスは地味に重い。それなりのデスクトップPC環境ではまったく気にならなかったが、編集部から「ノートPCだとけっこうキツい」という話を聴き、いまだにノートPCのケースは確認していなかった。よって本稿ではいくつかのビデオ会議サービスをピックアップして負荷傾向を見ていこう。

テレワークにオンライン飲み会にと活躍しているビデオミーティングサービス群

 注意点としては、環境依存率が高いことだ。ネットワークの回線状況によって映像と音声ビットレートやフレームレートを動的に変更するサービスがほとんどで、固定させることが難しい。これはほとんどのサービスが画質・音質を落としてでも接続を維持しようとするためだ。

 またアプリケーションの使用状況で負荷が変動するため、定量化がひどく難しく、組み合わせも多すぎる。よって本稿はよくある状況ベースでの負荷傾向を見ているだけであり、定量化による検討を破棄し、テスト環境を以下に提示し、そのうえでのデータを元にする。つまりポエムだ。

使用したノートPC
型番 DELL XPS 13(7390)
CPU Core i7-10710U
グラフィックス インテル UHD グラフィックス
メモリー 16GB
ストレージ 512GB SSD
ディスプレー 13.3型4KウルトラHD(3840×2160ドット)
通信規格 Wi-Fi 6(Killer AX1650)+Bluetooth 5.0
内蔵カメラ 約92万画素ウェブカメラ
OS Windows 10 Home(64bit)
通信環境 @T COMヒカリマンションタイプ IPv6接続

 取材用のXPS 13(7390)をテスト環境に採用。Core i7-10710U搭載機だが、Core i7-1065G7よりもグラフィック性能が劣るため、確認の都合の良さもある。またCore i5搭載のほどよいスペックのPCを入手できなかったのもあるのだが、後述するようにXPS 13でも快適とはいえず、結果的にほどよい選択になった。

DELL XPS 13(7390)

CINEBENCH R20の結果

@T COMヒカリマンションタイプ IPv6接続をスピードテストでみると時間帯による影響をあまり受けておらず、上記のスコアであることがほとんど

 結論としては第10世代Core i5搭載ノートPCでもシーン次第では厳しく、3世代ほど前のノートPCでは最小限のことしか実行できない。シングルタスクとはいかないのがテレワークでのビデオ会議なので、余裕のある性能が望ましい。

 また画面共有やホワイトボードはキャプチャーサイズとフレームレートで負荷が大きくなりやすい。画面共有での解説が多いのであれば、デスクトップPCやデスクトップ向けCPU搭載した15.6型ノートPC+サブディスプレーがベターだ。

15.6型はディスクリートGPUを搭載した製品が増えている

 サービスはZoomを中心にGoogleハングアウト、Skype、Discord、BIZMEEでもテストした。Google Meetについてはまだ無料版が浸透していないが、負荷傾向的にはGoogleハングアウトと似ているので参考になるだろう。

 またTeamsについてもSkypeでのそれと近しい負荷になる。なおMeet Nowについては、筆者宅環境だと頻繁にカットラインが起きてしまい、まともにチェックできていない。

バーチャル背景の使用と
デスクトップ全体の画面共有は高負荷

 Zoomの場合、ある程度負荷傾向が追いやすい。タスクマネージャーだけでなく、設定>統計情報に進むと、使用帯域幅やビデオ・オーディオの送受信状況を確認できる。Core i7-10710U搭載機の場合は、画面共有は状況次第だが、おおむね問題ない。ただファンの回転数は上がりっぱなしだった。また挙動を見ていると、GPUをそれほど使用していない。画面共有時にはGPU使用率が高まるアプリケーションが多いのだが、ちょっと意外だ。

ビデオやバーチャル背景の設定画面時の負荷が、ビデオ会議時の負荷に近い

画面共有をすると複数スレッドを使うようになるのだが、状況によってはほぼシングルスレッドのままのときも

 Zoomは自分だけでなく、参加者の状況によっても負荷が変化する。自分の映像を参加者が大きく見ている場合、その操作に合わせてサムネイル向けの解像度から、長辺640pxや1280pxの出力に変化する(Webカメラの性能により変化する)。

 フレームレートについては、10~30fps間で変動。これも負荷だけでなく、ビデオや画面キャプチャー先が動いていない場合はフレームレートを積極的に下げていく。もちろん、オーディオの場合も同様になるが、人数が増えるほど負荷が増えていく様子はない。

 というようにスマートなのだが、よくよく把握しようとすると面倒極まりない仕様だ。なお後述する他のサービスもZoomのような挙動をしているのだが、細かくは追いにくい。

 バーチャル背景をオンにして、3人で会議をしてみた場合で見ると、CPU使用率25%前後になった。これはビデオと音声のみの状態で、バーチャル背景をオフにした場合は15%前後に落ち着いた。

便利な「統計情報」。ビデオ会議がヒマなときの観察にオススメ

ビデオやオーディオ、画面の共有では解像度やフレームレートのほか、パケット損失率もわかるが、ともあれビデオの送受信は軽め

異なるデバイスでホストの画面を大きくしてみた状態。「見られている」判断がされて、送信側の解像度とフレームレートが高くなっている。もちろん、負荷は増える

 では画面共有はどうだろうか。長辺800px程度のウィンドウを取り込む場合は、要素次第だが、CPU使用率35%前後になる。動く要素がないものであれば、ファンはうるさいが処理がもたつくことはない。

 セミナーや授業ではよく、デスクトップ全体をキャプチャーするケースがある。この場合はCPU使用率50%以上になりがちだ。

デスクトップ全体の場合も動体要素が少なければ、負荷もデータ転送量も減らせる

 Core i7-10710U搭載機の場合で見ると、Zoomをシングルタスク的に運用するのであれば不自由は少ないが、バックグラウンドでなにか作業をするとなった場合は、なるべく最小化しておき、サブモニターに逃がしておくのが妥当なところだろうか。

 またホスト向きな環境とはいえず、デスクトップPCや15.6型の高性能ノートPCを視野に入れたほうがいいだろう。

 ではいよいよ、主要なビデオ会議サービスでのCPU使用率をチェックしていこう。

ZoomよりもGPUを使用する
Googleハングアウト

 3人での会議でテストしてみたところ、ZoomよりもGPUを使用する傾向にあり、CPU使用率はほとんどの状況で20~25%。なのだが接続によっては妙に重いことがある。またChromeベースで運用するため、他のタブでCPUを使用していたり、元気いっぱいにChromeがメモリーを消費していく。

 長時間使用する際は、他のアプリケーションを使用しにくくなりがちなので、物理的PCを分けたり、スマホからアクセスしたりしたほうがいいだろう。

帯域幅の設定で負荷は変化するが、CPU使用率は20~25%(画面キャプチャー時は15.3%)と劇的ではなかった。またGPU使用率が10%を超えており、やや高めである

CPU使用率は低いが、GPU使用率がかなり高め
Skype

 ほとんど設定らしい設定はないので、アカウントを作成してしまえばいいだけとお手軽。CPU使用率は大半のシーンで15~20%と扱いやすいのだが、GPU使用率が高め。ビデオデコーダーを積極的に使用しているところも確認しやすいが、全体的にもっさりしがち。デスクトップPCのほうがいいような気がする。

バーチャル背景時の人体検出精度は高いが、ビデオ通話時のGPU使用率は28.3%と高めになりがち

画面全体を共有してみた場合のCPU使用率は16.1%、GPU使用率は19.1%

品質を上げるとCPU使用率が跳ね上がる
Discord

 サーバーブースト(音質を上げるなどの有料拡張機能)していない状況下で言うと、音声ベースのやり取りであれば負荷は気になることはまずないレベル。ビデオを使用した場合も同様なのだが、設定によってはデスクトップPC前提的なところがある。

普通に使用した場合のCPU使用率は15~20%(画面キャプチャー時は17.8%)。設定で品質を上げるとそのぶん重くなる

ノイズ抑制やエコー除去といった設定で負荷がやや変化する

CPU使用率が35~40%とかなり高い
BIZMEE

 サインアップなしで音声とビデオ、チャット、ホワイトボード、画面共有できる無料サービス。ブラウザベースで運用する。GPU使用率を上げやすく、ベンチマーク時の中負荷生成用に愛用している。いちおう、参加者間で共通のサービスを使用していない際にオススメである。

 CPU使用率は35~40%と高めで、かつGPU使用率も30%以上になりがちだ。また画面共有した場合はノートPCからするとベンチマークに近く、GPU使用率は100%に近くなる。タスクマネージャーあたりをキャプチャーしてみるといいだろう。

画面共有時は、もりもりとGPUを使用するためGPU使用率は76.3%に達している。このときのCPU使用率は16%だが、平均すると35~40%と高めだった

SkypeとDiscordが軽め

 以上、非力なPCでビデオ会議やオンライン飲み会をせざるを得ない状況の場合、どのサービスを使うのがいいかをCPU使用率から調べてみた。

CPU使用率(単位:%) ちなみに、meetはハングアウトの値を、TeamsはSkypeの値を参考にしてもらいたい

 なお、非力なPCを使うくらいならスマホを使用したほうがいい、というのはもっともな意見だ。しかし、字が小さい資料を画面共有されるとスマホではとても見づらい。また、自社開発ソフトなど、スマホでは動かないソフトを画面共有したいというニーズもあるはずだ。

 また、CPU使用率をある程度把握しておけば、ビデオ会議中に別ウインドウでいろいろな作業をする目安にもなる。

 冒頭で述べたとおり、ビデオ会議サービスは通信環境に大きく依存するため、計測したCPU使用率は参考程度でしかない。それでも非力なノートPCに頼るしかない場合は、ある程度の目安になるだろう。

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