“ゲーミングPC=派手に光る”という固定観念を覆す、「ZEFT R9FD」の大人な魅力

文●宮崎真一 編集● ASCII

2020年03月25日 19時00分

 日本市場において、Fractal DesignのPCケースは、スタイリッシュなデザインと高い機能性で知られている。Fractal Designはスウェーデンのコンピューターハードウェアメーカーで、同社のPCケースであるDefineシリーズは“スカンジナビアデザイン”と呼ばれるシンプルかつ機能的なデザインを採用しているのが特徴的だ。同シリーズの最新モデルである「Define 7」は、数あるミドルタワーPCケースの中でも高い人気を誇っている。

 さて、パソコンショップSEVENを運営するセブンアールジャパンが、そのFractal Designとコラボレーションし、Define 7を採用したゲーミング向けPC「ZEFT R9FD」を発売するという。しかも何やら伝え聞いた話によると、このZEFT R9FDには“とあるコンセプト”があるとのこと。

 果たして、ZEFT R9FDはどのようなPCなのか、そしてそのコンセプトとは一体何なのか? 早速、セブンアールジャパンの代表取締役である西川 龍氏と中嶋孝昌氏、それにFractal Designの代理店であるアスクの事業推進部 営業推進グループの西潟良祐氏に、ZEFT R9FDについて詳しい話を伺った。

セブンアールジャパンの代表取締役である西川 龍氏とZEFT R9FD

ZEFT R9FD
https://pc-seven.co.jp/spc/10922.html

「ZEFT R9FD」の主なスペック
CPU Ryzen 9 3900X
(定格クロック3.8GHz、最大クロック4.6Hz、12C/24T、キャッシュ容量64MB)
ケース Fractal Design Define 7
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36
マザーボード ASRock X570 Phantom Gaming 4
メモリー 32GB PC4-25600(DDR4 SDRAM、16GB×2)
スロット数4のうち2スロット使用
グラフィックス MSI GeForce RTX 2070 SUPER VENTUS OC
(2スロット使用)
ストレージ 500GB SSD(CFD「PG3VNF」、NVMe PCI-E Gen.4)
有線LAN 1000BASE-T LAN
無線接続 Wi-Fi6/Blutooth5.0対応
電源ユニット Fractal Design ION+ Platinum 860P
(定格出力860W、80PLUS Platinum認証)
OS Windows 10 Pro(64ビット)

光る要素“ゼロ”
環境に溶け込むあえて光らないPCとは

――今日はよろしくお願いします。今回のコラボモデルには1つのコンセプトがあると伺っているのですが、それは何なのでしょうか?

西川氏:弊社のゲーミング向けPCは、“ARGB対応”を一つのコンセプトに掲げ、PCケースだけでなくCPUクーラーやマザーボードなど、外観と内部ともにLEDを光らせたモデルを多く用意しています。しかし、今回はそのラインとは一線を画し、あえてどこも“光らない”PCを新しいラインとして立ち上げました。ARGBはアドレサブルRGBの略ですが、強いて言うなら“アドレサブらない”PCとでも言いましょうか。

中嶋氏:弊社のこれまでのゲーミング向けPCでは、ARGBに対応したモデルが多くありました。そこで培われたノウハウは、今後も活かし続けていきたいと思っています。今回のZEFT R9FDはそれらとは別のラインに属しており、弊社のゲーミング向けPCは、「ARGB対応モデル」と「まったく光らないモデル」の2つのラインが立ち上がったと捉えてもらえるとありがたいです。

光らないというコンセプトのもとに完成したZEFT R9FD。PCケースには、Fractal Design製Define 7を採用する

――それは、どこも光らないPCが欲しいなど、ユーザーさんから何か要望があってのことなのでしょうか?

西川氏:はい。派手にLEDを光らせたいと言ってARGB対応モデルをお買い上げいただくお客様は、正直あまり多くないですね。逆に、製品が届いてからPCを動かしてみると思っていたよりLEDが明るいので、消すにはどうすればいのかとお問い合わせいただくことがまれにあります。

――なるほど。それなら、最初から光らないモデルがあってもいいのではないかということですか?

西川氏:そうですね。弊社の従来のモデルもそうですが、他社さんの製品を見ても、ゲーミング向けモデルというとPCケースや内部のパーツが光って、かなりきらびやかというイメージがあると思います。その中において、あえてまったく光らないモデルがあってもいいんじゃないかというのが、今回のコンセプトのきっかけですね。

――最近は、どのパーツもLEDを搭載し、光ることが“当たり前”になってきていますね。

西川氏:そうなんです。ですので今回、光らないパーツを集めるところから始まったわけですが、これが意外に骨を折りました。まったく光らないパーツは、かなり少なくなっていますね。

中嶋氏:今回のコラボモデルの話が出たとき、率直な印象は“一周したな”というものです。昔はPCケースを始め、マザーボードなどすべてのパーツが光らないことが当たり前でした。単色でしたが光るケースファン等が登場し、内部パーツを光る部品で見えるようにできました。今はさらに色彩変更ができ、条件を満たせば同期することも可能です。昔は当たり前だった“光らない”という仕様が、今ではめずらしくなりつつあるというのが正直な印象です。

――では、“光らない”コンセプトに基づいて、Fractal Designのケースを採用し、コラボレーションを行なうまでに至ったということでしょうか?

西川氏:はい。私の勝手なイメージですが、Fractal DesignのPCケースは、光りはしないもののスタイリッシュなデザインを採用しているという印象を持っています。そのため今回のコンセプトにマッチしていると思い、採用した次第です。また、サイドパネルには吸音材が貼付され、静音性が高いということも採用した理由の1つに挙げられます。

西潟氏:そのイメージは、ユーザーさんの多くもお持ちのようです。と言いますのも、Fractal DesignでもARGB対応のケースを発売したことがあるのですが、多くのユーザーさんからの反応は“Fractal Designらしくない”でした。やはりFractal DesignのPCケースというと、落ち着いた雰囲気のシンプルなデザインというイメージが強いと思います。

西潟氏にDefine 7の説明を受ける西川氏と中嶋氏

右側面のサイドパネルには、一面に吸音材が貼付されている

――今回は光りはしないものの、サイドパネルは内部が見えるタイプなんですね。

西川氏:はい。今回のモデルはCPUクーラーなどは一切光りませんが、サイドパネルが強化ガラスで内部が見えるようになっています。これがアリなのかナシなのか意見が分かれるところだとは思いますが、個人的には光りはしないものの、かなりいい見栄えに仕上がっていると自負しています。

中嶋氏:ちなみに、弊社ではこのDefine 7の1つ前のモデル「Define R6」も扱っています。そちらはサイドパネルに窓のないモデルですが、ありがたいことに好評を頂いており、内部が見える必要性を感じていないお客様も多いように見受けられます。ですがお客様の話を伺う限りでは、光らない状態でも内部を見せたい方もいらっしゃって、このあたりは好みによって分かれるようです。

西潟氏:去年あたりから、Fractal DesignはPCケースを製品単体ではなく、机の上に置いた場合などシチュエーションに即したイメージを意識するようになりました。Fractal Designが出しているキービジュアルを見ていただけると分かるのですが、LEDが光っていなくても、窓を用意することで各パーツの美しさなどの見せ方を重要視しています。ですから今回のコラボPCは、“家に置くデザイン性を意識したマシン”と言ってしまっていいように思います。

中嶋氏:環境に溶け込むのは非常に大事だと思います。LEDが光っていると、部屋で浮く存在になりがちです。もちろん、LEDにもいいところはあります。マザーボードにもよりますが、CPUの使用率や温度に合わせて色を変えるといった機能性を持たすことも可能です。ですが、大人向けとでも言いましょうか、光らせたい派の自分から見ても、あえて光らないPCというのはなかなかいいコンセプトだと思います。あと、パーツにこだわってる人は光らなくても内部が見えたほうが満足感が高いのではないでしょうか。

Fractal DesignのPCケースは、環境に溶け込むデザインを重要視していると語るアスクの西潟氏(写真中央)

Fractal Designが示すDefine 7のキービジュアル。オフィスや自宅、作業机など、さまざまな場面に溶け込むデザインを意識して製品を開発しているとのこと

――Define 7を採用したメリットはなんでしょうか?

西潟氏:ぱっと見は以前のDefine R6と同じように見えるかもしれませが、メンテナンス性や使い勝手の向上など、従来のモデルから確実な進化を遂げています。サイドパネルの留め具にも改良が加えられていまして、引っ張ることで容易に外れるようになっています。天板もドライバーを必要とせず、簡単に取り外しができますし、付属品のスリットを多く設けた天板に換装することも可能です。

 また、天板が簡単に外せますので、ケーブルの脱着など内部の作業はかなり行ないやすいと思います。あと、Define 7が特徴的なのは、ケース背面のブラケット部に金属製のフレームがない点です。グラフィックスカードにHDMIケーブルを脱着する際、そのフレームが邪魔にならないといったメリットがあります。

サイドパネルを外し、内部を覗き込む中嶋氏

Define 7ではブラケットに金属製フレームを用いていないため、ケーブルがうまく刺さらないといったことも起きない

天板に用意された各種インターフェース。USB端子に黒色のものを用いているあたりは、デザインのこだわりを感じる

Define 7の底面には取り外し可能な防塵フィルターが用意されている

――天板の付属品はZEFT R9FDでも同梱されますか?

中嶋氏:はい。ZEFT R9FDと一緒にもう1つの天板が同じ箱に付属します。デフォルトはスリットのない通常の天板ですので、ケース内部の冷却を重視するお客様は、スリットのあるほうに換装してお使いいただければと思います。実際に自身で試してみましたが、ドライバレスで簡単に取り換えができました。

ZEFT R9FDの天板を、付属のスリット付きモデルに変更した様子

――これだけ扱いやすいケースですと、組み立て作業を行なうスタッフからは好評ではないですか?

西川氏:Define 7は非常に機能性の高いケースで、組み立てやすいのも事実です。ですが、ラジエーター1つ取ってみても、フロント、天板、リア、ボトムと4か所に取り付け可能になっていまして、お客様の要望により、ラジエーターの場所を変更することもできます。弊社としてはその声に応えていく必要がありますので、実際の作業はそれなりに負荷があると思います。

――ZEFT R9FDはゲーミング向けモデルとして発売されていますが、ゲーマーの方というとLEDを派手に光らせているイメージが強いです。その点はどうお考えですか?

中嶋氏:確かに、僕もゲーマーの方というと同じイメージを持っています。なのでゲーマー向けモデルとFractal Designはイメージ的には結びつかないようにも思いますが、ゲーミングモデルだから光らないといけないとも思ってないです。

西川氏:自宅ではDefine R6を使っているのですが、僕は24時間PCを付けっぱなしにすることが多いです。そういった用途では使用していない時も四六時中ケースからLEDの光が漏れるのは、あまりいただけないと感じています。長時間ずっとゲームをプレイするようなコアなゲーマーには物足りなく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、PCを付けっぱなしにして、気が向いたときにゲームをプレイするといった用途の方には、ZEFT R9FDは向いていると思います。

――先ほどのビジュアルイメージ的には、ゲーミング向けだけでなくクリエイター向けモデルとしても興味を持つユーザーが多いようにも思いますが、そういったご予定はありますか?

西川氏:とくにクリエイター向けモデルとして謳うことはないですが、たとえば、動画のエンコードやトランスコードといった処理は比較的時間が掛かります。その処理を行なっている間、LEDが常時点灯している必要はないと考える方はいらっしゃると思います。また、大学の研究室やそれこそオフィスなどでは、PCケースのLEDが派手に光るのは業務上あまり望ましくないのではないでしょうか。そういった用途に、ZEFT R9FDの“あえて光らない”というコンセプトは合致していると考えています。

――CPUにRyzenを採用した理由はなんですか?

西川氏:市況的なこともありますが、弊社ではRyzenの人気が高いためですね。それに加えて今回、内部を黒で統一しようという裏コンセプトがありました。ブラックの基板でLEDがまったく付いていないマザーボードを探したんですが、合致するモデルはそう多くありませんでした。その中から、弊社が取り扱っているものを条件に選んだのがASRockの「X570 Phantom Gaming 4」でした。ですから、今回はどちらかというとマザーボードありきでCPUをチョイスしています。

――マザーボードが先に決まっていたのですね。

西川氏:はい。ですが弊社では、Fractal Designのケースを選ぶお客様のRyzen率は非常に高いですね。自作経験がある方が、IntelよりもRyzenをチョイスし、Fractal Designのケースを選ぶ傾向が強いようです。

――今回、SSDがPCI-E Gen.4対応のものなんですね。

西川氏:今までGen.4対応のSSDは、発熱の懸念もあって扱っていませんでした。ですがヒートシンクを選定してパフォーマンスを確認し、今回のZEFT R9FDからGen.4のSSDを全てヒートシンクを取り付ける仕様で採用しています。Ryzenプラットフォームの利点であるPCI-E Gen.4を活かしていきたいですしね。

――ケース以外にもCPUクーラーや電源ユニットもFractal Design製ですね。

中嶋氏:はい、コラボモデルとしてどちらもFractal Design製のものでまとめています。

西潟氏:ZEFT R9FDに採用いただいている簡易水冷クーラーの「Celsius S36」は、少し古い製品ではあるのですが、360mmサイズのラジエーターを採用しており、冷却性能は最新モデルと比べても引けを取らないほど高いです。それこそ、Threadripperも十分冷却することが可能です。

 また弊社のほうで、ラジエーターが240mmサイズのモデルの動作音や冷却性能の検証を行なったのですが、いくつかピックアップした中では同じCelsiusシリーズの「Celsius S24」が一番静かでよく冷えるという結果が得られました。Celsius S36は、ラジエーターがそれより大きな360mmサイズですので、さらに冷えるということになります。

アスクが行った冷却性能テスト(※)の結果。ラジエーターのサイズが240mmのCelsius S24のテストなので、あくまでも参考値だが、冷却性能は優秀だ

一方こちらは騒音値テスト(※)の結果。Celsius S24が最も静かという結果が得られている

※参照:https://www.ask-corp.jp/guide/cpu-liquid-cooler-2019-summer.html

――電源ユニットについてはいかがですか?

西潟氏:電源ユニットには「ION+ Platinum 860P」を採用いただいてますが、ケースメーカーが作った電源ユニットらしく、ケースへの組み込みやすさが製品開発において重視されています。具体的には、このION+ Platinum 860Pの各種ケーブルが非常に柔らくなっていまして、他社製品では比較的堅めのメインの24ピンケーブルもかなり簡単に曲げることが可能です。

 ですので、ケース内でのケーブルの取り回しがかなり容易になっています。さらにこのION+ Platinum 860Pには、低負荷でファンの回転を停止する「Zero RPMモード」用のスイッチが用意されています。アイドル状態の動作音を少しでも抑えたい場合には、このZero RPMモードを使っていただければと思います。

中嶋氏:ちなみにZEFT R9FDでは、このZero RPMモードはオフ、つまり常時回転するモードとなっています。もちろん、お客様のほうでZero RPMモードに切り替えて使用するといったことも可能です。

西潟氏:また、おもしろいところでは、Define 7のオプション品として、強化ガラスを採用した右側面用サイドパネルの発売も予定しています。両サイドを強化ガラスにすることで、マザーボードベースの裏面の配線を外から見るといったことも可能です。

ZEFT R9FDを囲む西川氏と西潟氏

 昔のPCは、中嶋氏が言及するように、光らないことが当たり前だった。それがいつしか、光ることが当たり前の時代になっている。そうした時代において、ただ光らないだけでなく、PCケースにFractal DesignのDefine 7を採用することで、西潟氏の言葉を借りると「環境に溶け込む点」がZEFT R9FDが最大の魅力ではないだろうか。

 LEDのきらびやかな光に辟易しているユーザーが少なからずいることは事実だ。ZEFT R9FDの価格は税抜きで27万9800円と安価ではないものの、大人向けの落ち着いたPCを探している人にとっては、食指が動くモデルであることは間違いない。

 さて、ZEFT R9FDの持つパフォーマンスはどの程度なのだろうか。後ほど、テストによりそのポテンシャルを探ってみたいと思う。

(提供:セブンアールジャパン)

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