1億画素スマホ「Mi Note 10 Pro」とデジタル一眼レフはどっちがスゴい?

文●荻窪圭 (猫写真家) モデル●長谷川実紗 編集●ASCII

2020年02月01日 12時00分

 背面を見ると、カメラが5つも並んでて、そのうち真ん中のカメラはなんと1億800万画素もあって、5つあるカメラの画素数が全部違うという、どこからツッコンでいいのかわからないレベルのスマートフォンがシャオミの「Mi Note 10」。

 このMi Note 10にはさらに上位の「Pro」を冠するモデルがあり、こっちはメモリー(8GB)やストレージ(256GB)やレンズの枚数が違う。今回レビューで使ったのは上位モデルの「Mi Note 10 Pro」。カメラという観点でいけば、Mi Note 10との違いはほとんどない。ただ1億800万画素のカメラに使われているレンズが1枚多いだけで、実使用上の違いを感じることはまずないだろう。

※作例はすべて原寸で掲載しています。データ通信量にご注意ください。

1億画素のカメラってほんとに1億画素?

 Mi Note 10 Proのカメラは5つあるがその内訳はこんな感じ。背面にある5つの○は全部カメラで、それも画素数も画角もセンサーサイズも全部違うのである。5つあるうち、1億800万画素のセンサーは1つだけ。さすがに5つとも1億画素とか、5つ合わせて1億画素とか、そんなことはない。中央のセンサーが1億800万画素なのである。

全部画素数と用途が違う5連カメラ

 1億画素あることで、もうデジカメはいらないとかデジタル一眼を超えたとか言う人がいるとかいないとかなので、ほんとにそうなのか、どのくらいのレベルに達してるのか、カメラとしてどのくらいイケてるのかをチェックしてみたい。まずは、1億画素はどのくらいのものなのか。

 現在(店頭で購入できる)デジタル一眼で今一番画素数が多いのは、富士フイルムの「GFX100」。これが1億画素だ。センサーサイズは35mmフルサイズより一回り大きなハイエンドサイズで、価格も100万円を超える。もうちょっと現実的なところだとソニーの「α7R 4」が6100万画素だ。35mmフルサイズセンサーを搭載して、価格は40万円台。

 対して、Mi Note 10 Proの1億画素センサーは1/1.33型。一般的なスマホ用センサーに比べると面積は4〜5倍と大きなものだが、そのサイズで1億画素ってめちゃ多い。iPhoneやGalaxyは1200万画素なので、その9倍の画素数ってことになる。それでクオリティーは保たれるのか気になるわけで、さっそく1億画素写真を撮ってみよう。

 カメラを起動し、「108M」(108メガピクセルのこと。煩悩の数ではない、と思う)にすると、1億800万画素モードになる。このときはAIとかHDRとかそういう機能が使えない。ただひたすら、最高画素の記録をするためのモードである。

撮影モードを「108M」にすると「108MPウルトラHDはオンです」と表示が出て1億800万画素モードになる

 それで撮ったのがこちらだ。

12032×9024ピクセル。長辺が1万を越えた巨大画像だ

 ファイルサイズは18.6MB。ちゃんと撮れてる。色もちゃんと出てる。これをダウンロードして細かいところをチェックってのも大変なので部分拡大。

1億画素あればここまで拡大できる。光の条件がいいとかなりイケてるのがわかる。これは予想以上

 ディテールがちょっとざらついてたり空がちょっとノイジーだったりするけど、ちゃんと細かいとこまで写ってるではないか。もう1枚、富士山の写真をいこう。

多摩川からの夕焼けを1億画素で。空と川面がいい色になってます

 どこが富士山? 単なる多摩川の夕焼けじゃないか、と思いきや中央部を等倍表示! わかりますよね。ビルの谷間に富士山が頭を出してる。ほんのちょっとだけど。

ちゃんと富士山が写ってました。ほんのりと、だけど。エッジはちょっときりっとしてないけど

 1億画素あればこのくらいの拡大に耐えられるのだ。でもさすがにディテールは解像し切れてなくてエッジも不自然なとこある。

 実際、デジタル一眼と比べたら画質的にどうなのか。画素数で押し切れるのか。ガチで撮り比べて見た。うちの猫だけど。デジタル一眼はミドルクラスのもの。1世代前のAPS-Cサイズセンサー搭載機(富士フイルムの「X-T2」)でレンズもミドルクラスのズームレンズだ。2400万画素機。

Mi Note 10 Proの108Mモードで撮影

富士フイルム X-T2 + 16-80mm F4で撮影

 等倍で並べたのがこちらだ。明らかに2400万画素のデジタル一眼の方がディテールがしっかり出てて、さすが本職デジタルカメラ。

こうしてみると、Mi Note 10 Proは無理に拡大している感がちょっと出てる。スマホの小さなレンズでは1億画素の解像は難しいってことかも

 一応、本職カメラとスマホの実力差というか光学性能の差というか、そういうのはありますよということで。ただ、実はこの1億画素のセンサー、1億画素ではあるのだけれども、それ以上にもともと「4つの画素を混合して2700万画素として使う」イメージセンサーなのだ。1億画素で撮る「108Mモード」はおまけなのである。

 スペック表には「4-in-1 スーパーピクセル」と書いてあるが、そういう意味だ。そうすると、そのぶん感度を上げたりダイナミックレンジを広げたりできるし、元の画素数より小さめに撮るのでディテール描写も期待できる。それを駆使するのがカメラアプリの「写真」モードだ。このモードだと2700万画素サイズで撮影してくれるのだ。

雪だるまイルミネーション(昼間なので点灯してないけど)の2700万画素版

 考えてみたら、2700万画素という時点でめちゃ高画素だし。肉テロもOK。写りはめちゃしっかりしていて素晴らしい。

肉である。もう肉としか言いようがない

 夜景モードもきれい。夜景モードにすると連写+HDRなどなどを合わせてきれいな写真を撮ってくれる。さらに、連写+HDR合成でハイライト部の色もしっかり出しつつ、ノイズも減らすのだ。

夜空の暗さを保ちつつ赤や青の光の色も白トビせずにしっかり出てる

 これはなかなかだ。ついでに猫も。

AIをオンにしておけばちゃんと動物も認識する

お昼寝猫

 そして、人。

HDRがかかって背景を保ちつつ影になってた顔も明るく処理してる。ちょっと美肌処理がかかりすぎたかも

 一般に、画素数が増えるほど高感度時のノイズが増えて画質が落ちる。2700万画素相当だとそれも気になるところだが、ISO963まで上がってもけっこう頑張ってる。

 さきほどの肉の写真はスポットライトの下で明るい場所だったけど、こちらはテーブルの上でかなり暗め。でもノイズも目立たなくてすごくちゃんと撮れてる。近距離で撮ると周辺の画像の流れが目立つけど、それはまあしょうがないか。

AIが自動的に料理と認識して撮影。白熱灯に近い照明下ですごくきれいな色を出してくれてるし、ノイズもうまく処理しててエラい

 1億画素だーとか、2700万画素だーといわれると、つい等倍表示をしてホントにその画素数に相応しい画質なのかよ、とチェックしたくなるけれども、普通に高画質なスマホとしてしっかりしてるのだ。もっと凝った撮影をしたければ「プロ」モードという手がある。プロモードにするとホワイトバランスやシャッタースピード、ISO感度などを細かく指定できる。

ISO感度を抑えつつ夕焼けの赤がきれいに出るホワイトバランスにして手前の木々がシルエットになるよう露出抑えめで撮ってみた

夕空とシルエットを目立たせるセッティングで

5つあるカメラの使い分けを解説

 1億画素センサーの話はこの辺にして、それ以外のカメラの話を。何しろ5つも並んでて、しかも全部画素数が違うのだ。カメラを複数持って広角だとか望遠だとか切り替えても、出力される画像のサイズは同じなのが常識だと思ってるとびっくりする。

 メインの広角カメラでは6016×4512ピクセルの2700万画素なのに、超広角カメラで撮ると2000万画素の5184×3880ピクセル、2倍のポートレートカメラで撮ると1200万画素の4032×3024ピクセルになり、さらに望遠カメラで撮るとセンサーは500万画素なのに出力は約800万画素の3264×2448ピクセルになるのだ。スペック表を見るとこの望遠カメラだけ、何倍に相当するのか書いてない(カメラアプリでは5xと表示されてるので5倍といっていいと思うけど)。ややこしい。

超広角。少し上や少し下から撮ると遠近が強調されて超広角らしさを楽しめる。超広角は便利で楽しい

2倍のポートレートカメラ。人物を撮るときによい画角ってことで、ポートレートモード時はこのカメラがメインになる。けっこうシャープでよい写り

5倍の望遠カメラ。500万画素センサーなのだけど800万画素での出力になる。800万画素ってのはだいち「4K」くらいのサイズ

 こうしてみると、画素数で殴りながら、でも「スマホのカメラなんだから画素数なんて細かい事は気にするな、そのときどきに最適なカメラで撮れ」と言われてるようで面白い。

 まてよ、この画素数なら108Mモードで撮ってそれを800万画素相当でクリップしたのと画素数的には変わらないんじゃね? だったらわざわざ望遠カメラを積まなくてもなんとかなるんじゃね? と思ったのだけど、等倍で見比べてみると、望遠カメラで撮った方がディテールまでちゃんと写っていたのであった。

望遠カメラと1億画素カメラそれぞれを等倍表示してみた。微妙にホワイトバランスが違う方が気になるかも

 なるほどなあ、である。せっかくのポートレートカメラなので人物撮影も。1200万画素でF2.0。

写真モードで2倍カメラで撮影

 ポートレートモードにすると背景ぼかしをかけた写真を撮れる。

ポートレートモードで背景をぼかして撮影

 あとからぼかしレベルを変えることもできる。

背景のボケを大きくしてみた。ちょっと合成っぽいボケに

 さてもうひとつ、5番目のカメラがある。マクロカメラである。これの画素数は200万画素。ギリギリまで近づいて撮れるけど、200万画素。

マクロカメラでぐぐっと寄って撮影

 でも200万画素なら通常の写真モードでギリギリまで寄って撮ったものをクロップしても結果はあまり変わらない。存在としてはちょっと微妙かなと思う。マクロ専用カメラというアイデアは面白いのだけど。

6番目のカメラは自撮り用!

 6番目のカメラとして、フロントの自撮りカメラも搭載。こちらは自撮り用としては破格の約3200万画素。広角系で自撮り用としては使いやすい。

自撮りしてるの図。モニターは大きくてこのクラスとしては明るくて見やすい

自撮りですら3200万画素という画素数番長スマホだ

 そこまで画素数を上げなくてもいいのにという感はあるけれども、6つカメラを搭載してすべて画素数が違うというなかなかすごい結果なのであった。

 写真以外だと、動画はもちろん4K動画対応。ビデオモードには短い動画クリップを連続して撮って自動的につないでくれるVlogモードもある。Vlogモードで保護猫シェルターの猫を撮ってみたのが以下の動画。

デジタル一眼がリアルを目指すなら
スマホはリアリティーを目指す

 これだけカメラを積んでて画面は6.47型の有機ELで両側面がカーブしていて2340×1080ピクセルで色域はP3。それでいてメモリーは8GB、ストレージは256GBと十分搭載しながら、価格は7万1280円と非常にオトクだ。

 ただプロセッサーはSnapdragon 730Gとミドルクラス用のものを採用。撮影後にワンテンポ待たされることがあるのが気になるくらいで(特に夜景モードは撮影後の処理で待たされる)、よほどヘビーな使い方しない限りは問題ないだろう。

 ウリとなるカメラにどどんと力を入れ、コストを抑えられるところは抑え、インパクトのある製品に仕上げてきたのはさすがだなあと思う次第である。コストパフォーマンスめちゃ高い上にカメラとしてもすごく実用的だ。

 それにしても、スマホカメラはすでに本職のデジタルカメラとは違う道を歩みはじめてる、というか違う道を見つけたなあと思う。ひとつは「光学ズームではなく、画角が違う複数のカメラを並べて切り替える」という使い方。もうひとつは超高速連写+合成(あるいは「4-in-1 スーパーピクセル」のような技術も)を利用して、デジタル処理でダイナミックレンジを広げたりノイズを減らしたりという、グーグルがいう「コンピュテーショナルフォトグラフィー」による画作り。

 特にコンピュテーショナルフォトグラフィーは光学性能ではなくデジタル処理で勝負するという、スマホが得意なジャンルに土俵を持ち込んだという点で有望だ。デジタル一眼がリアルを目指すならスマホはリアリティーを目指すのである。

■関連記事