楽天キャリア開始前から大きくつまづく
文●石川温
2019年10月28日 09時00分
楽天モバイルの無料サポータープログラムが前途多難だ。
本来であれば10月から商用サービスを開始するはずだったが、基地局整備などの遅れにより断念。そこで楽天モバイルは5000名に限定した「無料サポータープログラム」というかたちでのスタートとなった。
本来ならば「楽天モバイルのネットワークはどこでつながるのか」が気になるところだが、その前段階で、大きくつまずいてしまった。
●アクティベーションできない
楽天の本業は「ネット通販」のはず。ユーザーがウェブで商品を申し込み、手続きを終え、配送を待つのが、ネットショッピングというものだ。
しかし、楽天モバイルは、当選した5000名に対しての申込み、手続き、配送というプロセスで様々な落ち度があった。
「本来ならば一人1回線なのに、5回線までオーダーできる」「サポートのチャットにまったく返事がない」「SIMカードと端末が一緒に送られてこない」といった具合だ。
さらに、不満の声として上がっていたのが「アクティベーションできない」という問題だ。
●「量販店版」「楽天版」は別仕様
無料サポータープログラムを始めるには、まず対応端末にSIMカードを入れ、楽天モバイルの電波が入るところに置いておき、アクティベーションの情報が降ってくるのを待つ、という流れとなっている。
しかし、これが「対応端末」でないと、いくらたってもアクティベーションされず、データが流れてこない状況に陥る。しかも、最初に対応端末ではないスマホにSIMカードを入れてしまうと、その後、対応端末に入れなおしても、一向にアクティベーションできないという状況になってしまうのだ。
このドツボにハマったのが私だ。
筆者は、楽天モバイルではOPPO「Reno A」128GBのブルーが大人気で品切れで、購入できない状態が続いていた。そこで10月18日、大手家電量販店で当日より発売となったOPPO Reno Aブルーを購入。楽天モバイルのSIMカードを入れてみたのだが、いつまで経ってもデータが流れてこない状況になってしまったのだった。
他キャリア関係者などに取材を進めると「うちでも楽天モバイルの仕組みを解析しているのだが、どうやら、楽天モバイルが自社で販売する端末と、店頭で売られているSIMフリーの端末では仕様が若干異なるらしい。楽天モバイルが自社で扱う端末には、アクティベーションに必要なプロファイルが埋め込まれているようだ」と語る。
さらに、楽天モバイルやローミング先のauネットワークにつながりやすくなるような仕様も盛り込まれているらしい。
楽天が扱う「OPPO Reno A 128GB」と家電量販店の「OPPO Reno A」が別仕様になっているとは、なんというトラップ。普通、楽天モバイルのサイトに「OPPO Reno A 128GBは対応機種」と記載されていたら、家電量販店の「OPPO Reno A」も対応機種だと思ってしまうよなぁ。
●ユーザーの期待にこたえてほしい
今回、楽天が商用サービスではなく、「無料サポータープログラム」としてスタートした背景には「システム的には問題ないが、慎重に慎重を期すため」(三木谷浩史CEO)ということだった。
本来であれば、世界初の完全仮想化ネットワークが順調に動くかを確かめるための無料サポータープログラムであったが、その前段階からつまずいてしまった。
とはいえ、第4のキャリアとしてゼロから様々なものを立ち上げるのには、楽天にとっても相当、負担が大きいはずだ。
早く体制を立て直し、本来の無料サポータープログラムが目指していた姿を取り戻してほしい。さらに5000名とは言わず、抽選に漏れた人たちの追加当選、そして早期に商用サービスをスタートさせないことには、いつまで経っても既存3社の値下げ競争は起きない。楽天にはぜひとも期待に応えてほしい。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。
■関連記事