いろんな意味で超話題のカメラ「digiFilm Camera Y35」を衝動買い
文●T教授、撮影● T教授、編集●南田/ASCII編集部
2018年10月24日 12時00分
いろんな意味で超話題のカメラ
「digiFilm Camera Y35」を衝動買い
クラウドファンディングで登場した昨年、そして出荷の始まった現在。ネットやブログ上では「金返せ!」の炎上レベルから「まあこんなもん」という冷めた意見までさまざまな反応で話題沸騰のデジタルカメラ「digiFilm Camera Y35」を知人からセカンドハンドで譲ってもらった。
ざっとウェブに書かれたコメントを見た限りは“ネガティブな反応”が相当多い感じだ。最近の筆者はクラウドファンディングに登場した商品に強い興味をもっても、また別の商品に目を奪われているうちにバッカー募集期間を逃してしまうことも多い。
また、“衝動買い”大好きな筆者としては、買ったらもう有無を言わさず速攻で手に入れていじりたいタチなので、半年後あるいは下手をすると1年後にその商品が手元に届くというのはまったく不向きな購入形態なのだ。
さて、今回ご紹介する「digiFilm Camera Y35」(ディジフィルムカメラ・ワイ・サンジュウゴ:以降Y35)は、戦後から1980年代まで日本をはじめ世界中のカメラファンに愛されたカメラ「ヤシカ」ブランドを冠した2018年のデジタルカメラだ。
多くのカメラファンは往年の「ヤシカ エレクトロ35」のイメージにそっくりの外観にノックアウトされて、バッカーになった人たちが多いのだろう。正直、アナログカメラの純粋なファンでは無い筆者でも、YASHICAブランドと、レトロな雰囲気の外観、巧みな撮影方法で、質感たっぷりの商品紹介やプレゼンテーションを観た時はかなり危なかった。
しかし、ちょうど多忙な時期でもあり、加えてジャンルは異なるがほかに目移りするような商品もあって、運よくか運悪くかは別にして気がついたころにはバッカー募集は終了していた。Y35はフィルム巻き上げなどの撮影操作のギミックをひとまず忘れるとすれば、ジャンル的にはトイカメラかひと昔前のコンパクトデジカメクラスだろう。
スペック的には、1/3.2型CMOSセンサー、1400万画素、ビューファインダー、絞り値F2.0、焦点距離35mm、最短撮影距離1m、5段階の自動シャッタースピード(1秒、1/30秒、1/60秒、1/250秒、1/500秒)、撮影写真はSDカードに保存(Y35を外部HDDと見てUSBケーブルでのパソコン転送も可能)、三脚穴となる。
本体の駆動には単3アルカリ電池2本を使用する。物理的なサイズは 110(幅)×70(高)×55mm(厚)で、SDカードと単3アルカリ電池2本込みで実測242g前後だ。
Y35の特徴だが、細かな撮影の設定は無く、本体に4個付属する「digiFilm」によるイメージコントロールが最大のウリだ。標準で付属するdigiFilmの種類はISO1600(ハイスピード)、ISO400(モノクロ)、ISO200(ウルトラファイン)、120フォーマット(6×6)の4本となる。
digiFilmの交換による画像コントロールを除けば、基本的に、ユーザーがいじれるのは露出調整のみとなり、-2~+2の5段階ダイヤル調整となる。シャッタースピード、絞り、ISO感度、フォーカスなどはユーザーで設定できず、すべてY35任せということになる。やはり、コンデジというよりトイカメラと同様だと考えたほうが気分的にはラクだ。撮影時に両手で持った感覚も極めて軽量で、金属ボディーと異なりまったく冷たさを感じない。
撮影者に提供する情報量や調整機能が多いほうがカメラとして優秀なのかどうかは、カメラマニアでない筆者にはまったくわからないが、Y35は素人の筆者が見てもシンプル過ぎるデジタルカメラだと感じる商品だ。
多くのデジタルカメラは背面に液晶があるが、Y35にはない。写真撮影の結果は内蔵したSDカードの画像をパソコンで見るまでわからない。考え方によっては新鮮だが、同時に不安も伴うことは事実だ。
Y35でユーザが唯一確認できる表示装置は、背面にある小さなLEDランプのみ。このLEDランプの色の変化でユーザーは“撮影”Readyかどうかを判別できる。さて、それでは実際に撮影してみよう。
まず、単3アルカリ電池を2個、Y35の背面蓋を開けて入れる。バッテリーを入れた後、Y35側の内部時計を現在時間に合わせるためにパソコンと付属USBケーブルで接続し、Y35側のフォルダーに入っている「DSC Clock」アプリを起動し時刻を設定する。
続いて、フィルムの格好をしたお好みのdigiFilmを選んで装着し、蓋を閉める。シャッター周囲の回転スイッチを手前に回転させてY35の電源をオンにする。背面のLEDランプが赤く点灯すれば、撮影可能な状態だ。まずはフィルム巻き上げレバーを1回だけ巻き上げると、シャッターを押すことが可能となる。
シャッターは2段階の深さになっており、まず押し込んで止まったところからもう一段深く押し込んで、じっとしていると“カシャ”というかなりチープなシャッター音がして背面のLEDランプが紫色に変化すると撮影終了だ。
フィルムカメラの撮影品質が狙いなのか
往年のカメラの外観の印象の追求したのか
ほんのしばらくして再度、背面のLEDランプが赤に点灯すれば、同じように巻き上げレバーを巻き、LEDランプが赤の点灯になれば再度撮影可能となる。これを繰り返し、お好みのdigiFilmを適時交換して自由に写真撮影が可能だ。どのタイミングでdigiFilmを交換してもOKだが、背面の蓋を開けると自動的にパワーオフとなるので、裏蓋を閉めて撮影する前には、再度パワーオンスイッチを回転させる必要はある。
昔懐かしいフィルムカメラを彷彿とさせるフィルム巻き上げ操作だが、日本でもエプソンのデジカメが相当昔に実現しているギミックだ。最大の違いは、エプソンのデジカメでは親指に圧倒的なリアリティーを感じることだ。
ネット上の多くのバッカーの嘆きは、Y35のチープな作りであるようだ。実際にY35に可動部分はシャッターとパワーオンスイッチ、巻き上げレバー、5段階露出調整ダイアルのみとなり、そのほかのパーツはY35本体の凹凸だけでチープなプラスティック成型されており、一切可動しない。
実際の写真撮影においても、コンデジというよりもトイカメラの領域だろう。特に2段階のシャッターは固く、押す指先に力がかかる。2段目を押し込んで、シャッター音が鳴るまでの間の静止がキモであり、そこをミスすると多くの写真がブレてしまう。このあたりもトイデジカメと似ている。
実際に室内、昼間、夜と、4種類のdigiFilmを交換しながらいろいろい撮影してみた。シャッターを押す指先が慣れてブレを克服すれば、それなりにおもしろい写真が撮影できるようになるか、ならないかの分かれ目だ。
Y35だけがもつユニークな雰囲気があるわけではないので評価は難しいが、ビジネスが順調に推移すれば、今後登場するであろう新しいdigiFilmに期待したい。Y35の目指す方向が、ノスタルジックなフィルムカメラの再起なのか、それとも過去実際に存在したレトロ感満載のフィルムカメラのイメージを模したトイカメラなのか、その目指すところがイマイチわかりにくい。
うがった見方をすれば、昨今のフィルムカメラへの憧れに便乗し、ノスタルジックなイメージを前面に押し出し、本来は無縁の憧れのブランドロゴ「YASHICA」を冠し、注目のクラウドファンディングと凝った商品撮影、際立つプレゼンテーションを巧みに利用して現物を確かめることなくファンドするSNS時代の「キワモノ」マーケティング成功例とも考えられる。
そんなふうに将来に渡って語り継がれないよう、クラウドファンディングで集めた5億円近くの資金を有効活用し、逃げ切ることなく今後より新しい対応がなされることを楽しみに待つこととしよう。
今回の衝動買い
アイテム:YASHICA「digiFilm Camera Y35」
・価格:150米ドル(Kickstarter)
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるKOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。
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